『バチェラー』といえば、成功をおさめたひとりの独身男性を女性たちが奪い合う婚活サバイバル番組。そのため、女同士の激しいバトルを連想する人が多く、実際にこれまでのシーズンは見ているこちらまでもがヒヤヒヤしてしまうような場面が多々あった。しかし、8月24日に最終回を迎えた『バチェラー・ジャパン』シーズン5(Amazon Prime Video)は、これまでの番組の雰囲気とは一味ちがっていた。

参考:【写真】“女性参加者同士の絆”とドロドロ展開が共存する令和の恋愛番組『GIRL or LADY~私が最強~』

 このシーズンのテーマは、“シスターフッド”(※)。まわりの女性を押しのけてでも私が……というよりは、みんなが一丸となって戦っているような、いわゆる団体戦のイメージが強かった。そのため、若干エンタメ性に欠けているという指摘はあったものの、情が深い女性参加者たちを見て「こんな女性になりたい」と憧れを抱いた視聴者も多かったのではないだろうか。

シスターフッドとは、共通の目的をもった女性同士の連帯のこと。

 さまざまな経歴を持つ35歳以上の男女が、田舎の古民家で共同生活を送りながらパートナー探しに挑む『あいの里』(Netflix)でも、みな姉やおかよなど女性メンバーの優れた人間性に注目が集まっていた。少し前までの恋愛番組は、とんでもないことをしでかすトラブルメーカーだったり、同性ウケは悪いがなぜかモテる小悪魔女子だったり……いわゆる目立つメンバーが人気を得ることが多かった気がするが、 SNSの普及に伴った時代の変化により、番組視聴者の視点も変化しているからだろうか。

 SNSを見る限り、刺激だけのドロドロした展開より、これまで見落としていたメンバーたちの影の努力や繊細な気遣いが垣間見えたシーンで盛り上がりを見せることが増えている気がする。たとえば、『あいの里』で服を貸してあげる際、相手に気を遣わせないように「入らなくなっちゃったのがあるから、よかったら着てくれる?」と言ったみな姉の優しさが大きな反響を呼んでいた。

 メンバー同士がお互いに気遣い合っていた『バチェラー・ジャパン』シーズン5や、『あいの里』が人気を博していることを考えると、令和の恋愛番組で求められているのは、バチバチのバトルよりも、参加者同士の絆なのだろうか。とはいえ、好きな人の運命の相手はひとりしかいない。そもそも恋愛は、団体戦ではなく個人戦なのだ。やっぱり、好きだからこそ必死になってしまう戦いを見てみたい気もある。

 そんななか、毎週日曜夜10時より無料放送中の『GIRL or LADY~私が最強~』(ABEMA)は、これまでの恋愛番組の良さと、令和で新たに生まれた魅力をMIXさせている番組だと感じた。本番組は、“年齢と共に変化する女性の魅力や恋愛観・結婚観のリアル”をテーマに、12人の結婚願望のあr女性たちが20代の“ガールチーム”と30代の“レディチーム”に分かれて、誰もが羨む理想的な男性を奪い合っていく。つまり、個人戦のバチバチ感と団体戦の連帯感の両面を楽しめる婚活サバイバル番組に仕上がっているのだ。

 また、『GIRL or LADY~私が最強~』に登場するのは、とにかく自己肯定感が強い女性が多い。第1話では、ガールチームとレディチームが“ご褒美タイム”を得るために戦う場面があったのだが、両チームとも「私たちが勝つと思う」と自信満々に言い切っていたのが潔くてカッコ良かった。そして、『バチェラー・ジャパン』シーズン5の女性陣と同じく、選ばれる側でありながら自分たちが選ぶ側であるというスタンスで、力強く恋愛をしているのも印象的である。

 古きを大事にしながら、新たな風を取り込んでいく。前代未聞の婚活サバイバル番組『GIRL or LADY~私が最強~』は、“最強”の恋愛番組に成長する予感がする。

(文=菜本かな)

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