文部科学省の調査結果によると、2021年度の全国小中学生の不登校児童生徒数は9年連続で増加しており、数で言うと小学生は約8万人、中学生は約16万人で過去最多となりました。いまや不登校は珍しくない時代と言えますが、それが我が子のこととなれば、どのように対応すればよいか、最初は戸惑ってしまう人も多いのではないでしょうか。

 『学校に行かない君が教えてくれたこと 親子で不登校の鎧を脱ぐまで』の作者・今じんこさんもそうした一人でした。「多様性のこの時代だもん。不登校に偏見なんてないよ」と思っていたものの、長男の「もっちん」が小学校に行かなくなったとき、勉強のこと、将来のこと、社会性などを考え、「テンパりまくりの荒ぶりまくりでした」と振り返ります。同書は「親として」というプレッシャーの鎧に押しつぶされそうになっていた今さんが、その鎧を脱いで親子をやり直すまでを描いたコミックエッセイです。

 もっちんが「明日学校に行かない」と突然言い出したのは、小学校に入学してひと月経った5月。最初はなだめすかして送り出していたものの、次第に激しく暴れて登校を拒否したり、お腹が痛い、吐くなどの症状が身体に表れたりし始めました。「学校に行きたくないもっちんと 行ってほしいけど行ける方法が分からない私と 周りの目や声の恐怖で 私は混乱していた」(同書より)という今さんは、自分の過ちに気付かず、暴走を加速させていったといいます。

 「2時間目までなら頑張れる?」「最近休んでないね! めちゃめちゃすごい! 頑張ってる!」といった声がけに応える姿勢を見せていたもっちんですが、本当はそれは「学校に行けたら母が喜ぶから」という理由でした。「寄り添いという名のもと圧力をかけていたのに 本人が進みたくない道だとは思いもせずステップを踏ませ続けた」(同書より)と今さんは当時を振り返って悔やみます。

 「もっちんが『学校行きたくない』と言った時 『学校に行けないなんて、この子に問題があるのでは』と思った でも問題だったのは、私のそのまなざしだ」と今さんは言います。これはまだまだ世の中に、そして親である私たちの心の中に、不登校に対する偏見や誤解、子育てに対する固定観念があることに気づかされる言葉ではないでしょうか。いまでは「芽に元気がないのなら 種のせいにしないで 環境に目を向けよう 子どもには自然に育つ力があるのだから 大人にできるのはその芽を潰さないことくらいかもしれない」(同書より)との思いに至った今さん。今さん親子が葛藤の末にどのような答えを見つけたのかはぜひ同書でご覧ください。

 コミックエッセイの形で描かれている同書ですが、ほかにも「学校に行かないお子さんを持つ親300人への本音アンケート」や「フリースクールを運営する二人に聞いてみた!」といった読み物も収録。不登校への理解を深める書籍として、特に子育て中の皆さんにおすすめしたい一冊です。

[文・鷺ノ宮やよい

『学校に行かない君が教えてくれたこと 親子で不登校の鎧を脱ぐまで (はちみつコミックエッセイ)』今じんこ オーバーラップ