大阪・なんばを拠点に活動する「NMB48」。かわいいだけでなくお笑いもこなす親しみやすいアイドルグループとして、2023年には結成13年目を迎え、メンバーたちはバラエティタレントにモデル、グラビアアイドルなど、あらゆるジャンルの前線で活躍している。

【写真】「僕はいない」渡辺美優紀着用衣装。みるきー自身が細部まで希望を伝えたという

そんなメンバーの個性を彩ってきたのが、オリジナルの衣装たち。この記事では、その多種多様な形や色、制作の裏話をご紹介!NMB48の衣装デザインからスタイリングまでを担当する松永麻里さんにたっぷりとこだわりを語ってもらう。

月替わりで登場する案内人は、TikTokで「NMB48衣装図鑑」と称して衣装の細部や着脱方法を紹介しているれいこちゃん(前田令子)、将来は“自分のブランドを持つ”という夢を抱き、メンバーの衣装作りも経験したことがあるかれんたん(原かれん)の2人。一体どんな制作エピソードが飛び出すのか?第13回は、れいこちゃんが案内人を担当する。

みるきーのラストシングルを彩った、儚さを感じるガーリー衣装

今回紹介するのは、NMB48の1期生であり、前線でグループを牽引したメンバーの1人・みるきー(渡辺美優紀)がセンターを務めた15thシングル「僕はいない」の歌唱衣装。彼女にとって卒業前最後のシングルということもあり、並々ならぬこだわりが詰まっている。

「MVはタイで撮ったんですが、そのときの衣装は水着だったので、この歌唱衣装の制作時は比較的時間があり、みるきー本人が『こんなイメージがいい』といろいろ意見を出してくれました。頭の先から足の先に至るまでディテールにこだわってみるきーと一緒に作り上げていった、とても思い入れのある1着です。みるきーらしい“甘いピンク”というよりは、イントロのイメージに合わせてどこか儚げで消えてしまいそうな、“切ないピンク”にこだわってオリジナルでプリントしました。また、あえて色をグラデーションにして、彼女の卒業に向けたいろんな気持ちを表現できたらと。本人の前向きな気持ちに合わせて、全体的に透明感のある色めを目指しました。

みるきー以外の衣装はシンプルめですが、お腹の部分がさりげなく空いたデザインだったり、みるきーが付けたいと言った小さめリボンがアクセントになっていたりと、みるきーのセンター曲ならではのデザインにしています。そしてみるきーの衣装とリンクするよう、色めもラベンダーピンク〜ラベンダー、そしてブルーへのグラデーションに。サビのクルッと回る振りや、最後に座るポーズなどに合わせて、ほかのメンバーは短めのスカートの上に長めのオーガンジーを重ねています」

■色、形、装飾…“自己プロデュースの塊”みるきーこだわりの1着

ここからは、れいこちゃんと松永さんによる対談タイム。ふわっとしたスカートなど、れいこちゃんの大好きな要素がたっぷりの衣装に会話も弾む。

前田「みるきーさんから、『こういうのがいい』っていう意見などはありましたか?」

松永「この衣装は、すべてみるきーの希望に沿って作らせてもらった衣装です。ピンクという色に加えて、レースやリボンの装飾っていうのも本人の希望です。踊ったときにふわっとなるシルエットも、そのときにチラッと見える裾のリボンも、全部みるきーが希望したものなの」

前田「そうなんですね!すごい、さすがですね…。じゃあ形も、みるきーさんの骨格に合った1着ってことですか?」

松永「そう!トルソーに着せるとわからないけど、本当はオフショルダーのようなデザインです」

前田「なるほど。やっぱりほかのメンバーの衣装と違って、スカートも1人だけめっちゃふわっと感があります」

松永「みるきーらしい姫感ありますよね(笑)」

前田「サビでターンするのがめっちゃきれいに見えて、すごいなと思ってました。花冠もみるきーさんが?」

松永「そうです。全体的にカジュアルウエディングっぽい雰囲気を出したいってこともあって、MV時の水着衣装にもこの衣装にも『絶対花冠がいい』って言ってました。リボンのたれ部分のお花にもこだわっていましたね」

前田「花冠にもリボンが付いていることで、それが動くとより顔に注目が集まりますよね。すごい、みるきーさんってほんまに自己プロデュース力が高いですよね!みるきーさんだけピンクで、ほかのメンバーがブルー系っていうのも好きです」

松永「1人だけピンクで、ほかのメンバーはラベンダー〜ブルーっていうのも、みるきーと決めました。色だけのプリントも難しくて、ブルーからパープル、グリーンのグラデーションになっていく、この色を出すのに何回も何回も試作しましたね」

前田「実際に出来上がったとき、みるきーさんの反応はどうでしたか?」

松永「『イメージ通りになってる!』って、めちゃくちゃ喜んでくれましたね。このピンクもオリジナルプリントなんですけど、色味にすごくこだわりました。この楽曲と合うように、かわいらしいっていうよりは、どこか切なさを残したイメージの、ちょっとブルーがかったピンクにしています」

前田「めちゃくちゃ儚さがあって、消えちゃいそうな感じが出てますね!歌番組とかで披露するのを見るたびに、この衣装と相まって泣きそうになるくらい。卒業ドレスとはまた違う、選ばれし者しか着れないドレスやなって思います。スカート丈は長めですよね?でも、みるきーさんは短いのが好きなイメージがあります」

松永「よくぞ気づいてくれました!(笑)。卒業ソングなのであえてこの丈で、ふわっと感を意識しました。MVも撮ったあとで、振りが決まってからの衣装制作だったから、回ったりしたときに長くふわっとしたほうが映えるし、振りも生かして考えました」

前田「最後は座って終わる振りだから、丈が長いと、より脚がきれいに見えますよね。とことん上品なのがめちゃめちゃいいなと思いました。みるきーさん以外の衣装は、水色に紫がかってる感じじゃないですか。海でMVを撮っているから、そういうイメージもあったんですか?」

松永「そうですね。みるきーの儚げなラベンダーピンクから、夏の切ない海のイメージに合わせて限りなく透明に近いブルーにグラデーションになっていく…幻のようなイメージを表現しようと思いました」

前田「ほかのメンバーの衣装にもリボンが付いているんですね」

松永「普通はこういうリボンを付けると子供っぽくなっちゃうんだけど、リボン以外の形が大人っぽいので子供っぽくならず、逆に際立っていい感じになりました!」

前田「裾もよく見たらリボンが付いていて、『こんなところにも!』って思いました。どこを見ても360度かわいいのが、ほんまにみるきーさんらしいですね」

松永「そう、彼女は出会ったときから本当にすべて徹底していて、まさにプロフェッショナル。細かい部分も1つ1つ確認して、リボンの縁の部分のパールブレードにもこだわりが詰まっています」

前田「ウエスト部分のレースもお花なんやって、今気づきました」

松永「ちなみに、ウエストに装飾したリボンベルトは曲によって真ん中につけたりサイドにしたり、動かせるようにしています。こんなところまでこだわっているメンバーって、ほかにいなかったです。作りがいがありますよね!」

ちなみに、れいこちゃんは生写真で水色の衣装を着たことがあるそう。今着てみたいのはどちらの色か聞くと、「水色も大好きですけど、ふわふわのスカートも大好きなので悩みますね」とのこと。

松永「でも、みるきーの衣装も似合いそう。ブルーベースのピンクだし!」

前田「え、ほんまですか!うれしい。みるきーさんは、髪が長いときも短いときもピンクが似合ってましたよね。こうやって堂々とピンクを着られることって私服ではなかなかないので、やっぱり憧れです」

松永「前回の連載のときに、『非日常なアイドルならではの衣装が着たい!』ってかれんたんとこじりんも言ってましたね」

前田「そうですね、やっぱり“アイドル”を感じられます。みるきーさん、卒業ドレスもかわいかったですよね!AKBさんの衣装展で見ました」

松永「基本的にみるきーの衣装は、みるきー自身にハッキリとしたイメージがあって、きちんと自己プロデュースしているから絶対にブレないんですよね。卒コンの『卒業わるきー』も、色のイメージや雰囲気など打ち合わせながら作らせてもらいましたが、衣装だけに限らず全てにおいて自分の“魅せ方”を知り尽くしているから、本当にすごいなと。まさにアイドルの中のアイドルですよね」

前田「“自分のことを全部研究している”って感じですよね!」

松永「そして形になったときに、本当に完璧に着てくれて似合っていて…。誰よりもしっかりかわいいから、すごいなーって、いつも関心の連続でしたね」

“ザ・アイドル”を体現する大先輩のエピソードをたっぷり聞き、衣装を間近で堪能して満足そうなれいこちゃん。次回も引き続き、れいこちゃんが案内人を担当する。ゲストには、連載初の後輩メンバーが登場!NMB48の始まりを告げた、ド派手衣装を紹介する。お楽しみに!

取材・文=上田芽依

撮影=福羅広幸

【松永麻里 プロフィール】

東京生まれ。1995年に大妻女子大学短期大学部家政学科卒業。

奇抜な衣装とメイクでパフォーマンスユニットとして活動後、2010年12月よりNMB48の衣装を担当。現在は吉田朱里など、卒業したメンバーのスタイリングも行っている。

王道アイドル衣装が大好きなれいこちゃんが、みるきーのラストシングル「僕はいない」の衣装の秘密に迫る!