NHKの受信料が2023年10月から10%値下げされます。これと同時に、複雑だった受信料の体系が整理されてシンプルになるほか、「免除」の範囲も拡大されます。本記事では、NHKの受信料体系と10月からの変更点等について、受信料を支払わなくてもいいケースにも触れながら紹介します。

NHKの受信契約のしくみ

NHKの受信契約には「地上契約」と「衛星契約」の2種類があります。BSデジタル放送を受信できる環境にある場合、実際にBSデジタル放送を視聴していなくても「衛星契約」を選ばなければなりません。

受信契約は「1世帯につき1契約」です。テレビが1台でも複数台でも、契約はあくまで世帯ごとに1つです。ただし、テレビがなかったとしても、携帯電話や車のカーナビでテレビ放送を受信できるならば、受信契約を結ばなければなりません。

「10%値下げ」…2023年10月からの新受信料と「一番お得な支払方法」

NHKの受信料は2023年10月1日以降、10%値下げされます。また、従来は払い込み方法によって受信料額に差がありましたが、統一されます。

その結果、新しい受信料は沖縄以外の地域が【図表1】、沖縄が【図表2】の通りとなります。

最もお得な払い方は「12ヵ月前払」の「クレジットカード払」ということになります。「クレジットカード払」にするとポイントがつくからです。

支払わないと「2倍の割増金」を請求されるおそれ

受信料を支払わないと、最悪の場合、NHKから受信料の2倍の「割増金」を請求される可能性があります。これは2023年4月から導入されたものです。

ただし、NHKは公式HPで以下のように記載しており、受信料を支払わなかったからといって直ちに割増金が請求されることは考えにくいといえます。

「NHKとしては、文書・電話・訪問などさまざまなアプローチを通じて、受信料制度の意義や公共放送の役割を丁寧にご説明したうえで、割増金の対象となる事由に該当するか、割増金の請求を行うかどうかを個別に判断していく考えです。恣意的に割増金を運用していると受けとられないよう十分留意してまいります。」

(NHKホームページ「よくある質問集」より)

実際には、まずNHKから受信契約申込みあるいは受信料の支払いを促す「督促状」が届き、それでも応じない場合は、電話、訪問員による訪問が行われることが想定されます。

それでも応じなかった場合、裁判所を介しての支払督促、民事訴訟、判決を得ての差押えと手続きが進むことになります。この段階に至ってしまえば、割増金を請求される可能性が高いと考えられます。

このように、受信料を支払わなかった場合、最悪のケースでは2倍の割増金を支払わなければならないことになります。

NHKの受信料を合法的に支払わなくてよいケース

ただし、NHKの受信料を合法的に支払わなくてよいケースはあります。それは「免除」の制度を利用できる場合です。

免除を受けるには、自治体で免除事由の証明を受け、「免除申請書」と一緒にNHKに提出する必要があります。

◆親元から離れて暮らす学生に対する免除の制度

親元から離れて暮らす学生は、1つの「世帯」としてカウントされるので、テレビを持っていれば、本来ならば受信料の支払い義務を負います。

以下のいずれかに該当すれば、受信料が全額免除されます。2023年10月から対象となる学生の範囲が大きく拡大され、多くの学生が免除を受けられることになります。

【学生が受信料の全額免除を受けられる場合】

・経済的理由に関する選考基準がある「奨学金」を受給している場合

・経済的理由に関する選考基準がある「授業料免除」を受けている場合

・親元等が市区町村民税非課税の場合

・親元等が公的扶助受給世帯の場合

社会保険(被用者保険、国民健康保険)の被扶養者となっている学生(2023年10月から)

・年間収入が130万円以下の勤労学生(2023年10月から)

国民年金保険料の「学生納付特例」を受けている学生(2023年10月から)

・国民健康保険の「修学特例」を受けている学生(2023年10月から)

◆学生以外に対する免除の制度

学生以外にも、経済的理由による免除の制度があります。免除してもらえる額が「全額」の場合と「半額」の場合があります。それぞれ、以下の通りです。

【全額を免除してもらえる場合】

・公的扶助受給者(生活保護等)

市町村民税非課税の身体障害者

市町村民税非課税の知的障害者

市町村民税非課税の精神障害

・社会福祉施設等入所者

【半額を免除してもらえる場合】

・視覚・聴覚障害者(身体障害者手帳を持っている)

・重度の身体障害者(障害等級1級・2級で身体障害者手帳を持っている)

・重度の知的障害者(判定を受けている)

・重度の精神障害者(障害等級1級で精神障害者保健福祉手帳を持っている)

・重度の戦傷病者(障害程度が特別項症~第1款症で戦傷病者手帳を持っている)

ここまでみてきたように、2023年10月からNHKの受信料が値下げされます。それと同時に、受信料の免除の範囲も、学生に限ってではありますが拡大されます。NHKおよび受信料制度に関する賛否はさておき、事実として、テレビ放送を受信できる環境にある場合には、受信料を支払わなければならないという法的義務が課せられています。

ただし、経済的事情等によっては、受信料の全額、または半額を免除してもらえることがあります。手続きをしなければ免除してもらえませんので、もし免除の条件をみたす場合は、速やかに免除の手続きをすることをおすすめします。

(※画像はイメージです/PIXTA)