■「気温が上がるほどビールやアイスは売れる」は本当か?
今年の夏も全国的に厳しい暑さとなりました。気象庁の発表によれば、全国平均気温は1898年から統計を開始して以降、過去最高とのこと。多くの人々が冷たい飲料や食べ物に手を伸ばすことで、少しでも暑さをしのぎたいと考えたことでしょう。夏にビアガーデンが繁盛するように、暑い日に飲むビールは格別とされますし、私たちでも、暑い日にアイスが売れそうだというのはなんとなく理解できそうではあります。

カタリナ消費者総研では、「気温が上がるとビールやアイスクリームの売り上げが上がる」という、ある意味当たり前とされそうなこのイメージを正面から分析。気温との関係性をより発見しやすくするためにエリアを東京都に限定し、気温とビール・アイスクリームの売上に相関関係があるかをまとめました。その結果、意外な事実が明らかになりました。

※ 関係性の発見に利用したデータについて:
この記事のデータは、気象庁が発表している東京都の2023年5月から2023年8月までの最高気温データと東京都カタリナネットワーク内で同じ2023年5月から2023年8月までに買い物をした人の購買データを使用しています。

※ 気温と売上の関係性を評価した方法について:
この記事では気温と売上の関係性を見るために、両者に相関関係があるのかについて調べています。その相関関係を相関係数を使って表しています。相関係数は、2つのデータの関連性を示す数値で、-1から1の範囲で値を示します。1は完全な正の関連、0は無関連、-1は完全な逆の関連を示します。例えば、身長と体重の相関係数が0.8だったら、身長が高い人は体重も重い傾向があると言えます。逆に、-0.8だったら、身長が高い人は体重が軽い傾向があります。また、相関係数は2つの数字の関連性を示すもので、因果関係を示すものではありませんのでご注意ください。



■ビールの売上と気温の関係性はあったのか
暑い日にはビールを飲みたくなる…お好きな方も、そうでない方もなんとなく想像できるこのシチュエーション。相関関係はどれほどあったのでしょうか。さっそく、実際のデータを見てみましょう。今回は、ビールを大きく“国産ビール”、“ビール(プレミアム)”、“ノンアルコールビール”に分けて見てみましょう。


最高気温と購入者数:国産ビール 相関係数:0.21
左軸:気温(℃) 右軸:購入者数(人)

意外なことに、国産ビールは気温との相関関係がほとんど見られませんでした(相関係数0.21)。最高気温が35度を超える7月なかばからは、購入者数はやや減少する傾向も見てとれます。


最高気温と購入者数:ビール(プレミアム) 相関係数:0.04
左軸:気温(℃) 右軸:購入者数(人)

プレミアムビールはどうでしょう。こちらも、国産ビールよりさらに気温との相関関係は見られない結果となりました。(相関係数0.04)やはり国産ビール同様、最高気温が35度を超える7月なかばからは購入者数に減少傾向が見られます。


最高気温と購入者数:ノンアルコールビール 相関係数:0.69
左軸:気温(℃) 右軸:購入者数(人)

最後にノンアルコールビールです。相関係数が0.69と、気温と売上の相関関係が確認できました。グラフを見るとわかる通り、ノンアルコールビールは気温が上がるにつれて、購入者数が上昇している傾向があります。最高気温が下がっているタイミングで、購入者数が減少しているところも多く見られ、気温と購入者に関係性があるのがわかります。

ビール(国産)の相関係数は0.21、ビール(プレミアム)は0.04、そしてノンアルコールビールは0.69でした。この結果から、ノンアルコールビールの売り上げは気温の上昇と強い正の関連がある一方、ビール(国産)やビール(プレミアム)の売り上げは、それほど気温の影響を受けないことがわかりました。

ビール(国産)やビール(プレミアム)の売り上げが気温の影響をあまり受けていないことは以外な結果かもしれません。ビールを普段から飲む人は普段から自宅に常備していて(週末などに買いだめをしていて)、暑いからといってその日に買いに行かないのかもしれませんし、お店に冷えたビールを飲みに行っているのかもしれません。逆にノンアルコールビールは、もちろんアルコールが入っていないので飲むシーンが限定されないという気軽さがあります。そうしたことから、日中に水分補給として飲むというシーンが発生している可能性があります。

アルコール類はオンからオフに切り替わるときに飲まれることが多いでしょうし、ビールはその代表格。気分的なスイッチの切り替わりを演出してくれる象徴のようなものかもしれません。とはいえ、日中から気分転換のためにビールを飲むということはなかなか難しいでしょう。そんなときに選ばれやすいのがノンアルコールビール。もちろんアルコールは含まれていませんから、気軽に気分の切り替えや気分転換のスイッチとして日中に飲まれることが想像できますし、暑い日にはその状況がより顕著にあらわれているのかもしれません。

アイスクリームの売上と気温の関係性はあったのか
暑い日に冷たいものを食べたくなる、その筆頭に挙げられるのがアイスでしょう。実際に気温との関係性はあったのでしょうか。アイスクリームカテゴリを以下に分類して見ることにします。

●単品ハンドアイス

●単品カップアイスクリーム
●マルチパックアイスバー

●プレミアムアイス

最高気温と購入者数:単品ハンドアイス 相関係数:0.84
左軸:気温(℃) 右軸:購入者数(人)

単品ハンドアイス他は、いわゆる、片手でもって食べられるタイプのアイスで、バータイプやパウチに入っているアイスなどのグループです。相関係数が0.84と、気温との強い関係性が見られます。


最高気温と購入者数:単品カップアイスクリーム 相関係数:0.82
左軸:気温(℃) 右軸:購入者数(人)

単品カップアイスクリームは、カップに入ったアイスです。カップアイスクリームは価格の高いプレミアムも別にあり、このカテゴリは価格の低めのカップアイスクリームを指しています。相関係数は0.82と、高い値を示しています。


最高気温と購入者数:マルチパックアイスバー他 相関係数:0.85
左軸:気温(℃) 右軸:購入者数(人)

マルチパックアイスバー他は、バータイプのアイスが複数本箱に入って売っているタイプのアイスです。単品よりもやや小ぶりのアイスで、ファミリータイプとも言えます。相関係数は、単品ハンドアイスの0.84を超える0.85で、非常に気温との関連が強い値が出ています。


最高気温と購入者数:プレミアムアイス 相関係数:0.11
左軸:気温(℃) 右軸:購入者数(人)

価格帯の高いプレミアムアイス。グラフを見れば一目瞭然ですが、気温の変化との相関性をほとんど見ることができません。相関係数も0.1、気温との関連は非常に弱いカテゴリとなっています。相関係数が0.7を超えてくると強い関連性があると言えます。逆に0.1台というのは非常に関連性が弱いことを示しており、プレミアムアイスは気温とは別の理由で購入されていると考えられます。


■結論:
この分析から、東京の夏において、ノンアルコールビールや一部のアイスクリームカテゴリの売り上げが、気温の上昇と強く関連していることがわかりました。しかし、すべての商品が同様の関係性を持っているわけではなく、商品カテゴリによっては、気温の上昇と売り上げの間に強い関連性が見られないものもあることが分かりました。

なかでも“プレミアム”というカテゴリに分類された商品は、ビールにおいてもアイスにおいても、気温との関係はほとんど見えてきていません。喉を潤す、体を冷やすといった機能的な需要よりも、嗜好性が強く「ごほうび」などといった心理的な需要によって購買が起きているのではないかと考えられます。

感覚的には通説とされているものが、実際のデータに照らすとより深く理解でき、通説が間違っているということもありえます。カタリナ消費者総研は、今後も実際の購買データを活用した分析をお届けしてまいります。


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