第36回東京国際映画祭・黒澤明賞の受賞者が、グー・シャオガン監督とモーリー・スリヤ監督に決まった。

【写真】第36回東京国際映画祭・黒澤明賞を受賞したモーリー・スリヤ監督

 東京国際映画祭では、故・黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送り出していきたいとの願いから、世界の映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる賞として、昨年14年ぶりに黒澤明賞を復活。昨年はアレハンドロゴンサレス・イニャリトゥ監督と深田晃司監督が受賞した。選考委員は山田洋次監督、檀ふみ、奈良橋陽子、川本三郎、市山尚三東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの5名。

 グー・シャオガン監督は、大学ではアニメ・漫画コースを目指していたが、希望通りに進めず、服飾デザインとマーケティングを専攻。在学中に映画作りに開眼。北京電影学院社会人コースなどを聴講して学び、ドキュメンタリーや短編の劇映画から撮り始めた。その後、初長編映画となる『春江水暖〜しゅんこうすいだん』は2年にわたる撮影期間を経て完成し、デビュー作にして2019年カンヌ国際映画祭批評家週間のクロージング作品に選ばれたほか、第20回東京フィルメックスのコンペティション部門にも出品され、審査員特別賞に輝いた。

 選考委員からは、監督デビュー作『春江水暖〜しゅんこうすいだん』において、ヒューマニズムあふれる人間観察と流麗なカメラワークによって一つの大家族の姿を描き、中国映画界から新しい世代の監督たちが登場しつつあることを世界に知らしめたと評され、そのたぐいまれな才能が高く評価されるとともに、今後、世界の映画文化に大いに貢献することが期待されるとして、受賞が決まった。

 モーリー・スリヤ監督は、2008年に初の長編映画作品となった『フィクション。』で、インドネシア映画祭で最優秀作品賞を含む四つの賞に輝くなど、国内外で高い評価を得た。2013年の第2作⽬『愛を語るときに、語らないこと』は同年に東京国際映画祭に出品、またサンダンス映画祭に出品された初めてのインドネシア映画となった。2017年の『マルリナの明日』はカンヌ映画祭監督週間を皮切りに米国、カナダ、日本を含む14ヵ国で劇場公開され、第18回東京フィルメックス最優秀賞を受賞したほか、第91回アカデミー賞外国語映画賞にインドネシアを代表して出品された。

 選考委員からは、西部劇を思わせるタッチで一人の女性の行動をパワフルに描いた監督第3作『マルリナの明日』において、これまでのインドネシア映画のイメージを覆し、世界を驚かせたと評された。また、この国際的な評価は今まさに活動を開始しつつある多くの東南アジアの女性映画監督たちに大きな希望を与え、今後も世界の映画文化に大いに貢献することが期待されるとして、受賞が決まった。

 授賞式は10月31日、帝国ホテルにて開催予定。また、同日15時よりBASE-Qにて両受賞者の記者会見も実施予定。

※受賞者コメント全文は以下の通り

<受賞者コメント>

■グー・シャオガン監督
第36回東京国際映画祭のご厚意と信頼により私に授与いただくこの栄誉は、黒澤明監督からの厳格な戒めのようにも思えます。
黒澤監督から「グー・シャオガンよ、映画とは真に何たるものかを探求しなさい。その答えを模索することが、映画を作り続けるということだ」と言われているようです。
長い年月をかけて「映画とは何か」という問いに向き合っていけたらと思います。
ありがとうございました!

■モーリー・スリヤ監督
物語、漫画、アニメ、そして後に映画が大好きになった私は、自分の名前が黒澤明と一緒に語られるなんて夢にも思っていませんでした。何しろ、その頃はまだ少女で、映画の撮影現場を率いる人物というイメージとはまったくかけ離れていました。それから十数年後、私はこの賞を受賞することになり、私の世界は変わりました。本当に光栄なことですし、このような形で私の人生を変えてくれた東京国際映画祭と選考委員の皆様に感謝します。

第36回東京国際映画祭 黒澤明賞を受賞したグー・シャオガン監督