
大人気ゲームシリーズ「ポケットモンスター」のカードゲームが空前の大ブームを起こしています。さまざまなニュースで報じられているのでご存知の人も多いでしょう。
筆者も子供が欲しいというので購入したいと思っているのですが……カード発売日になると、販売店は大行列で即完売。地方のコンビニでも入荷したら、明け方から大行列ができています(※本記事に転売行為を推奨する意図はありません)。
◆転売がいまだ横行している現状
ではこのようにカードを購入している方々は「何が目的」なのでしょうか? 筆者自身も某大型電気店で並んだ経験がありますが、購入しているおよそ半分は純粋にカードで遊びたい、子供が欲しがっているから一緒に、もしくは家族を代表して並んでいるように感じました。
しかし、半数の方は明らかに「転売」を目的として購入しているように感じます。購入した直後、お店を出てすぐにスマホを開いて、買ったばかりの商品を写真に撮って何やらやっているのです。
その場で未開封のパッケージの写真を撮る行為はかなりの違和感があり、メルカリやヤフオク等に出品しているんだろうな……と容易に想像できます。また、それらの売買アプリには、未開封のものが数倍〜数十倍の値段で出品されていて、なかには「さっき買ったばかりです!」なんて売り文句の品も。
◆数十万円超で取引されるレアカードも
では実際に現時点でポケモンカードは高額で「転売」することは可能なのでしょうか? そしてそれにはどんな方法が必要なのでしょうか?
現在、いわゆるレアカードなどは数十万円、数百万円を超える価格で取引されています。事実として転売はできてしまいますし、されています。しかし、それはほんの一部のレアカードだけであり、他のものは10円以下もザラです。
転売をする人は「効率よく」レアカードを引き当てて売りたいわけですが、箱と包装がされていますので、外から目視しても、そのパックの中にレアカードが入っているかどうかは分かりません。ではどうやって「サーチ」いわゆるレア抜きを行っているのでしょうか?
◆主に高価で取引されているカードは?
この封の外からレアカードが封入されているかを知る方法はYouTubeなどで紹介されてしまっています……。そもそもポケモンカードには、
■カードは1パック180円(税込)〜(シリーズにより価格は異なります)
■1box 30パック入り(シリーズによって数は異なります)
■レアリティが高い順から、SAR(スペシャルアートレア)、UR(ウルトラレア)、SR(スーパーレア)、AR(アートレア)となります(2023年8月現在)
これらのSAR(スペシャルアートレア)、UR(ウルトラレア)、SR(スーパーレア)のレアリティカードが、主に高値で転売されるのです。このレアリティのカードというのが、1box(30パック)に1枚の封入率で入っています。つまり1box(30パック)を購入すればSAR(スペシャルアートレア)、UR(ウルトラレア)、SR(スーパーレア)のどれかが1枚必ず手に入るという訳です。
それで、1boxに1枚の封入率で入っているパックを抜き、別のパックとすり替え、フリマサイトで未開封のboxとして転売するという悪質な行為が横行しているのです。
◆実際にレアカードを当てる方法がある
では封を切らずにどうやってそのレアカード入りを当てているのでしょうか? 具体名は伏せますが、開封せずに中のカードがレアなのか分かるグッズは、インターネットショップで簡単に購入することができます。YouTubeには注意喚起のための動画が配信されていますが、実際に使用すれば、約99.9%の確率で分かってしまうという精度の良さです。
ちなみに、個人的に「万引き」と大差ないと思ってしまうのが、コンビニなどでこの悪質な方法を使用し、レアが入っているパックだけを買って帰るというもの。完全に常識の範疇を超えていますよね。
また、購入時のboxについているシュリンク(ビニール)を再度貼り付ける行為「再シュリンク」を行うことで、一度開封したにもかかわらず、未開封をうたって転売する悪質行為も行われています。当然ながら中身からはレアリティカードが抜かれてしまっています。
また、フリマサイトでは「高確率レアパック」などとうたい、通常のパック価格の倍以上の値段で販売する行為も行われています。
◆悪質な判別方法は「イタチごっこ」
悪質な方法は他にもいくつか存在します。
しかも、どの家庭にもある物で重さを量って簡単にできてしまいます。こちらもYouTubeで実際に使用した例の動画が配信されていますが、高い確率で分かってしまうのです。他にも、スマホのライトをパックにあてて、中身を透かす行為もあります(こちらは対策がされており中身が透けない仕様に変更されています)。
フリマサイトではこのようなサーチ法を使い、レア抜きされたbox、高確率パックなどが多く出品されており、被害に遭う人たちが後を絶たない現状です。
しかも、ポケモンカード側が対策をしても、新たなレア抜きテクニックが生み出されていて、もはや現状は運営と転売ヤーの「イタチごっこ」です。
◆実際に転売している人の状況を聞いた
実際に過去に「転売」をしていたAさんにインタビューを行いました。
――まず具体的にどのようにして利益を得ていたのですか?
Aさん:まずは発売日にbox(30パック入)を大量に購入することです。1boxの価格が、1パック180円×30で5400円。ですが、発売されると同時に、フリマサイトでは1boxが1万3000円とかになるのでその差額分が利益になる感じで、すごい月でboxの転売だけで50万円以上稼いでいました。
――そんなにたくさんどうやって購入したのですか?
Aさん:私は地方に住んでいるので、コンビニなどをはしごしたり、スーパーなどで早朝に並んで購入していました。コンビニなんかでは発売日の24時を回った時点で、入荷したboxを全て購入したりしていました。ちなみに今は、各販売店でも購入制限が設けられて1人何パックまでとなってしまったので、転売ヤーはかなり減ったように思います。
◆「探知機」を購入して、やり方はYouTubeで
――「サーチ」いわゆるレア抜きなどはやっていましたか?
Aさん:やっていました。インターネットショップで「探知機」を購入して、YouTubeなどで見ながらやりましたよ。ほぼ、ほぼの確率で分かりましたね。レアを抜いて、レアがないパックをバラで転売してましたね。これも結構儲かりました。
――詐欺に近い転売についてどう思われますか?
Aさん:いけないことだと思います。ただ皆んながやっていることだからとか、転売に対しての対策があまりなされてないことから、今でもやっている人はたくさんいると思います。情報が溢れているから、防げない部分もありますし、ただ絶対やってはダメですね。
――被害に遭わないためには?
Aさん:とにかく転売品は買わないこと、ですね。今では、購入できなかった人向けに、公式が受注販売などを行なっているようなので、時間が掛かっても、確実に購入できるのでそれを待ったほうがいいです。
◆今後、大損する可能性が大いにある
現在では「高額なカードは大会での使用を控えてください」とアナウンスがされるほど、転売による高騰が問題になっています。もはや本来の使い方に矛盾まで生じてしまっているのです。
過去を遡れば、昭和〜平成の時代にも、トレカの高騰(海外の野球カードなど)や主にアイドル系テレフォンカードの高騰がありました。しかし今はどうでしょう? ゼロではありませんが、それらの価値は完全に暴落し、泣いたコレクターも多くいます。
これらと同じように、時代の流れに沿って必ずこのポケモンカード高騰の「ブーム」もゆっくりひっそりと終焉を迎えるはずです。いま、数万〜数十万円から、それ以上のお金を出してカードを「投資目的」で購入している人は、相当なリサーチを常にしておかないと今後、大損する可能性が大いにあります。
転売を実際に行なっていた友人にインタビューを終えて、転売を誘発するような情報が多いことや、サーチなどに対しての対策が、イタチごっこになっていたりと、今後も転売は続くかもしれませんが、自分の身は自分で守る! 転売品には手を出さないこと、遊びの範疇で純粋に楽しむのが結局は一番良いのかもしれませんね。
<TEXT/SUKESAN>
※本記事は、筆者と「ジャパニーズピッカーズ」(レトロ文化探求チーム)のリョウタとの共同執筆です。
【SUKESAN】
ファミ通 編集者→エイベックス→学校の先生数年→新垣結衣さん他、タレントさんのピアノ&歌講師。番組、CMを作る人。昭和レトロ なガチャ『コスモス』アプリ開発中。レトロゲームの話はお任せあれ。育児奮闘中。X(旧Twitter):@sukesankoba note:SUKESAN

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