2023年9月18日に人気ラーメンチェーン「ラーメン二郎」亀戸店が公式X(旧ツイッター)で、注文していないピザとすしが、それぞれ2回ずつ配達されたという“嫌がらせ”とも取れる被害を公表しました。そこで、このような「いたずら注文」について、どのような罪になるのかなど、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

偽計業務妨害罪にあたる 懲役刑、罰金刑が科される

Q.ずばり、このような注文していない食べ物が届くといった「いたずら注文」にはどんな罪が科せられるのでしょうか。

佐藤さん「『いたずら注文』をした場合、ピザ店やすし店の業務を妨害したとして『偽計業務妨害罪』に問われる可能性があります。

偽計業務妨害罪は、偽計を用いて、その業務を妨害したときに成立します(刑法233条)。『偽計』とは、人を欺いたり、人の不知を利用したりすることです。ピザ店やすし店は本当の注文があったとだまされているため、『偽計』にあたると考えられます。

また、偽計業務妨害罪は、実際に業務妨害の結果が生じた場合のみならず、妨害される危険があったのであれば成立します。うその注文をすれば、注文を受けた店側はしなくてよい配達を強いられ、通常業務を妨害されることになるでしょう。

なお、注文していない食べ物や商品が届いた場合、売買契約は成立しておらず、商品を受け取る必要はありませんし、代金の支払い義務も発生しません」

Q. 偽計業務妨害罪の懲役と罰金はどれぐらいですか?

佐藤さん「偽計業務妨害罪の法定刑は、『3年以下の懲役または50万円以下の罰金』です。

実際にどれくらいの刑が科されるかは、事案によって変わります。悪質な目的で、同様のいたずら注文を繰り返していたり、反省がみられなかったりすると、重い刑を科せられる可能性が高まります」

Q.悪質性がある“嫌がらせ”と軽い気持ちでの“いたずら”の違いによって、罰金額なども変化するものなのでしょうか。

佐藤さん「嫌がらせであれ、いたずらであれ、問われる罪名は変わりません。嫌がらせ目的か、いたずら目的かは、犯行に至った動機の違いでしょう。誰かに対する嫌がらせ目的の場合、単なるいたずら目的に比べ、悪質性が高いと評価される可能性が高いです。そのため、量刑にも多少の影響を及ぼすことも考えられます」

Q.このような「いたずら注文」に関して、過去の事例・判例はありますか。

佐藤さん「知人への嫌がらせ目的で、知人の名前でうその注文をして、みかん10箱を配達させたとして、偽計業務妨害の疑いで逮捕された事例があります。

容疑者の男性は、勤務する会社のインターネットを通じて、約2万円相当のみかん10箱を虚偽に注文し、みかんを販売する会社の業務を妨害した容疑がかけられ、逮捕に至りました」

ラーメン二郎」亀戸店の公式Xでは、「もう一度このようなイタズラの注文が来たら警察に相談しようと思ったら今のところそれ以来イタズラの注文は来ず…」という説明を添えつつ、「嫌がらせにしろイタズラにせよこういうことはやめましょう」ともコメントしています。ラーメン店、ピザ店、すし店のこれ以上の被害の広がりは見せていないようです。

いたずら注文」は犯罪です。絶対にやめましょうね。

オトナンサー編集部

「いたずら注文」はどんな罪が科されるの?