上川隆也が主演を務める「遺留捜査スペシャル」(夜8:00-9:54、テレビ朝日系)が9月21日(木)に放送される。同ドラマは、事件現場に残された“遺留品”が持つ意味を徹底的に探り、声なき遺体が訴えたかったメッセージを代弁する刑事・糸村聡(上川)の活躍を描く。さらに、科捜研研究員・村木繁を演じてきた甲本雅裕が、寡黙なガラス職人・相良克典も演じる。

【写真】上川隆也と甲本雅裕が「遺留捜査」の役衣装をまとった2ショット

WEBザテレビジョンでは、糸村を演じる上川と、村木と相良の2役を演じる甲本にインタビュー。新作スペシャルが決まった時の気持ちや主人公・糸村聡の魅力、印象的に残っているシーンなどを語ってもらった。

上川隆也「糸村という男に会えることがうれしくて…」

――新作スペシャルが決まった時のお気持ちを教えてください。

上川:「遺留捜査」は2022年夏のシーズンをもって、いったん物語にピリオドを打つ形を取りました。今回、スペシャルという形ではありますが、また糸村という男に会えることがうれしくて、それ以外の思いはありませんでした。

甲本:(上川隆也に)同じくです。純粋にただただうれしかったですね。上川くんをはじめ、「遺留捜査」のメンバーとはいつもその瞬間にしか生まれないものを感じながら撮影してきたので、今回はどんなものができるんだろうという楽しみでワクワクしていました。

■甲本雅裕「糸村さんってありえないぐらいおかしな人」

――最大のみどころは甲本さんが2役を演じられることですが、挑まれていかがでしたか?

甲本:僕は12年間、村木という役を通じて糸村さんを見てきました。それにはすごく慣れていたのですが、まったく別の人間である相良として相対したら、糸村さんってありえないぐらいおかしな人だということが分かりました。どうしても笑いが止まらなくて、「もう糸村さんの姿なんて見たくない」とさえ思っちゃったほど(笑)。「糸村さんってこんなに変人だったんだ」ということに初めて気づいた新鮮なスペシャルでした。

上川:リアクションに困りますが(笑)。僕はこの作品以外でも、彼が携わってきたさまざまな芝居を拝見し、彼の演技の幅の広さを、時ごとに関心や驚きを伴いながら目の当たりにしてきました。だからこそ、今回の役柄に関しても彼なりにきっちりと構築して、僕が今まで会ったことのない人物と相まみえることになるんだろうと思っていました。そして実際、それはその通りになりました。

――新作スペシャルで印象に残っているシーンはありますか?

上川:この4月から自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されました。糸村は警察官ですから、きちんとそれに則って、13年目にして初めてヘルメットを着用して自転車に乗っています。このシーンは、遺留捜査がそうした時局の流れにも乗るドラマであるということが、実感できた瞬間でもありました。今後も物語が続く限り、スタイルを貫きながらも変化を受け入れていく糸村の姿をお届けできるのではないかと思っています。

甲本:不思議なことにヘルメットを被っても糸村さんは糸村さんでした。正直、最初は違和感があるんじゃないかと思っていたのですが、「なんでこんなになじんでいるんだろう」という感覚でした。

■甲本雅裕「上川隆也という役者の幅とスキルに魅力を感じます」

――主人公・糸村の魅力は改めてどのようなところだと思いますか?

上川:2011年から始まったこの物語を見直していくと、糸村はまったく変わってないわけではありません。彼は彼なりに仲間や環境に影響を受け、経験を積み重ねながら生きています。でも、根ざしているところが変わってないんです。遺留品にこだわるという一点を取ってもそうですが、モチベーションや行動原理がブレないからこそ安心して見られるキャラクターなのかもしれません。引き合いに出すのは恐縮ですが、「男はつらいよ」シリーズの“寅さん”が時代を経ても愛され続けているように、“変わらないキャラクター”として受け入れられているのではと思っています。

甲本:僕は糸村というキャラクターの前に、上川隆也という役者の幅とスキルに魅力を感じます。手練手管という言葉が合っているか分かりませんが、上川くんはあらゆる手段を使って糸村の中にいろいろなものを入れ込んで現場で爆発させているんだなと、いつも触れる度に感じるんです。それを見ると僕も負けてはいけないな、という気持ちになれて、相乗効果として上がっていける。また、上川くんは緻密に考えをめぐらせる完璧な人ですが、糸村さんは逆にほころびの塊のような存在。それを一人の人間として作り上げる上川くんという役者は、本当にすごいなと思っています。

――ファンの間で人気の科捜研シーンはアドリブが多いと伺いましたが、どのように撮影されているのでしょうか?

上川:科捜研のシーンは、テストもそこそこにカメラをまわし、たいてい一発で撮るんです。ですから、現場にいる誰もが知らないリアクションがその場で発生し、それで盛り上がったり膨らんでいったりすることを、視聴者の皆さんがアドリブのように受け止めてくださっているのかもしれません。僕自身も自分の放ったせりふに村木さんがどんなリアクションするのかを知らずに臨んでいますし、逆もまた然り。だから、アドリブというよりライブ感が強いシーンと受け止めていただく方がより正しいと思います。

甲本:お互いに笑いそうになるのをこらえていて、その姿を皆さんに見ていただいている感覚ですね。笑いそうになって、「ちょっと待ってヤバイよ上川くん、笑っちゃうよ!」と内心焦る瞬間もたまにあります(笑)。

上川隆也「『遺留捜査』がジョーカーを切った」

――新作スペシャルの情報が解禁されるとSNSには「待ってました」の声があふれました。お二人から見て「遺留捜査」が愛される理由をお聞かせください。

甲本:僕ら二人を含め、関わっている人たちが視聴者の皆さん以上に待っていたからじゃないかなという気がします。僕らが「遺留捜査」の世界に入れる喜びを感じていることが少なからず伝わって、皆さんに長く見ていただいているような気がするので。だから僕はいつもドキドキしていいんだよね、慣れる必要はないんだよね、と自分のワクワク感を楽しんでいます。

上川:的を射た例えではないかもしれませんが、最近、迷子に声をかけることがはばかられるという話を聞いたことがあります。声をかける側も不審者扱いされることを危ぶむし、親御さん側もそうした行動をも注視していかないとお子さんを守ることができない、と。それはある意味、正しい対応だとは思いますが、人間関係が乾燥していると感じます。でも、糸村はそんなことお構いなし。興味を持った遺留品から紡がれた真実をいかに遺された人々に届けるかということにだけ専念して、しがらみを打ち壊しながら進んでいくんです。「遺留捜査」には今の世の中で現実には得がたいふれあいや距離感が描かれていて、だからこそたどり着ける温もりがそこにはあるのかもしれません。皆さん、現代の人間関係へのある種の渇望や憧憬(しょうけい)をこの作品に見ているのではないかと僕は感じています。

――最後に新作スペシャルのみどころを教えてください。

上川:まずはロケで訪れた岡山の鹿久居島の風景でしょう。京都とはまた違う空気が流れていました。そしてやはり、今回は「遺留捜査」がジョーカーを切ったといいますか、甲本氏を2役に据えて、まったく異なる人物として一つの物語に登場させたこと。それがどう物語に絡んでいくのかが、何よりのみどころです。

甲本:ずいぶんプレッシャーをかけますね(笑)。今回は僕が2役を演じましたが、それも含めて今までと変わらない「遺留捜査」を皆さんにお届けできたらいいなという思いです。

上川隆也と甲本雅裕/※ザテレビジョン撮影