北海道函館市は、新幹線函館駅乗り入れに関する調査をめぐり、業務を委託するコンサル会社が提出した企画提案の内容を明らかにしました。 どのようにして新幹線函館駅まで直通させる想定なのでしょうか。

ミニ新幹線ではなく、フル規格新幹線の乗り入れが有力か

北海道函館市は2023年8月、新幹線函館駅乗り入れに関する調査をめぐり、業務を委託するコンサル会社が提出した企画提案の内容を明らかにしました。 同社は「新幹線乗り入れの困難性は高い」としながらも、具体的な直通方法や課題を提示しています。どのように新幹線新函館北斗駅から函館駅まで直通させる想定なのでしょうか。

北海道新幹線が発着する新函館北斗駅は、函館市街地から17.9kmも離れた北斗市内に位置しており、新幹線駅と函館駅を結ぶ在来線の「はこだてライナー」が運行されています。

2030年度末に予定されている北海道新幹線の札幌延伸後、札幌~函館間を結ぶ在来線特急「北斗」は廃止される予定。新幹線延伸後に同区間を移動する場合、新函館北斗駅新幹線から「はこだてライナー」への乗り換えが必要になる見込みです。

そこで2023年4月に就任した函館市の大泉 潤市長は、公約に「新幹線の現函館駅乗り入れに関する調査の実施」を盛り込んでおり、市の令和5年度補正予算に調査費が計上されています。2031年度を目途に、東京や札幌から乗り換えなしで新幹線函館駅まで直通させることを目指しています。

市は新幹線函館駅乗り入れにあたり、在来線規格で新幹線に直通が可能な車両を新造する山形・秋田新幹線のような「ミニ新幹線車両」の場合と、通常の「フル規格新幹線車両」で乗り入れる場合を想定した調査を行う方針を示していました。

調査業務を委託されたコンサル会社の千代田コンサルタントは、市に提出した企画提案で「新函館北斗~函館間には、新幹線の断面に障害となるトンネルが存在しないため、乗り入れ車両はミニ新幹線車両ではなく、通常のフル規格新幹線車両の導入可能性が高い」と指摘しています。

10両編成のうち3両が函館行き、7両が札幌行きに?

同社によると、札幌駅から函館駅新幹線を直通させる場合、新函館北斗駅では11番線ホームに到着。そのまま東京方にある保守基地線(電化が必要)を経由し、新設した渡り線を通って在来線に乗り入れます。

東京方面から函館駅に直通する場合は、10両編成のうち3両が函館行き、7両が札幌行きとなる分割・併合編成を想定。新函館北斗駅では12番線か13番線ホームに入り、まずは編成前方の札幌行きが発車し、その後に函館行きが逆方向にスイッチバックして在来線へ直通することを想定しています。上り列車の場合、新函館北斗駅では函館発の3両編成が先に11番線へ入線し、札幌発の7両編成と連結して東京方面に向かうとしています。

フル規格車両を函館駅まで直通させる場合、新函館北斗~函館間の線路は、軌間が異なる新幹線在来線車両の双方が走れる「三線軌条」に改修する必要があります。五稜郭~七飯間は、「2面2線の相対式ホーム」構造で片側ホームのみの使用で統一されるため、新幹線車両の乗り入れには適しているようです。

新幹線は車体幅が「はこだてライナー」車両よりも約40cm広いものの、三線軌条でホーム側のレールを共有する場合、ホーム側の車両限界には大きな差異が発生しない見通しです。ただ、反対側が約40cm弱張り出す形になるため、軌道の離隔を確保する必要があるとしています。函館駅では、ホームに新幹線車両は支障しない想定ですが、今後線路状況の調査・精査を実施する予定です。

課題としては、三線軌条化によって線路のバラスト幅の確保が必要になることや、架け替えが生じる橋りょうがあることが想定され、工期面で困難性が高いとしています。また函館駅では、ホームの使用番線の選定や線路有効長の確保、工事中に線路切替が多く発生することが課題になると指摘しています。加えて在来線区間を貨物列車が走るため、列車間合い(主に夜間)に行う軌道改良工事の困難性も高いとしています。

市は今回の企画提案を踏まえ、年度内に調査結果を公表する予定。課題はあるものの、函館駅への新幹線乗り入れは最初の大きな一歩を踏み出した形です。

北海道新幹線(画像:写真AC)。