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車幅2m 意外な取り回し性能

果たしてBEVが一般化した時代は何時やって来るのか。

【画像】後輪操舵はこんなに切れる EQE SUV 細部まで見る【Cd値 0.25のSUV】 全60枚

環境問題を背景にした政治的な動きもあって、予想外にBEVが増加したものの電力供給も急速充電スタンド数も整っていない状況で、クルマだけが先行してしまった印象は拭えない。

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EQE 350 4マティックSUVローンチエディション(アルペングレー)    神村聖

ただ、EV時代がやって来ても効率を主とした性能向上は必須なのは間違いない。

メルセデス・ベンツのBEVラインナップとして加わった「EQー」系は現在7系統があるが「ーE」系および「ーS」系はBEV専用プラットフォームから開発されたモデルであり、BEV時代への技術的蓄積を狙ったモデルと考えていい。

試乗したEQE SUVは先に日本に導入されたEQS SUVのショートホイールベース仕様にも思えるが、全高は55mm低く設定され、ショーファー用途も対象としたEQS SUVよりもキャビンボリューム感を抑えてオーナードライバー向けのすっきりとした外観としている。

軽快と言うと語弊があるが、実際に目の当たりにするとEQS SUVと比較して一回りコンパクトに見え、ドライバー志向とプレミアム感の按配がいい。

正味車体幅で2mを超える車幅は狭い場所での取り回しに気を使うが、EQS SUV同様に逆位相最大10度の切れ角を備える電子制御後輪操舵機構により最小回転半径は4.8mでしかなく、意外と生活の場での取り回しがいいのもEQE SUVだ。

「ーE」と「ーS」の差を知る

BEVにとって車体サイズ、とくに床面積は重要。搭載できる駆動用バッテリー容量に影響するからだ。

EQS SUVバッテリー容量が107.8kWhなのに対して、ホイールベースが180mm短いEQE SUVは89kWhとなる。

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EQE 350 4マティックSUVローンチエディション(アルペングレー)    神村聖

バッテリー容量は約17.5%減だが、満充電航続距離減は約11%。250kg(8.7%相当)軽い車重も利いているが、駆動系も含めた総合的な効率向上が図られている。

その象徴の1つがEQE SUVから採用されているディスコネクトユニット(DCU)だ。

駆動システムは前後軸それぞれに駆動モーターを配した4WDシステムを採用。DCUは巡航時などの軽負荷走行時に前輪駆動用モーターを切り離す機構。断続はセンターシャフトに置かれたクラッチにより行われる。減速や加速では4WD稼働が基本なので、効果はそう大きくはないと予想されるが効率向上への前向きな姿勢がいい。

ただし、運転してその効果や作動を実感できるかと言えば否である。こういったシステムは存在や介在を意識させないことも完成度。説明されて初めて分かる陰の立役者である。

「センスがとてもいい」の評価

刺激や味に奔らず自然体の運転しやすさは近年のメルセデス車の特徴。

BEV系はとくにその印象が強く、EQE SUVはその点でも最新モデルである。

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EQE 350 4マティックSUVローンチエディション(内装色:ネバグレー/ビスケーブルー 本革)    神村聖

全開にすればタイムラグなしでその回転の最大トルクを発生し、パワーコントロール精度も圧倒的。当然、ドライバビリティはプログラム次第だが、そのセンスがとてもいい。

加減速のドライバーの意図はペダルコントロールに表れる。単純な踏み込み量だけでなく、踏み込み速度等々も含めてクルマに伝える。

穏やかに加減速したければゆったりと。EQE SUVはペダル踏み込み量に忠実に反応する。

加速に入った時も、ペダルを緩めて巡航に移行する時も繋ぎが滑らか。神経質にペダル操作しなくてもクルマのほうで程よく均してくれる。

素早く深く踏み込めば、直後は“ちょっと誇張気味に”加速するが、すぐに踏み込み量相応に。伸びやかな加速も好印象。もちろん、神経質な操作は要求されないし狙った速度で巡航に入るのも容易。

視点を変えるなら同乗者に運転上手と思わせるようなドライバビリティ。ドライバーだけでなく、同乗者にも優しいパワートレインである。

“重さを感じさせぬ走り”とは

サスにはエアマティック、つまり電子制御エアサスを採用する。

メルセデス車の上級モデルでは珍しくはないが、前後のトルク配分を自在に制御する4WDシステムに後輪操舵機構も備えてこれもまたEQE SUVの電子制御使いの巧みさだ。

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最大10度の後輪操舵を標準装備。ステアリング操作だけでなく、ブレーキやサスペンションと統合制御される。    メルセデス・ベンツ

メルセデス車の操縦性を要約するとほぼ同じになってしまう。余計な回頭反応がなく、やや深めの舵角で乱れることなくコーナリングラインに乗る。

操舵による旋回力の変化は常に連続的。メリハリに欠くとも言えるのだが、適度な接地感と収束性が利いているのでダルとかルーズといった印象は皆無。低重心のBEVということを割り引いても2.6tの車重を感じさせない。

動き出しはスムーズで“ストローク速度およびストローク量を抑えるサス制御”はバネ定数も減衰力も電子制御化されたエアマティックの効果と理解できるが、前後駆動力配分や後輪操舵は何時何処でどのくらい介入したか体感できない。

前述したDCUもそうだが、制御の馴染ませ方が絶妙。ドライバーや同乗者は身を委ねるような安心感や素直な運転感覚などの結果だけを楽しめばいい。

172万円差 まとまりがポイント

EQE 350 4マティックSUVローンチエディションの価格は1369.7万円。

EQS 450 4マティックSUVよりも約172万円低い値付けだが、パワートレイン関連だけでなく、ナビと連動したAR HUDや助手席前面まで多うパノラミックなディスプレイのMBUXハイパースクリーンは採用されていない。メルセデス車に下克上なしというわけで価格差は装備・性能に反映されている。

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EQE 350 4マティックSUVローンチエディションの後席(内装色:ネバグレー/ビスケーブルー 本革)    メルセデス・ベンツ

ただ、試乗した印象では“EQS SUVのローコスト型”の印象は皆無だった。

ショーファー用途まで考慮した車体サイズは1人2人で使うには無意味に大きく、運転感覚や狭い場所での取り回し、悪路走行を考えるとEQE SUVのほうがまとまりがいい。

ちなみにMBUXハイパースクリーンは上位設定のAMG EQE 53 4マティック+SUVに標準装着されている。

気になるのは満充電航続距離だが、安心感という面では大同小異。使い勝手に影響するほどではない。内燃機車に比べれば不十分なのは、現在のBEVでは仕方ないところだ。

1400万円の予算建ては一般的とは言い難いが、最新のBEVとメルセデス車の走りの質を楽しむための「実」が揃ったモデルでもあり、価格相応の魅力を備えているのは間違いない。

EQE 350 4マティックSUVローンチエディション スペック

価格:1369万7000円
全長:4880mm
全幅:2030mm
全高:1670mm
0-100km/h加速:-
CO2排出量:0g/km
車両重量:2630kg
航続可能距離(WLTC):528km
パワートレイン:同期モーター
ギアボックス:1速固定式
最高出力(システム):292ps
最大トルク(システム):78.0kg-m
最高出力(前):71kW(97ps)/2682-16031rpm
最大トルク(前):26.5kg-m/0-2682rpm
最高出力(後):144kW(196ps)/2662-15913rpm
最大トルク(後):52.4kg-m/0-2662rpm
駆動方式:四輪駆動
バッテリー種類:リチウムイオン電池
バッテリー容量:89kWh
乗車定員:5名
最低地上高:160mm

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回生ブレーキによる減速度は3段階に設定できる。D Autoでは、先行車を検知すると、車間距離を調整しつつ先行車が停車に至るまで可能な限り追従する。    神村聖

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