NHKの子会社で、ニュース番組の企画や制作などをおこなっている「NHKグローバルメディアサービス」(東京都渋谷区)で専門委員として雇用されている男性が9月20日、上司だった男性のパワハラによって、精神的苦痛を受けたとして、上司だった男性と同社を相手取り、計165万円の損賠賠償を求める裁判を起こした。

訴状によると、原告男性は、NHKニュースWEBで配信されているニュース記事の校閲などを担当している。2022年10月、タクシーチケットを誤用したため、当時の上司に報告したところ、「認知、認知だよ」などと、まるで認知症であるかのように決めつけられ、叱責されたという。

この上司だった男性は、原告男性よりも年下で、NHKで記者として勤めたのち、NHKグローバルメディアサービスで専門委員らを統括する立場にあった。

この日の提訴後、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見した原告男性は、提訴にいたった理由について、「NHKの元記者がこうした人権感覚で良いのかということを問いたい」と話した。

⚫️「認知症患者に対する差別」

訴えているのは、埼玉新聞で30年以上勤務し、2014年からNHKグローバルメディアサービスで専門委員として勤務している原田勤さん(74歳)。

NHKのニュース記事に誤字脱字がないか、人権に配慮されているかなどをチェックする「チェッカー」と呼ばれる担当をしている。

訴状によると、原田さんがタクシーチケットの誤用をしてしまったために報告に訪れたところ、上司だった男性は「認知、認知、こりゃ原田さん、認知だよ。あなたは何を言ってるかわからない」「受信料をいただいてやっている仕事で、そんな重要な仕事(ニュースのチェック)をそんな人間にやらせているのかということになる」などと発言したという。

原田さん側は「被告(上司だった男性)は、一方的に原告を認知症と決めつけ、認知症患者は責任ある仕事ができないという差別・偏見を露呈」と指摘し、こうした人格攻撃の発言は違法なパワハラであると主張している。

⚫︎「認知症発言」については謝罪したが…

このほかにも、NHKが「抽選」という言葉を「抽せん」という表記に変えたことに気づかなかった原田さんが2022年3月、机の引き出しの中にある用語のマニュアルを確認しようとしたところ、上司だった男性は激しく怒り、原田さんの手を払うなどの暴力行為があったと訴えている。

原田さんはこれらの言動について、同社の執行役員やNHKの相談窓口に相談したが取り合ってもらえなかったため、その後、民放労連放送スタッフユニオンに加入し、会社と交渉をおこなった。

その結果、会社は2023年4月、「認知症発言」について認め、上司だった男性を譴責(けんせき)処分にしたことなどを報告した。上司だった男性からは「認知症発言」について謝罪があった。

手を払った暴力行為については、上司だった男性が「覚えていない」ことから、同社は事実認定できなかったとした。原田さんは、会社側にも、使用者責任や安全配慮義務違反があったとして、損害賠償を求めている。

NHKグローバルメディアサービスは9月20日、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「訴状が届いていないのでコメントできない」と回答した。

「認知だよ」 NHK子会社で暴言、70代社員が元上司をパワハラ提訴「こんな人権感覚でよいのか」