昨今の社会問題について、誰も言えなかった言葉で鋭く切り込むコメンテーターエンドウさん。「もし、こんなコメンテーターがいたら?」を描いた洋介犬(@yohsuken)さんの「反逆コメンテーターエンドウさん」が痛快だ。いじめ問題や少年犯罪、偏向報道やアンチにも正面から立ち向かう、世の中の理不尽への皮肉を込めたコメントが読者にびんびん響いている。

【漫画】キラキラネームの人生は…!?本編を読む

■言えないことを代弁してくれる「こんなコメンテーター現実にいて欲しい」

本作は、書籍の1ページ目に「こんなコメンテーターがひとりぐらいいてもいいのでは、と言う願いのもとに描かれたものである」と、書かれている。これがエンドウさんが生まれたコンセプトであり、読者も読んだあとに“スカッとした”と声が多い。

コメンテーターエンドウさんは、忖度のないコメントが人気だ。例えば、凶悪な少年犯罪のニュースに対してアナウンサーは「現在の若者は特に心が病んでいる」と言った。しかし、エンドウさんは「昔から少年犯罪はバリバリにあった」と否定。「今の若者」をひとくくりにしたいメディアに真っ向から立ち向かう。

■集団いじめに対して「被害者の心のケアにつとめる」とコメントした学校側の対応に

集団いじめを受けた被害者。今も不登校で学校に通えていない。心のケアを優先すると言った学校に対して、エンドウさんは「学校のみの問題ではないけれど、足りないよね」と言う。「治療すべきは、あんな残虐な行為を平気でしでかした加害者の方」と、加害者について切り込んだ。イジメを隠蔽したがる学校にも届けたい言葉だ。

エンドウさんのキャラ作りがおもしろい。ただ、切り込むだけではない社会風刺漫画

コメンテーターエンドウさんが人気なのは、社会問題に鋭く切り込むだけではない。実は、愛妻家であり、YouTubeチャンネルの私服がひどい(笑)など、ビシッとスーツを着てコメンテーターを演じるエンドウさんとのギャップも本作の息抜きポイントになっている。今回は、多くの連載を抱えたスケジュールの中、洋介犬さんにインタビューをお願いすることに成功した。

ーーコメンテーターエンドウさんというキャラクターが生まれたきっかけを教えてください。

きっかけは7年ほど前にSNS投稿用に「もし忖度(という言葉は今ほど浸透していませんでしたが)なしで凝り固まった定形のやりとりを無視するコメンテーターがいたらどうなるだろう?」という想定で描き始めました。いわゆるシミュレーションに近い形でスタートしており、実は今でもこれはあまり変化していません。

ーーエンドウさんで反響の大きかった作品はどれでしょうか?

毎回それぞれに「良かった」の声が大きく、選ぶのも大変ですが「キラキラネーム」の回や「こどもハーネス」の回、「陰謀論」の回など読者さんの生活に微妙にマッチし、他人事でない回がやはり反響が大きいですね。予想よりも優しい、泣ける話に好感を持ってもらえたのは意外な発見でした(「脇役俳優」の回など)。

ーーエンドウさんを描くにあたり、誰かイメージされた方はいますか?

中身のイメージは単行本あとがきのとおり、ある古代中国の政治家なのですが、外見は評論家の須田慎一郎さんをモチーフにさせていただいております。いずれ御本人に「モデルにさせていただきありがとうございました」と、御礼のご挨拶に行ければとも思っております。

ーー今のコメンテーターより、エンドウさんの方がよっぽど爽快という意見もあります。プロットを立てるときに意識的にエンドウさんにこう話して欲しいという組み立て方をしているのでしょうか?それとも、エンドウさんというキャラが独り立ちして、反論しているのでしょうか?

前述のとおり、実はこの漫画はキッチリとした筋立てを用意しているわけではなく、テーマに沿ってエンドウさんやケンジロンがどう答えるか、アドリブで出た結果を整理している感じで描いています。建付けとしては「監督と演者」に近いかもしれません。

よく「作者は自分の思想をキャラに言わせているだけ」という批判をされることがありますが、そもそもそういうシミュレーションで成り立っているので、作者の意見と真逆なことをエンドウさんが言い出すことも多く、彼の思想は僕のそれとイコールではありません。

ーー「反逆」というだけあって、毎回コメントが鋭く痛快です。エンドウさんのコメント返しで苦労した点はありますか?

これは漫画の制作上のネックなのですが、小説や口語と比べてかなりセリフを削らないと漫画セリフとしては長すぎるという点があります。実は第一稿と比べると毎回30%はセリフ量を削っています。セリフ丸々ひとつなくすこともあります。あとは難しい用語になりすぎないこと。これは、読者さんの知識量を侮っているわけではなく、直感的にわかるセリフでないと、瞬間的に飲み込めないからです。

ーーエンドウさんの意見に対して、読者の方も考えさせられるし、さまざまな意見が出るのもまた見どころだと感じます。読者の皆さんの意見に対してはどのように感じていますか?

作中でエンドウさんが言っているように、議論の完成や目標は決して「どちらかの勝利」などという矮小なものではないと思います。「結果としてみんなにとって良い結論が出る」が最上であり、そこに個々人のメンツなど関係はないかと。そういう意味で多種多様な意見が寄せられ、考え、研磨して生活に持ち帰れればそれが一番良いのではないでしょうか。

ーーそのほかにどのような漫画を描いていますか?

基本的にはこういう風刺的な漫画家ではなくホラー漫画家なので、そういう作品の方が多いです。100億PVを記録した「外れたみんなの頭のネジ」や、ダンテの「神曲」をモチーフとした「ジゴサタ」など、非常に好評かつ高いセールスを残させていただいております。今後、さらに「メメ」という新作ホラーを予定しております。どうかご期待ください。

「反逆コメンテーターエンドウさん」は、現在、第2巻まで書籍化。さらに「GANMA!」で連載中。無責任なネット記事に対してや政治家のもっとらしい政策についてなど、ニュースで話題になっている問題に、エンドウさんがズバッと反逆してくれるぞ。

取材協力:洋介犬(@yohsuken)

キラキラネームを喜べない子供も…/(C)洋介犬/COMICSMART INC.