南極を舞台としたHuluオリジナルの連続ドラマ「THE HEAD」。山下智久が英語で演技することでも話題になった同ドラマは、南極科学研究基地“ポラリス6”の越冬隊7人が無残な遺体となって発見されたことから物語が始まるサバイバルスリラーだ。エミー賞を受賞した「HOMELANDホームランド」のラン・テレムが製作総指揮・プロデューサーを務めることでも話題となった。隔離された南極で、誰が、何のために複数の隊員を殺害したのか。謎が謎を呼ぶ作品のシーズン1のあらすじを振り返りたい。(一部作品のネタバレを含みます)

衝撃の展開から幕を開け、回想シーンで惨劇を紐解いていく1〜3話

世界屈指の生物学者であるアーサーワイルド(ジョン・リンチ)を筆頭に、地球を救うための研究がおこなわれている南極科学研究基地“ポラリス6”。第1話では選ばれた10人の“越冬隊”を残して基地を去ったヨハンベルク(アレクサンドロ・ウィローム)たちが、冬を超えて戻ったポラリス6に散在する死体の数々を発見する。

越冬隊の隊長であるエリック・オスターランド(リチャード・サメル)、焼けた雪上車に女性の焼死体、そして錯乱状態でキッチンに隠れていた生存者・マギー・ミッチェル(キャサリン・オドネリー)。基地内を捜索した結果10人中6人の遺体が確認され、アーサー看護師のエバ・ウルマン(サンドラ・アンドレイス)、ヨハンの妻であるアニカ・ルントクヴィスト(ローラバッハ)の3人が行方不明とわかった。

誰が、なぜこんな惨劇を引き起こしたのか。ヨハンたちはマギーから少しずつ話を聴くことで真実を辿っていく。彼女の話によれば、まず通信士・マイルズ・ポーター(トム・ローレンス)が何者かに無惨にも殺されたという。ただ凄惨な事件のようすを思い出してしまったマギーに発作が起こり、聴取は一時中断してしまう。

彼女が落ち着くのを待つ間、ヨハンは基地内で妻・アニカの筆跡で書かれた「許されないことをした。業火に値する罪だ」という書き置きを見つける…。謎が謎を呼び、一気に引き込まれる展開だ。

続く第2話でも、まだ不安定な状況ながらマギーに少しずつ話を聞いていく。事件当時はマギーがマイルズの死因を「鈍器による外傷」と判断。犯人と思しき部外者がいないか基地の外を見に行くなかで、マギーは血の付いたノコギリを発見する。多くの隊員を呼びだして検証してもらったが、その隙に酒癖の悪い技術者ニルスヘドランド(クリス・ライリー)が基地の入口にカギをかけるというアクシデントが。なんとか中に侵入して全員の凍死は免れたものの、当然ニルスは拘束する。

彼は自分の部屋で血まみれのノコギリを見つけ、怖くなって外の雪に埋めたことを告白。仕方なくランドリールームで両手を縛って拘置されたのだが、やがてようすを見に行ったアキ・コバヤシ(山下智久)が何者かに喉を切られているニルスを発見した。

場面は現在に戻り、通信士から録音音声がずっと無線で流されているとの報告が。発信源は地下で、そこにいたのは錯乱した状態のアーサー博士だった。保護された彼は言う。「お行儀よく被害者を演じてるんだろ」「あの女が全員殺した」。

第3話では、マギーが自分の研究を盗むために全員を殺害したというアーサーの主張を受けたヨハンが、マギーの精神鑑定の映像を確認する。彼女が偽りの回答をして、南極基地隊の面接をクリアしていたことが発覚。マギーは理由について「母のために南極へ来た」と説明した。

さらに、基地で見つかった焼死体の身元がエバだったことが判明。彼女は雪上車で外に助けを呼びに行く手はずだったが、エンジンをかけて間もなく雪上車が爆発したのだ。さらに10人しかいないはず探索チームではない、新たな死体が雪の中から見つかった。謎はますます深まっていく。

■過去と現在が入り乱れ、隊員たちの素顔が暴かれる4〜6話

第4話の幕開けは、アーサーが新しく見つかった死体の正体が約8年前にポラリス5で死亡したサラだと主張するワンシーン。アキはニルスの胸に残された「V」の傷がポラリス5の「Ⅴ」を示していると予想し、一連の殺人事件の犯人がポラリス5へ導いているのではないかと考えた。マギーと共に、他のメンバーが先行したポラリス5を探索する。

ポラリス5で合流した全員は、かつてポラリス5で起こった火災事故で亡くなったサラの死体と出会う。驚きはするものの、なぜか先の探索を急がせるアーサーたち。アニカやアーサーたち数人はポラリス5の事故の生き残りで、サラとは縁があるはず。不信感を抱いたマギーは理由をつけて引き返し、サラの遺体をチェックした。すると、彼女が火災の事故で死んだのではなく、後頭部への殴打で殺されていたことが判明する。

さらに秘密の捜索を続け、「サラ・ジャクソンに返却」と書かれたスーツケースを発見したマギー。なかには、血まみれのセーターが隠されていた。マギーは言う。「みんなが探してたのはセーター。血まみれの…それが証拠よ」。今回の事件は、ポラリス5で過去に起こった因縁が大きく関係しているのかもしれない。

第5話では、真実に近づきつつあったマギーたちが人嫌いの調理師ラモンラザロ(アルバロ・モルテ)から襲われることに。斧を手に2人を追い詰めるラモンだったが、マギーがとっさの機転で返り討ちにすることができた。ラモンの部屋で「なぜ彼が襲ってきたのか」を探ったところ、彼のスマホに保管された写真を発見。そこにはポラリス5での事故が起きる前夜、例の血まみれセーターを着ている人物の姿が…。

そしてシーズン1のラストとなる第6話。マギーが部屋に隠れていたアニカを問い詰めることで、ポラリス5で起こった事故の顛末が明らかになる。そして事件は現在に繋がり、すべての殺人事件がどのようにして、なぜおこなわれたのか…驚愕の真実が用意されていた。

行ったり来たりする時間軸で、次々と明かされる真実。隊員たちの隠された素顔が暴かれ、謎がさらに深まるストーリーはまさにジェットコースターのよう。トリックの描き方は至ってフェアでクリーン。見終わった直後からもう一度見直したくなる、秀逸なミステリーの余韻を楽しめた。

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