―[貧困東大生・布施川天馬]―


メンタルコントロールの重要性

 みなさんは、落ち込んでしまった時、どのように対処しますか? 僕ならば、音楽を聴いたり、美味しいご飯を食べたりして、自分自身の機嫌をとるようにしています。

 自身のメンタルコントロールは重要です。心持ち一つで、あらゆる行動のパフォーマンスが変化します。落ち込んでいたりイライラしていたりすると、普段はできることでもできなくなることがあります。

 このような時、僕は自らを奮い立たせていました。受験生には、そのような心持ちが必須です。僕が受験生の時によく考えていたことを表すシーンが、落ちこぼれたちが東大受験するマンガである『ドラゴン桜』にありました。



◆人生の分かれ道で教え子にかけた言葉

 場末のスナックの娘で、貧乏な暮らしをしている水野は、自身の境遇から抜け出すために東大受験を決意します。ですが、元落ちこぼれであった彼女は、成績が思うように上がらず、落ち込みます。

 そこに、東大受験の立役者である桜木が現れました。目的は、喝を入れること。「大丈夫、元気出せよ」と安易に元気づけることはしません。「元気になりたかったら、自分一人で元気になれ」と厳しい言葉を投げかけました。

 戸惑う水野に対し、桜木はさらに「この道路にひいてある線が、人生の分かれ道だと思え」と投げかけます。東大に行って天国にのぼるか、母親の欲と身勝手さの渦に巻き込まれて地獄に落ちるか、その分かれ道であると。

◆自分の機嫌は自分で取れ

 僕は、桜木の「元気になりたかったら、自分一人で元気になれ」に聞き覚えがありました。今の仕事を始めた時に先輩から言われた「自分の機嫌は自分で取れ」という言葉です。

「自分の機嫌は自分で取れ」とは、その先輩の処世術の一つでした。社会に出たら、誰も自分の面倒を見てくれない。不機嫌になっても、みんなは相手をしてくれない。むしろ、不機嫌になればなるほど、友達は減っていく。だからこそ、自分でメンタルコントロールできるようにしなさい。そのように教えられました。

 仕事をするようになってから言われたこの言葉ですが、受験生にも大変有効だと思っています。受験生活は、ストレス源に囲まれているからです。終わらない参考書、上がらない成績、周りからのプレッシャー……不安になる要素はいくらでもあります。

◆受験勉強中でも毎日2時間ゲームをする

 僕は、よく高校生から「やる気が無い時はどのように対処すればいいか」という質問を受けます。このような時は、決まって「自分の機嫌は自分で取るものだから、機嫌がよくなるような行動をしなさい」と答えます。その人によって機嫌の取り方は異なるので、一元化した回答ができないためです。

 僕の場合は、家が貧乏だったので、「いま自分が頑張らなくては、一生負け続けの人生になってしまうかもしれない」「頑張るなら今しかない」と奮い立たせるようにしていました。また、義務感だけでは体は動きませんから、適度に飴を与えてもいました。

 たとえば、勉強を2時間頑張ったら、自由に散歩に行くようにしていました。そして、その帰り道には必ずコンビニスイーツを買って、休憩室で食べていました。音楽を聴きながら街を歩いて、帰りがけに買った甘いものを頬張るだけで、自分の機嫌が良くなっていく様子が分かりました。

 また、元来勉強が嫌いだったので、家では無理に勉強しないようにしていました。気が向いたとき以外は勉強に関係することは一切せず、ゲームをしたり、YouTubeを観たりして過ごしていました。毎日最低でも2時間はゲームYouTubeの時間をとるようにしていました。

◆すべては“長期戦の準備”のため

 これらの飴によって、受験勉強を1年以上続けることができました。自分をコントロールし続けるためには、日ごろの手入れと定期的メンテナンスを行う必要が生じます。適度な負荷を自分にかけつつ、ガス抜きの機会を作ることで、長期戦の準備が整います。

 大学生として、半分社会に出てきてからは、「自分の機嫌を自分で取る」ことの重要性を肌で感じています。先輩も後輩も、自分の仕事で手一杯で、周りの面倒を見る余裕なんてありません。時折降ってくる周囲からの気遣いに甘えず、自分ひとりで元気になれるようにしなければ、誰からも見放されてしまいます。

 自分の機嫌の取り方は、自分にしか分かりません。普段から「自分は何をすると機嫌がよくなるのだろう」と考えておくと、誰かに迷惑をかける前に、機嫌を直すことができるようになります。意識したことの無い方は、ぜひ意識してみてください!

<文/布施川天馬>

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネスタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Twitterアカウント:@Temma_Fusegawa

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