ASUSから、新しいスマートフォン『Zenfone 10』が日本向けに発表された。グローバル向けには2023年6月頃に発表があり、日本での登場も待ち望まれていたモデルだ。

【写真】ASUS『Zenfone 10』を箱からじっくり眺めてみる

 発売日は2023年9月。メモリ8GB / ストレージ128GBモデルは9万9800円。メモリ8GB / ストレージ256GBモデルは11万2800円。メモリ16GB / ストレージ512GBモデルは13万4800円。

 多くの最新スマホが大型ディスプレイを搭載していくなか、Zenfoneシリーズは片手で操作しやすい小型サイズを維持してきた。小型でありながら最新のCPUを惜しげもなく搭載しており、まさしく、小さな巨人といえるモデルに仕上がっている。筆者は前モデル『Zenfone 9』もレビューしているが、前モデルから受け継いでいる点と進化している点、それぞれを紹介していこう。

■シンプルさを突き詰めた一台

 フラッグシップらしからぬシンプルな箱に梱包されているが、ASUSは全モデルを通してカーボンフットプリントの削減に努めている。フラッグシップモデルだからといって、華美な装飾はしないというこの精神、まさに禅に通じるものがある。

 スマホ本体の他には、充電ケーブル、ACアダプター、SIMピン、そしてケースも付属してくる。あらかじめケースが同梱されているのはありがたい。スマホの背面はザラつきがあるマットな素材感で、前モデルと極めて似ている。

 側面には電源ボタンと指紋認証を兼ねた『Zentouch 2.0』がある。このボタンスワイプや長押し、二度押しなど多様なアクションに対応しており、自分好みにカスタマイズが可能。親指を画面に持っていかずとも、ブラウザのページ更新や動画の早送り、アプリ起動などが可能だ。

 底面には充電端子、SIMトレイ、スピーカーが見える。小型ボディながらスピーカーの鳴りはパワフルで、横持ちしても左右から音が聞こえるデュアルステレオスピーカーとなっている。ゲームや動画視聴時にはありがたい。

 そしてもちろん、3.5mmイヤホンジャックも搭載。最近は有線イヤホンがトレンド気味だが、例えば『Zenfone 10』をサブスマホ兼音源再生機として使うのも良いだろう。有線でも無線でもハイレゾ再生に対応しており、音楽好きには見逃せない点だ。
 

■付属ケースでも充分だが、もっと便利なスタイルも

 付属していたケースを装着すると、このようなデザインになる。ケースの質感はプラスチッキーで、ややツルっとする。カメラレンズ付近が一段盛り上がっているため、レンズ周りもしっかり保護してくれるだろう。

 だが、もっと便利なケースがある。こちらの『Zenfone 10 Connex Accessories Set』は、ケースおよびケース背面に装着できるスタンドとカードホルダーがセットになっているアクセサリーだ。

 ケース背面には取り付け穴が空いており、例えばスタンドを取り付けるとこのような使い心地になる。動画視聴やながらゲームをする際には非常に便利だ。

 カードホルダーはシリコン素材でできており、プラスチックカードが約3枚入る。付属のケースで保護するのも良いが、こうした使い勝手の良いケースを購入するのもアリだ。『Zenfone 10 Connex Accessories Set』の価格は5,280円。

■やっぱり馴染む、この手のひらサイズ

 『Zenfone 10』の使い心地だが「ちょうどいい」の一言に尽きる。本体の寸法は前モデルと全く同じため、掴んだ感触やポケットへの収まりなども軽やか。胸ポケットにもスっと収まるし、手のひらで持て余す感じがない。ホールド感の良さは、前モデルからしっかりと受け継いでいる。

 フラッグシップらしからぬシンプルな箱に梱包されているが、ASUSは全モデルを通してカーボンフットプリントの削減に努めている。フラッグシップモデルだからといって、華美な装飾はしないというこの精神、まさに禅に通じるものがある。

 CPUには2023年8月時点で最新のSnapdragon 8 Gen2を搭載。このCPUはASUSハイエンドゲーミングスマホ『ROG Phone 7』にも搭載されており、パワフルさに定評がある。

 デバイスのCPUやGPU性能をチェックするソフト『Geekbench 6』で、そのパワフルさを確かめてみよう。画像左のCPU性能では、シングルコアで2,017、マルチコアで5,448と出ている。筆者が調べた限りでは、『Samsung Galaxy S23 Ultra』や『Google Pixel 7 Pro』よりも高いスコアになっている。
 また、前モデルにはなかったワイヤレス充電に対応したのも大きなポイントだ。バッテリー容量は前モデル同様の4,300mAhだが、CPUなどの変更に伴い、12.9%の性能向上を謳っている。旅行やキャンプなどのお供としてさらに頼れる存在となった。

 親指で画面の端から端まで操作できる快適性は維持しつつ、CPUやワイヤレス充電などを堅実にアップデートしてきた印象だ。言い換えると派手なアップデートではないが、前モデルに感じていたホールド感の良さを変に味付けしていないだけでも嬉しい。ただ、ザラつきがある背面素材は持ちやすい一方で、汚れが付きやすい。筆者はカバンに入れて数日使ってみたが、黒い汚れが何度が付着した。擦れば取れるレベルだが、利便性も兼ねてケースを着けておくのが吉だろう。

■圧倒的な手ぶれ補正機能がさらに進化

 前モデルの『Zenfone 9』は、レンズにジンバルモジュールを搭載することで動画ブレを抑えるという、画期的な機能が搭載されていた。その手ブレ機能が『6軸スタビライザー2.0』としてアップデート。さらなるブレ補正を実現するにいたった。

 実際に動画を撮影したが(動画はすべてフルHD・60fpsで撮影)。 ノーマルだと歩行に合わせて映像が跳ねているが、新機能の『アダプティブ EIS』をオンにした状態で撮影すると、手ブレ状態をリアルタイムに検知し、最適な画角で自動調整してくれる。

 映像がわずかにクロップされているが、上下のブレは滑らかに抑えられている。最後はもっとも強力な手ブレ補正機能『HyperSteady』をオンにして撮影すると画角がさらにクロップされたが、映像の中心がほとんどブレていない。実際に動画を撮影する場合、日常生活での撮影は『アダプティブ EIS』で充分だろう。撮影者が走ったり、スマホを大きく動かす必要があるときは『HyperSteady』が活躍するはず。

 この『HyperSteady』がどれだけのブレを抑えてくれるかが気になったので、今度はスマホを構えて走りながら撮影してみたが、臨場感はあるが、なんともブレまくっている。次は『HyperSteady』をオンにして撮影してみた。驚くほど画角のブレが抑えられている! 足を踏み込んだ瞬間に映像が乱れてしまっているが、もう少し丁寧に走ればブレも抑えられるだろう。アクションカム的な使い方も楽しめそうだ。

■カメラ性能は自撮り派以外は据え置きか

 動画の次は写真やカメラの性能も見ていこう。背面には0.6倍の超広角レンズと、メインカメラとなる広角レンズの2つが搭載されている。センサーなども前モデルと同様なため、背面カメラについてはそれほど進化していない。
 インカメラは前モデルの倍以上の解像度となる3200万画素に進化し、暗所に強いRGBWセンサーを採用した。夜間や屋内でのセルフィーについては、前モデルよりも進化しているだろう。今回は背面カメラの写真をチェックしてみた。まずはもっとも広角となる、0.6倍レンズでの写真が、青空の広さを強調する良い色味。メインカメラで撮影した写真だと実際の色味はこちらの方が近い。次はデジタル2倍ズームの写真を試す。色がかなりわざとらしくなってきた。最後は限界となるデジタル8倍ズームの写真だが、絵画のような補正感が出てきてしまった。

 デジタル2倍も8倍も、撮影された写真のサイズはメインカメラと変わらない(4,096×3,072px)。4倍ズーム程度であれば常用できる。小型ボディも相まって、サッと撮り性能は高い。目の前をスタスタ歩いていたカモをうまく撮影できた。フードフォトだと、昼下がりの明るい日差しが入る窓際で撮影したが、シズル感は充分。ホワイトバランスも適切だ。最後は屋内で撮影。こちらも刺し身のツヤ感はよく出ており雰囲気が残せている。カメラ性能に関しては個人的に『Zenfone 10』を使うなら写真よりも動画撮影で楽しみたいと感じた。

■誰に手にもフィットする、最高スペックスマホ

 前モデルの『Zenfone 9』が教えてくれた「手のひらサイズのスマホはやっぱり使いやすい」という、スマホへの原点回帰。この軸から外れること無く、スペックバッテリーディスプレイなど、基礎的な部分をアップグレードさせたのが、今回の『Zenfone 10』だ。

 デザインや見た目への大きな変化はないが、それは5.9インチの小型ボディに対する自信でもあるだろう。実際に使ってみて、改めて小型スマホの使いやすさに気付かされた部分もある。

 スマホは小さい方がいい、でも性能は新しい方がいい。まるで都合の良い話だが、『Zenfone 10』ならばそのニーズを満たすことができるだろう。

ASUS『Zenfone 10』完全レビュー