ドナルド・トランプ元アメリカ大統領ボーイングに対し、旅客機「757」の後継モデルを開発すべきだったとSNS上で主張しました。この「757」は、どのようなモデルなのでしょうか。

日本では「結構レア機」…なぜ?

ドナルド・トランプ元アメリカ大統領が、自らが立ち上げたソーシャルネットワーク「TRUTH Social」上で、航空機メーカーのボーイングに対し、かつて同社が製造していた旅客機「757」の後継モデルを開発すべきであったと主張しました。この「ボーイング757」とはどのような旅客機なのでしょうか。

ボーイング757、海外では多くの航空会社が使用しているものの、日本ではめったに見かけることができないレア機とされるモデルです。

1970年代後半、ボーイング社は2つの新型旅客機の開発を計画していました。のちに767となる複通路機の「7X7」と、757となる単通路機の「7N7」です。この2機種は共通の操縦システムが導入されており、一定の訓練を積めば同じ資格で乗務できる、いわゆる”姉妹機”として開発されました。航空会社での就航は767が1982年、757は翌1983年からです。

757シリーズは、全長約47mで200席クラスの標準型「757-200」と、全長約54mで250席クラスの胴体延長タイプ「757-300」の2タイプに大別できます。標準的な座席の配置はともに横3-3列です。

そして、短距離向けに開発された機体であるため、海外でも国内線での就航が多く、これが日本で見かけない一因でもあります。また、姉妹機767のように、航続距離延長タイプの「ER」型も存在しません。

日本ではJAL日本航空)、ANA(全日空)ともに767を導入。これは発着枠に制限をもつ羽田空港などを抱える日本市場では、757より1便あたりの席数を多くできる767が好まれた――というのが定説です。また、767は日本でのパーツの生産比率が高いことも767が選ばれた理由とも。一方で日本の地方路線では、757よりも小型で、ボーイングが757より前に実用化していた単通路機「737」が好んで使用される傾向にありました。

トランプ氏愛機にもなった757、彼はどこを評価していたのか

こうした理由から日本の航空会社では導入ナシとなった757ですが、海外では人気のモデルとなっており、2023年現在もデルタ航空、ユナイテッド航空などで運用されています。また、トランプ氏もプライベート機として757を保有しており、「トランプ・フォース・ワン」とも呼ばれています。

一方で757シリーズは2005年に生産終了。この後継にもなり得るモデルとして、かつてボーイングでは「NMA」を呼ばれる新型機の開発を検討していました。

NMAは当時「大型の単通路機と、いちばん小さいワイドボディ機の中間にあたるモデル」とされ、座席数は220席から270席程度と、まさに757の後継といえるキャパシティをもつものでしたが、最終的に2020年には、開発が白紙に戻っています。

その後ボーイングでは、単通路機の生産を「737」に集中させ、2017年デビューの最新派生型「737MAX」が、このカテゴリの主力商品となっています。

737は757より一回り小さい100~150席クラスの旅客機ですが、1968年のデビューから派生型を出し続けており、近年では200席以上を搭載できる、737MAXシリーズの派生型「737-10」も出現しています。

トランプ元大統領はずんぐりむっくりとした胴体形状を持つ737と比較して、757を「速く、美しく、洗練された『カマキリ』のような飛行機で、パイロットからの評価も高い」と絶賛したうえ、「737の大型派生型をつくるなら、757をアップデートすべきだった」とコメントしています。

ユナイテッド航空のボーイング757(松 稔生撮影)。