
次期M3に搭載される「ハート・オブ・ジョイ」とは何か
長い歴史を持つBMW M3のバッテリーEVモデルが、2027年に登場する見込みである。「クレイジー」なシャシー制御ソフトウェアを採用し、現行モデルを「はるかに上回る」パフォーマンスを実現するとされている。
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BMWの開発責任者であるフランク・ウェーバー氏が明らかにしたところによると、次期M3はノイエ・クラッセ(NK)プラットフォームをベースとする次期3シリーズに続いて登場するという。先ごろ公開された同名のコンセプトカーに、その姿を垣間見ることができる。
ウェーバー氏は記者団に対し、「次のM3はバッテリー・エレクトリックになるだろう」と明かしつつ、現行世代のガソリン車とは「一定期間共存」することになり、またそれは「必要なこと」だと述べた。現在、M3で使用されているS58型直列6気筒エンジンは、2030年以降も生産される予定である。
ウェーバー氏は、新しい制御システム「ハート・オブ・ジョイ(Heart of Joy)」により際立った走行特性を実現し、ガソリンエンジンの不在にともなうキャラクターの喪失を緩和するのに役立つだろうと述べている。
「これは、過去20~30年にわたるわたし達の経験を1つの制御ユニットに集約したコントローラーです。走行性能関連、シャシー制御関連、パワートレイン関連のすべてが1つの制御ユニットに統合されました」
「クルマの制御方法の歴史が、ほとんどこの中に詰まっているのです。ソフトウェアは独自開発です。わたし達は、これで皆さんの好きなドライビング・ダイナミクスが可能になるということをお伝えしたい。『究極のドライビングマシン(BMWのスローガンの1つ)』に興味をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、『ハート・オブ・ジョイ』にはクレイジーな機能が搭載されています」
ハート・オブ・ジョイは、BMWがハイブリッドスポーツカーのi8で初めて採用した「神の手(Hand of god)」と呼ばれる制御システムの後継にあたる。4基のモーター・ドライブトレインをサポートするために開発され、状況に応じて各車輪への電力配分を調整する。ウェーバー氏は、最大1メガワット(1360ps)の総出力を発揮できるとしたが、次期M3の性能目標については言及しなかった。
BMWは以前、i4とM4をベースとした特製のプロトタイプで4モーター・ドライブトレインをテストしていることを明らかにしている。
9割以上の顧客はパワートレインなど気にしていない?
高性能の内燃エンジン車としてファンに愛されてきたMモデルの電動化について、ウェーバー氏は次のように述べている。
「NKが非常に野心的であることを示すようなものを用意したいと考えていますが、これ(高性能モデル)は人々が今日慣れ親しんでいるものよりもはるかに上を行っています。製品ラインとしてNKを立ち上げてからそう遠くない時期に登場するでしょうし、人々もバッテリーEVのMを手に入れたいと思ってくださっているので、コアモデルのSOP(生産開始)に近い早い時期に実現したい」
「わたし達は、消費者の声をはっきりと聞いています。中には、わたしのところに来て『いや、Mファンはこれを望んでいない』と言う人もいる。そんなことはありません。わたし達は多くの顧客調査を行っています。Mのお客様が求めているのは、単純に最上かつ最高のパフォーマンスなのです」
「1メガワットの性能を持つクルマに乗り込み、個々の車輪をコントロールできるようになった瞬間、エンジン音には違いがあるかもしれませんが、クルマの挙動には問題がないと断言できます」
こうしたウェーバー氏の意見は、BMW Mのフランク・ファン・ミールCEOの考えとも一致する。ファン・ミール氏は昨年、どんな電動パフォーマンスカーを発表する際にも、顧客に「これはクレイジーだ、こんなことになるとは思わなかった」と言ってほしいと語っている。
「M3のストーリーは永遠です。4気筒、6気筒、8気筒、6気筒、ターボチャージャーと、エンジンのストーリーを変えるたびに、M3のストーリーは続いていきます」
「もしかしたらEVになるかもしれませんが、そうなったとしても、必ずM3になります。パワートレインがどうであれ、わたし達のクルマに乗れば、それがM3であることがわかるはずです。わたし達は50年間、時の試練に耐えてきましたし、これからもそうあり続けるでしょう」
ファン・ミール氏のコメントによれば、BMWは電動化によって高性能モデルの魅力が下がるとは考えていないようだ。
「お客様と話したところ、90~95%の方はパワートレインの方向性など気にしていないとのことでした。彼らはただMモデルが欲しいだけなのです。V8を載せないのなら買わないという人もいますが、それはそれでいいと思います。わたしは尊重します」
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