日産R34「スカイラインGT-R」やスバルWRX S4といった個性的なパトカーを運用する埼玉県警。実は25年もの長きにわたり使っている交通取締用パトカーもあります。使い勝手はお世辞にもよいとはいえませんが、それでも愛される理由はなんでしょうか。

全国で7台しかなかったRX-7パトカー

2023年9月21日、「令和5年秋の全国交通安全運動」が始まりました。全国各地でさまざまな啓発イベントが行われるなか、埼玉県所沢市にある航空記念公園で実施された交通安全運動の出発式に、いまや全国的に希少となったマツダRX-7」のパトカーが参加していました。

いわゆる「FD3Sセブン」と呼ばれるRX-7パトカーが採用されたのは1997年のこと。高速道路などで交通取締に用いる「交通取締用四輪車(高速II型)」として国費調達(警察庁が一括購入し、必要な都道府県に割り振る導入方法)された同車は、その数わずか7台しかなかったものの、ロータリーエンジン搭載の2ドアクーペ、いわゆる「ピュアスポーツカー」であったことから、運用が始まるとたちまち注目を集めました。

全長4.28m、全幅1.76m、全高1.23mというボディサイズは、高速走行時の安定性を追求したからこその、いわゆる「ワイド&ロウ」な車体デザインといえるでしょう。

駆動方式はFR(フロントエンジン・リアドライブ)で、エンジンは最高出力265馬力、最大トルク30.0kgmを発揮する「13B-REW」水冷ロータリーターボ(直列2ローター)を搭載しています。

これにより圧倒的な加速力と高速性能を誇りましたが、パトカーとしての使い勝手は別でした。全高が低いため、ヘルメットをかぶった警察官が乗り降りするにはかなり厳しく、またホールド性を高めた形状のシートは、腰回りに様々な装具を付けた状態ではタイトすぎたそう。

また、一応4名まで乗れるように後部座席も用意されているものの、限りなく“緊急用”に近いものであるため、ここに違反者や被疑者を乗せるのは厳しい状況でした。

警視庁には「サバンナRX-7」「RX-8」も

RX-7は、ほかにもトランクルームの狭さが欠点になった模様です。ほかのパトカーであればプラスチック製のパイロンや旗、発煙筒三角表示板消火器など様々な装備を積めますが、RX-7の場合はプラスチック製パイロンすら積載が難しいため、折り畳み式のものをいくつかと、発煙筒消火器程度で、大きなものは軒並み積めません。

こういった観点から、第一線で使われることは案外少なかった模様です。ただ、スポーツカーベースのパトカーであるため、展示すればギャラリーの目を引きます。実際、現場の隊員に話を聞いたら、現在はほぼイベント用になっているそうですが、高い注目度を考えるとその使い方もアリだと思います。

なお、マツダRX-7は前出のFD3S以外に、「サバンナRX-7」の名で知られる初代「A22C」、2代目「FC3S」もパトカーとして採用された実績があります。そのため、RX-7は3代すべてパトカーになっています。

FD3S型のRX-7パトカーは、埼玉以外に、宮城、新潟、群馬、栃木、千葉、京都に配備されましたが、現役なのは埼玉県警と新潟県警の2台だけです。

新潟県警も当初は高速道路交通警察隊に配備されましたが、のちに交通機動隊へ移管しています。また埼玉県警と同じく赤色灯はラッパ型レーダーを搭載したものでしたが、その後レーダーなしの通常のバー型赤色灯に更新されています。

すでに運用開始から25年が過ぎようとしている埼玉県警のRX-7パトカー。いまや市販車でも見かけることが少なくなっており、いつ退役してもおかしくないほどベテランの域に入っています。

ただ、注目度は依然として抜群に高いため、イベントなどで展示すればそれだけで様になります。交通安全のシンボルとして末永く元気に走り続けてもらいたいと、実車を見て改めて感じました。

2023年9月21日、埼玉県所沢市の航空記念公園で実施された交通安全運動の出発式に参加していたRX-7パトカー(柘植優介撮影)。