漫画家の土田世紀による同名コミックを、吉沢亮永瀬正敏小栗旬、阿部進之介ら4人を主演に迎えて実写映画化した『かぞく』が、11月3日(金・祝)に公開されることが決定。このたび場面写真4点と、本作で監督デビューをはたす澤寛のコメントが到着した。

【写真を見る】吉沢亮らとともに主演を務める小栗旬の意味深な表情に注目

17歳で漫画家デビューした土田は、代表作「未成年」、「編集王」、「雲出づるところ」を送りだし、「同じ月を見ている」で平成11年文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞、人気作家としてのキャリアを積み重ねていた2012年、突然この世を去った伝説の漫画家だ。松本大洋をはじめ、多くの漫画家が影響を受けた土田の生きざまを色濃く描く未完の絶筆作品が「かぞく」が原作となっている。監督、脚本を手掛けたのは、映画『十三人の刺客』(10)、「るろうに剣心」シリーズ、人気テレビCM「au 三太郎」シリーズの衣裳デザイン、キャラクターデザインを務めてきた澤田石和寛。本作では、これまでに写真作家、映像作家として活動してきた澤寛(Kan Sawa)名義で、吉沢、小栗たち豪華キャストを迎え、満を持しての映画監督デビューを果たす。

映画は「かぞく」のなかで描かれた5つのエピソードを原作に、澤寛自身の生い立ちや経験を織り交ぜ、現代家族を包括的に描く映画へと昇華させた。旧来の家族構造から「核家族」を基準に、「婚姻関係」、「親子関係」、「血縁関係」、「法や倫理に背いた関係」、「父とは」、「母とは」、「子とは」などのテーマを各エピソードに振り分け、土田が描いた物語が現代家族の背負ってきた旧来の家族構造の特徴である「家父長制家族」の諸問題から生まれた物語であったとして、それぞれ家族の再生を試みながら「家族とはなにか」を問いかける。

音楽には舞台音楽家である棚川寛子を起用。SPAC静岡県舞台芸術センター芸術総監督である宮城聰協力のもと、ムーバーとスピーカーに分ける演劇様式を極めたSPACの俳優たちによる音楽演奏とともに、映画の外から映画へ介入する「声や息の出演」という独自の表現を確立し、映画へ音楽と息を吹き込む。サウンドデザインは清水宏一が担当し、棚川の音楽、SPACの演奏とともに、映画独自の世界観を築く。

撮影は山本英夫が担当し、撮影したフィルム映像を、澤寛自身でカラグレーディングの指揮をとり、色彩を確立。秋田と千葉を中心としたロケーションから日本の風土を映すことで、日本的霊性を映像に呼び込んだ。すでに国際映画祭への招待も決定しているとのことで、期待度の高さがうかがえる。

■<スタッフコメント>

●澤寛(監督)

「ずっと現代における『家族とはなにか』と考えてきた。私にとって家族とは他人も同然で、家族になにかを求める意思を持つことはなかった。家族という組織は親子、夫婦それぞれが、その時代を生き抜くために互いの“扱い”を変えながら、愛も遺恨も引き連れて出産と育成という本能をもとに、社会環境の変化に合わせてその時代に必要な関係を維持しながら、役割を変えてきたのだ。家族とは親が子どもを育てるという関係以上のものではないように感じていた撮影当時の私は、劇内に登場する家族関係を崩壊させようと思っていた。離れていく家族から『家族』を感じることができると思っていたのだ。

2019年に撮影をしたのち、1年後の7月に残りを撮影した。すべての撮影を終え、2020年の9月から自宅アトリエで編集作業に入り、シナリオと撮影済み素材を見ながら、この映画の結末を改めて考えていた。親は子どもになにができるのだろうか。子どもは親になにができるのだろうか。家族とはなにか。本格的なポストプロダクションに入る前、私は20年ぶりに実家を訪れ独り身の母と会話をし、これまで感じてきた、家族を好きと思えなかった理由を述べた。そして、私の父親、彼女の元夫が数年前に亡くなっていたことを伝えた。元夫の人生の結末を聞いた母の口から、私の幼少期に起きた家族の事情を伝えられた。それは子どもからの目線であったからなのかもしれない。しかし、その時の私は、家族というものは、生きていようが死んでいようが関係がなく、自身が自身であるために必要な存在なのだと理解した。

この映画の呼吸を聴く。私の目に見える世界は少しずつ変わっていく。私は、この不思議な関係を描くことで、家族の未来を描きだしたのだ」

文/山崎伸子

吉沢亮、永瀬正敏、小栗旬、阿部進之介ら4人の主演で、土田世紀の同名漫画『かぞく』を実写映画化!/[c]土田世紀/日本文芸社,ANIPLEX, Inc.