現在4Kデジタルリマスター版が上映されている映画「私立探偵 濱マイク」3部作。永瀬正敏扮する探偵マイクの活躍を描き、のちにテレビドラマ化もされた本シリーズといえば、横浜・黄金町周辺の昭和な香りを感じさせる町並みも大きな魅力の一つ。今回は「濱マイク」ゆかりの地を巡ってみた。

【写真を見る】「私立探偵 濱マイク」シリーズといえば横浜日劇など横浜黄金町周辺の町並みが魅力的!(『我が人生最悪の時』)

■ディープな雰囲気の野毛〜日ノ出町駅周辺を散策

黄金町から少し離れたJR桜木町駅からスタートし、まず足を運んだのが第2作『遥かな時代の階段を』(95)でのボートチェイスなどでたびたび登場する大岡川周辺。劇中、桜が印象的なこの川沿いには“ハーモニカ横丁”こと野毛都橋商店街ビルがあり、ドラマ版ではマイクが忠志(松岡俊介)に銃を向けられるシーンなどで何度も登場する。

川の形に沿って湾曲した2階建ての建物に飲み屋がずらりと軒を連ねるこのビルができたのは、1回目の東京五輪が開催された1964年であり、昭和のレトロでディープな雰囲気がいまも漂っている。

そこから川沿いに歩いていくと見えてくるのが京急日ノ出町駅。駅にはホームドアが設置されるなど時代の流れを感じさせるが、『遥かな時代の階段を』のラストでマイクの妹、茜(大嶺美香)と母のリリー(鰐淵晴子)が歩く階段や、マイクリリーの乗る電車を見送った歩道橋などは当時の雰囲気をそのまま残している印象だ。

■事務所を構えた横浜日劇などマイクの行動範囲を巡る

京急線の高架を潜って黄金町を抜け、大岡川に架かる末吉橋を渡り、いざマイクが事務所を構えていた横浜日劇へ。

横浜日劇は2005年に閉館し、現在はマンションが建っているが、その向かいにはシネマジャック&ベティが営業しており、『罠 THE TRAP』(96)が上映されていた。

日劇跡周辺から歩いてほんの2、3分のところには、マイクの同級生である北村(阿南健治)が営む精肉店のモデルとなった北村商店(現在は閉業)や、マイクアルバイトをしていた末吉町のストリップ劇場「黄金劇場」が入っていた建物、マイクもひとっ風呂浴びていた利世館などが乱立しており、マイクの行動範囲がわかる。

■キャスト・スタッフも御用達の洋食屋でいただく絶品オムライス

小腹が空いたので、伊勢佐木町通りにある“ザ・町の洋食店”「コトブキ」へ。昭和29年創業と歴史のあるお店は、もともとはジャック&ベティのすぐ裏手にあり、作品にはそちらが登場していたが、現在も場所を移して元気に営業している。

店内には永瀬正敏や林海象監督のサインもあり、お店の方曰く、舞台挨拶がある際などによくお店に訪れるとか。林監督はコトブキを“第二の家”と呼び、取材を行った数日前にも顔を出したそうだ。

今回いただいたオムライスは、聞けば永瀬が「死ぬ時に食べたい」と太鼓判を押す一品だそうで、薄くしっかり焼かれた卵など、どこか懐かしさを感じる絶品だった。

マイクが足を運んだ店の現在は?

町を南下すると待ち構える活気あふれる横浜橋通商店街も映画に登場したロケ地の一つで、どこか懐かしさがムンムン。その小道にはドラマでサヨコ(松田美由紀)が営む喫茶店マツモトがあったが、ここも数年前に閉業しておりシャッターが降りていた。

商店街を抜けてさらに南下すると、首都高の下を流れる中村川があり、浦舟水道橋やマイクたちが食事を楽しんだ「食道苑」、おでん焼きそばが名物だった「磯村屋」跡地などのロケ地が散見。変わらず現存するものから、外観を変えたもの、なくなったものまで、現代的な風景とどこか懐かしさを感じる景色が同居していた。

かつては危ない町と言われたものの、いまではグッとクリーンになった黄金町周辺。それでもどこか昭和のいかがわしい雰囲気も感じさせる町並みも健在で、いつまでも残り続けてほしいと願わずにはいられなかった。

取材・文/サンクレイオ翼

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