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今年の冬は、エルニーニョ現象や正のインド洋ダイポールモード現象の影響が残ることにより、暖冬になる予想です。日本海側の雪は、冬の期間を通して少ないでしょう。ただ、一時的に寒気が流れ込み、大雪になる心配がないとはいえません。

今年の冬 エルニーニョ現象などテレコネクションにより暖冬予想

今年の冬(2023/2024年)、エルニーニョ現象や正のインド洋ダイポールモード現象の影響が残ることにより、暖冬になる予想です。日本海側の雪も少ないでしょう。

ある現象が出現すると、それが何千キロ、何万キロも離れた場所に伝播される現象をテレコネクションといいます。エルニーニョ現象も、熱帯での現象が日本などに影響を及ぼすテレコネクションです。

春から南米ペルー沖で、海面水温が平常より高くなるエルニーニョ現象が発生しています。エルニーニョ現象は、初冬にかけてピークになるでしょう。熱帯域では、太平洋中部から東部を中心に、対流活動が活発になります。

一方、インド洋では、エルニーニョ現象ラニーニャ現象とは独立した海洋の変動として知られる、正のインド洋ダイポールモード現象が進行中です。
正のインド洋ダイポールモード現象とは、おおむね夏から秋に発生する現象で、インド洋熱帯域の東部で海面水温が平常より低く、この海域で対流活動が不活発になります。この現象も日本などに影響を及ぼすテレコネクションです。

今年の冬(2023/2024年)、正のインド洋ダイポールモード現象はピークを過ぎる予想ですが、影響は残るでしょう。
エルニーニョ現象と正のインド洋ダイポールモード現象の影響が残ることにより、熱帯の対流活動は、インド洋西部で活発、インド洋東部からフィリピン付近で不活発、太平洋中部から東部で活発になります。この状況は、日本付近の上空を流れる偏西風の流れ方に影響してきます。偏西風は蛇行し、日本付近では平年より北を流れるでしょう。このため、日本付近への寒気の南下が弱い予想です。

2019/2020年の冬 正のインド洋ダイポールモード現象の発生後で大暖冬

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前回、正のインド洋ダイポールモード現象が発生したのは、2019年の夏から秋です。この年の正のインド洋ダイポールモード現象は、10月にピークになり、記録が残る1950年以降で、最強クラスの正のインド洋ダイポール現象ともいわれています。

この後の冬(2019/2020)は、12月頃まで、正のインド洋ダイポール現象の影響が持続しました。日本の冬の平均気温は、基準値からの差が+1.43℃となり、冬として1897/1898年冬の統計開始以降、1位と大暖冬になりました。

このとき、エルニーニョ現象は発生していませんでしたが、太平洋熱帯域の中部で、海面水温が平常より高くなる「エルニーニョモドキ現象」と呼ばれる現象が顕著に発現していました。この影響と、正のインド洋ダイポールモード現象の影響が残ったことで、熱帯の対流活動はインド洋西部で活発、インド洋東部からフィリピン付近で不活発、太平洋中部で活発になりました。このため、偏西風が蛇行、日本付近では平年より北を流れ、日本で暖冬になったと考えられています。

参照:筑波大学ホームページ
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/pdf/p202109151405.pdf

今年の冬(2023/2024年) 暖冬予報とはいえ一時的な寒気流入が心配

今年の冬は、日本付近への寒気の南下が弱い予想ですが、寒候期予報のような長期的な予報には、寒気の流れ込みに影響する北極振動は反映されていません。

北極振動とは、北極付近と日本などがある中緯度帯の気圧が、南北で相反して変動する現象です。北極付近の気圧が低く、中緯度帯の気圧が高い場合を正の北極振動、逆の場合を負の北極振動と呼びます。大気は、気圧が高い方から低い方へ流れますので、正の北極振動は、寒気が北極付近に蓄積しやすくなります。一方、負の北極振動は北極付近の寒気が、日本など中緯度帯に流れ出しやすくなります。
前述した2019/2020年の冬ですが、記録的な暖冬の一因として、正の北極振動が冬の終わりにかけて卓越したこともあげられます。

今年の冬、北極振動については、正が卓越するのか、負が卓越するのかは、現段階では、予測がついていません。負の北極振動の発現で、寒気が流れ込む時期があるかもしれません。この場合は、日本海側で一時的に大雪になる心配があります。
冬の後半に本州の南岸を低気圧が進むようになると、寒気の流れ込みのタイミングと重なることで、太平洋側の平野でも雪に注意が必要になることも考えられます。

暖冬予想とはいえ、しっかりとした寒さ対策や雪への備えはしておくと安心です。

今年の冬 暖冬で日本海側の雪は少ない予想 それでも一時的な大雪の心配