東海道本線東北本線高崎線にはJR発足直後から、「アクティー」など愛称の付いた快速列車が設定されていました。しかしそれも今や風前の灯。今後これらの「愛称付き快速列車」はどうなるのでしょうか。

岐路に立たされている「愛称付き快速」

ほとんどのJR新幹線特急列車には、「のぞみ」「踊り子」といった愛称が付いていますが、特別料金や指定席を必要としない快速列車にも愛称が付いているケースがあります。

たとえば首都圏では、1988(昭和63)年に東北本線(2年後に宇都宮線の愛称制定)で「スイフト」「ラビット」、高崎線で「タウン」が登場。1989(平成元)年には東海道本線に「アクティー」、高崎線に「アーバン」が登場しています。2023年3月のダイヤ改正で「アクティー」が消滅したことは、記憶に新しいでしょう。

こういった「愛称付き快速列車」は発足したばかりのJRが、国鉄とは違った新しいサービスとして利用客にアピールし、新生JRに親しんでもらおうと登場しました。

上述の通り東北本線高崎線では、停車駅の異なる2種類の快速を設定。日中は「ラビット」「アーバン」、夕ラッシュ時には「スイフト」「タウン」を運行し、乗客の利用実態に合わせて停車駅を変えて運行しました。ただし「スイフト」と「タウン」は、運行開始から3年後の1991(平成2)年に愛称がなくなり「通勤快速」となるなど、試行錯誤もありました。

2023年現在は「ラビット」「アーバン」とも日中に運行されておらず、本数は激減。日中の速達運用は、湘南新宿ラインに直通する愛称のない特別快速や快速が担っています。

JR発足以降、連綿と運行されてきた「愛称付き快速」は、首都圏の路線網の変化とともに、いま岐路に立たされています。

なぜ東海道本線の「アクティー」は消えた?

東北本線高崎線とは裏腹に、先述の通り東海道本線の快速「アクティー」は廃止されています。廃止直前の停車駅は、東京~藤沢間の各駅と、茅ヶ崎、平塚、国府津小田原から先の各駅。これは普通列車と4駅しか違わず、所要時間も大きく変わりませんでした。

通過駅が少ない理由としては、東京~平塚間はどの駅も乗降客が平均して多く、あえて通過する必要性が低いためです。東京~平塚間で唯一通過する辻堂駅神奈川県藤沢市)も、1日5万人以上の利用があり、利便性を考えれば停車した方がサービスアップとなります。

また普通列車でも、東京~大船間では並走する京浜東北線横須賀線の駅を12駅も通過しており、十分な速達性を持っています。

こういった東海道本線の性格を考えると、あえて快速列車を走らせるよりも普通列車に統一して、どの駅からも乗車チャンスを均等にした方が利便性が高い、ということになるでしょう。

また愛称に関しても、湘南新宿ラインの快速と紛らわしいことや、経由駅が分かる上野東京ライン湘南新宿ラインといった“運転系統別の愛称”の方が旅客案内上好ましいことも、「アクティー」廃止の理由かもしれません。

JR黎明期の1990年ごろに命名されたこれら快速列車の愛称には、明確な由来や意味が公式には示されていません。「快速」「通勤快速」といった固い名前ではなく、「スイフト」「アクティー」というやわらかい語感で親しみを持ってもらう意図があったのかもしれません。

どうなる「ラビット」「アーバン」

湘南新宿ライン」や「上野東京ライン」といった愛称は、先述の通り乗っている電車がどこを経由するかという運転系統を組み込んだ愛称といえます。

かつては東海道本線の上り列車は東京行き、東北本線高崎線列車の大部分は上野行きでした。このように路線ごとに完全に運転系統が分かれていれば、列車名に特段の運転系統の情報を入れなくても列車の序列は分かりやすいのですが、現代のように複数の路線が相互に直通して運転系統が複雑化した場合は、たとえば平塚駅で「アクティー」「湘南新宿ライン特別快速」「上野東京ライン」の表示が並んでいたら、どの列車がどこに停車するのか、その列車がどこへ行くのかが分かりにくくなります。

それならば、複雑な現代の運行系統にマッチした名称、つまり「湘南新宿ライン」「上野東京ライン」「東海道本線」という案内にした方が分かりやすいといえるでしょう。

「ラビット」「アーバン」の愛称は、それぞれ東北本線高崎線内だけのもので、列車が東海道本線に直通する場合は、東京駅で種別を「普通」に変更しています。ただしこういった種別変更も、利用客にとっては戸惑いの元となるため、「ラビット」「アーバン」に対しても「アクティー」同様、将来的には大ナタが振るわれる可能性がないとはいえないでしょう。

2023年9月現在は朝夕のみの設定となった、東京発着の東北本線快速「ラビット」(2023年9月、児山 計撮影)。