労災認定で重要な労働時間について、過少な認定により業務外と判断されてしまい、被災者や家族が苦しめられているとして、過労死弁護団全国連絡会議は9月22日、都内で記者会見を開いた。

その一例として、都内の大学病院に勤務していた50代の男性医師のケースをあげた。男性が2018年にくも膜下出血を発症したのは、長時間労働をおこなったのが原因だとして、三田労基署に労災申請したが、不支給決定となった。その後の審査請求も退けられ、現在、再審査請求の結果待ちだという。

過労死弁護団全国連絡会議の代表幹事で、男性の代理人をつとめる川人博弁護士は「宿直時間中に仕事をしていたことが事実であるにもかかわらず、一切の労働時間を否定する事案は初めて。関係法令にも反している」と厳しく批判した。

●宿直勤務はゼロ扱い

代理人弁護士によると、男性は緩和医療科で医師として勤務し、月に3〜4回午後17時15分から翌朝8時半までの宿直業務があった。時には深夜に患者を看取ったり、検査・処方などの診療をしたりしていた。

男性は2018年11月8日にくも膜下出血を発症し、現在も入院している。代理人の集計では、発症前半年の時間外労働は約126〜188時間にのぼった。

審査官は決定書で、男性が監視・断続的労働の許可を受けて労働時間規制が適用除外されていたことを根拠に(労基法第41条第3号)、すべての宿直の労働時間を否定してゼロとした。

<監視または断続的労働(休憩は少ないが手待ち時間が多い業務)に従事する労働者について、労基署の許可があれば、労基法で定める労働時間の上限規制や休憩時間、休日の適用を除外する特別規定がある>

川人弁護士は会見で「カルテのログイン履歴や当直日誌などから、仮眠どころか休憩も取ることができなかったことは明らか」と指摘し、「そもそも、医師の宿直を監視・断続的労働に含めるのは不適切だ。本来ほとんど仕事をしなくても良いが泊まり番が必要という仕事を想定して作られた規定だ」と批判した。

男性の妻は、代理人を通じて「病院側も労働時間であると認め、手当も支給している宿日直業務のすべてが『労働時間ではない』と否定されることは理解に苦しみます」「夫は緩和医療科の唯一の臨床医として医療行為に従事してきたのであり、負担の少ない仕事ばかりしていたと軽んじられることは到底許すことはできません」とコメントを出している。

医者の宿直、労働時間「ゼロ」扱いで労災認定されず 月100h超の残業でくも膜下出血発症…妻「理解に苦しむ」