裁判員裁判をテーマにした参加型裁判演劇『極刑』(企画・制作:一般社団法人リーガルパーク)が9月15、16日に東京都渋谷区の東京ウィメンズプラザで上演された。

舞台は、経営者夫婦が刺殺された強盗殺人事件の裁判員裁判。検察官が死刑を求刑するのに対し、弁護側は一人目の被害者についての殺意を否定し、死刑を回避すべきと主張する。裁判員役の観客が一緒になって判決を考えるという内容だ。

記者は15日の回を取材した。冒頭、観客の中からランダムで6人の裁判員を選んだ。被告人質問などのシーンでは、選ばれた裁判員が「(被害者が覆いかぶさってきたため)間違って刺してしまったと言うのなら、なぜ被害者を助けなかったのか」などと実際に質問を投げかけた。

また、裁判員に選ばれなかった観客も専用サイトのチャット機能で意見を書き込むことができ、一部については裁判官役が被告人らへの質問として代読した。

判決は会場の投票も加味し、裁判官役と裁判員が評議して決める。この回では一人目の被害者についての殺意が認定されず、無期懲役という結果になった。観客や裁判員によって、毎回演劇の進行や結果が変わるという。

途中の休廷(休憩)も含め、上演時間は3時間弱だったが、どのような質問が来るか分からない緊張感と、まるで台本があるかのように受け答えする役者たちの好演によって、観客は舞台に引き込まれていたようだ。上演中、チャット欄は頻繁に更新され、数百件の真剣な書き込みであふれていた。

裁判員制度は2023年で15年目を迎え、18歳の高校生も裁判員の対象者となった。総合演出と裁判長役を務めた今井秀智弁護士は、「改めて裁判員制度の意義を問うとともに、裁判員に選ばれたときの心構えを持ってもらおうと考えました」と企画意図を話した。今後は全国で上演したいという。

ランダムに選ばれた観客6人でエンディングが変わる 裁判演劇『極刑』で裁判員を疑似体験