2022年6月、大分県別府市交差点で発生した、大学生2人が死傷したひき逃げ事件。1年以上たった現在も容疑者の行方が分かっていない中、9月15日警察庁が通常の指名手配から「重要指名手配」に切り替えたことが報道されました。ひき逃げ事件の容疑者が重要指名手配に指定されるのは、全国初ということです。

 この「重要指名手配」とは、通常の指名手配とはどう違うのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

殺人、強盗致傷などの「凶悪犯罪」が対象に

Q.そもそも、通常の「指名手配」とは何ですか。

牧野さん「『指名手配』とは、被疑者の身柄を確保するために、特定の事件で逮捕状が出されている被疑者の情報(氏名、顔写真、外見の特徴、事件内容など)を公開し、国民全体から情報提供を受けて被疑者の逮捕を要請する制度です(犯罪捜査規範31条)。『逮捕状を取ったものの、被疑者が所在不明』の場合に行われます」

Q.一方、「重要指名手配」とは何ですか。

牧野さん「『重要指名手配』は、指名手配とした容疑者のうち、全国の警察を挙げて捜査をする必要性の高い、殺人や強盗致傷などの凶悪犯罪、または広域犯罪を対象として指定された指名手配をいいます」

Q.今回、ひき逃げ事件の容疑者が初めて重要指名手配に指定されたことについて、どう思われますか。

牧野さん「先述したように、通常、重要指名手配は殺人や強盗致傷などの凶悪犯罪が対象となることが多いです。道路交通法違反の容疑者が重要指名手配に指定されたのは全国初の事例で珍しいのですが、単なる道交法違反ではなく、殺人の容疑もあるので、重要指名手配とされたものと思われます」

Q.ちなみに、指名手配中の容疑者が「自首」すると、刑は減刑されるのですか。

牧野さん「刑法第42条には『罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる』とあります。これは『犯罪が発覚し、犯人が誰かが判明する前』を意味し、これらが判明していて、犯人の“所在”だけが判明しない場合は含まないとされています。

そのため、指名手配されている被疑者が自ら警察に出頭しても、『罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首した』という要件を満たさないため、法律上の『自首』にはあたらず、刑も減刑されません」

オトナンサー編集部

「指名手配」と「重要指名手配」はどう違う?