ニュースで連日、「賃上げ」が取り上げらえていましたが、実際に「給与アップ」を実現した人はどれほどいるでしょうか? 多くの企業は「賃上げを実施した!」といっていますが……みていきましょう。

家族で子どもの誕生日会…会場はファミリーレストラン

――子どもの誕生日、家族4人、サイゼリヤで豪遊するのが精一杯

そう自虐的につぶやいたのは、40代のサラリーマン。子どもの誕生日をサイゼリヤで祝ったという投稿です。「誕生日だから外食しよう!」と子どもたちを誘った際、「でも高過ぎるところは勘弁な」と付け加えたところ、子どもも大好きなサイゼリヤに決まったのだとか。子どもの優しい気遣いも感じられますが、サイゼリヤといえば“神コスパ”と称えられるファミリーレストラン。たとえば

「グリーンサラダ」350円

「コーンスープ」150円

マルゲリータピザ」400円

カルボナーラ」500円

ドリンクバー」200円

これらすべて4人分頼んでも6,000円を超えるくらい。「よし、今夜はお父さんとお母さんでワインを飲んじゃおうかな」「デザートも食べたい!」などとはしゃいでも、8,000円程度です。さすが、サイゼリヤですが、男性は最後に「給料の全然あがらないお父さんを許して」と綴っています。

連日、ニュースでは「賃上げ、賃上げ」と騒がれていましたが、お父さん、本当に給与はあがっていないのでしょうか。

内閣府『消費動向調査(令和5年8月実施分)』によると、「消費者態度指数」は36.2。これは今後半年間における消費者の景気の動きに対する意識を示す指標で、指数が50以上なら良好と判断されます。今後の見通しについては、少々悲観的な人が多いようです。

消費者態度指数を校正する4項目についてみていくと、「暮らし向き」は32.9、「収入の増え方」は39.0、「雇用環境」は42.7、「耐久消費財の買い時判断」は30.0。いずれも、良好とはいえない水準でした。

このなかから「収入の増え方」について詳しくみていきましょう。

「収入の増え方」が「良くなる*1」は5.4、「悪くなる*2」は35.6、「変わらない」は59.2でした。ニュースではあれだけ「賃上げ、賃上げ」と騒がれたものの、実際に給与があがったり、この先、給与があがる見込みを感じられる人はごくわずか。6割弱は「いままで通り」と諦め、3割強は「今よりも給与は下がる」とみています。

*1:「良くなる」と「やや良くなる」の合計

*2:「悪くなる」と「やや悪くなる」の合計

一方、財務省『地域企業における賃上げ等の動向について(特別調査)』によると、回答(複数回答可)のあった1,004社のうち、2023年度に「ベアを行った」のは62.1%、「定期昇給を行った」のは81.6%、「賞与・一時金・手当等の増額を行った」のは30.5%。「賃上げを行わなかった」のは3.4%だけでした。

ニュースの通り、実際に賃上げに踏み切った企業のほうが圧倒的に多かったのは事実。しかしサラリーマンは給与アップを実感はできなかったようです。

企業「賃金上げた!」でも、サラリーマン「給与が上がらない…」のワケ

厚生労働省令和4年度 賃金構造基本統計調査』によると、日本のサラリーマン(正社員)の平均給与は、月収で35.3万円、年収で579.8万円。40代前半では、月収で37.0万円、年収で616.2万円、手取りにすると月々29万円といったところ。そこから家賃、または住宅ローンを払い、光熱費、食費、子どもの教育費……育ち盛りの子どもを含む、家族4人を養っていくには少々心許ない給与です。「サイゼで精一杯」というのは本音だったかもしれません。

さらに同調査でサラリーマンの平均月収を平成2年から令和元年までの推移をみていくと、令和元年(2019年)の平均月収は33.8万円。平成2年1990年)は29.0万円ですから、「おっ、30年で4万円ほど給与はあがっているのか」と思うかもしれません。しかし33万円台に突入したのは1995年。つまり日本では25年間、四半世紀近くも「給与は据え置き」という状態が続いています。日本のサラリーマン、「給与が上がらないこと」に慣れてしまっています。

また厚生労働省『毎月勤労統計調査 令和5年7月分結果速報』によると、現金給与総額は38万0,656円で前年同月比1.3%増となったものの、実質賃金はマイナス2.5%。マイナスは16カ月連続。物価高の勢いに賃金の伸びが追いつかず、減少幅は6月の1.6%から拡大しています。お父さんの給与、額面では増えていても支出はそれ以上に増え、結果「給与が上がらない……」とこぼしてしまっても仕方がない状況なのです。

デフレが続き、給与アップがないのも当たり前だった日本のサラリーマン。世界的な物価高を背景に「デフレ脱却のチャンス」、さらには「賃金アップのチャンス」と騒がれている昨今。果たして、物価高を賃金増を上回るときは来るのか。「賃金アップを実感できるのは、早くて来年以降」というのが専門家たちの大方の見方。私たちは、その時までグッと堪えるしかなさそうです。

(※写真はイメージです/PIXTA)