菅田将暉主演の同名ドラマを映画化した『ミステリと言う勿れ』が大ヒット公開中だ。田村由美による原作コミックの中でも人気エピソードである通称“広島編”を映画化した本作は、天然パーマでおしゃべりな大学生・久能整（菅田）が、美術展のために広島を訪れたところ、遺産争いで死者さえ出るといういわく付きの名家・狩集家の遺産相続事件に巻き込まれるというストーリー。豪華キャストが集結し、狩集家お付きの弁護士の孫で、狩集汐路（原菜乃華）の初恋の人・車坂朝晴（くるまざかあさはる）を松下洸平、メガネをかけたインテリな臨床検査技師の狩集理紀之助（かりあつまりりきのすけ）を町田啓太が演じた。今回クランクイン！は松下と町田にインタビュー。実は意外な共通点があったことや、「話しやすい空気」が生まれていたという撮影裏のエピソードなどを聞いた。
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■意外な共通点が発覚
――今回、松下さんと町田さんのツーショットでの取材は、ここだけだということなので、いろいろお話をお聞かせいただけたらと思います。お二人が会ったのは、この作品が初めてですか？
松下：この作品が初めてです。実は僕が音楽で初めてデビューした時に、LDHさんのダンススクールに通っていたことがあって、その話を最初にしました。
町田：すごく覚えています。びっくりして「うそでしょう？」って。松下さんの方が先輩なので、同じ時期ではなかったですが、僕も同じダンススクールに通っていました。
松下：時期的にすれ違うことはなかったんですよね。
町田：でも、初対面で話のきっかけをいただいて、めちゃめちゃうれしかったです。
松下：町田くんは、おおらかで優しい雰囲気で、すべてを受け止めてくれるような存在なので、僕もそこに甘えて、いろんな話をしました。撮影の後半はキャストの皆さん全員と仲良くなれたので、たくさんいろんな話をしました。
――松下さんが本名の松下洸平という名前でお芝居を始められたのも、町田さんがオーディションに受かって舞台に立たれたのも2010年ごろという共通点があるようで、同じ時期に俳優活動を始められた存在として、お互いのことをどのように意識されていましたか？
町田：僕は、いつか共演させていただく機会があればと思っていて、今回、ようやくそれがかなって、めちゃめちゃうれしいです。松下さんは、お芝居はもちろんのこと、音楽もダンスもできて、そんな風にいろんな才能がある方ってどういう感じなんだろうと気になっていました。実際に会ったらすごく優しくて、菅田くんもそうなんですが、楽しいことが大好きで、撮影現場でも、どんどん率先して会話してくださり、魅力の尽きない方ですね。この映画でも、もっともっと同じシーンがあったらとも思いました。
松下：僕は、ポテンシャルが違いすぎると思っていました。もちろん町田くんのことは知っていたし、作品も拝見していましたし、めっちゃくちゃかっこいい人だなと思っていたんですけど、実際にお会いして、すごく真っすぐで、一本筋の通った人だと感じました。僕が覚えているのは、町田くんがダンスもやっていたという共通点があったので、「歌にはいかなかったの？」って聞いたら、町田くんが「歌はからっきしで…」って返してきたんです。今、「からっきしで」という言葉をこんな風にかっこよく使う人っている？って思いました（笑）。
町田：そんな風に膝に手をついて言ってはないですよ！（笑） 松下さんは、僕らの間にダンスという共通点があったので、さらに共通点を見出してくれようとしてたんですよね。歌という共通点もあったら、さらに楽しいんじゃないかと共通点を見出そうとしてくださったのに、歌はやっていなかったので、少し申し訳ない感じがして、改まって返事をしようとしたら「歌はからっきしで」っていう言い方になったんですよね（笑）。
松下：「これが町田啓太だー」と思って。現代において、「からっきし」って言葉をこんな風にナチュラルに使える人って町田啓太だけだなと思って。めっちゃかっこいいと思いました。
町田：もっと時代劇をやったほうがいいですかねぇ（笑）。
松下：あはは！（笑） 僕の中でのインパクトがすごすぎて、帰りの車の中でマネージャーさんにも言いましたからね。いやでも、そこで一気に、町田くんはどんな人なんだろう？って興味も湧いたんです。
――実際に一緒にお芝居をしてみて、お互いに何か感じるところはありましたか？
■松下「ひらめきと気付きをくれたのが町田くん」
町田：めちゃめちゃありました。映画の性質上、あまり内容を話せないのがもどかしいんですが、本当にお芝居が素晴らしいと思って、撮影が終わった後に、松下さんに直接伝えたこともありました。それに、ほかの皆さんもすごくエネルギーのある俳優さんばかりで、「すごいね」なんて話していたときに、松下さんが、失敗したり、自信がないときもあるっていう話もされていて、そこもすごいなと思ったんです。だって、こんなに評価されているのに、その上、まだ向上心を持って、「自分はまだまだだ」っていう気持ちを持っているというのが本当に素晴らしくて、見習うことしかなかったです。
松下：この作品は難しい設定も多いので、ご覧になる方に、どうしたらより見入っていただけるのかということを、キャストの皆さんといろいろ話し合ったんです。セリフに関しても、「これは原作通りの感じで言ったほうがいいんじゃないか」となって、全員でもう一度、原作漫画を読み直すという機会もありました。そうやって、皆さんで試行錯誤しながら方向性を見つけていく作業をする中で、町田くんは、自分自身が疑問に思っていることや、こっちのほうがいいんじゃないかっていうことを率先して言ってくれたんです。そのことで救われた場面がいくつかありました。僕たちも、分からないことがあったり、しっくりこないことがあれば言っていいんだと、町田くんの姿勢を見て思えるようになりました。僕が全然気付かないことを、ぼそっと「これってこうじゃないですか？」って言ってくださるんですよ。ぜんっぜん気付いていなかった…と思うことが2回くらいあって。ひらめきと気付きをくれたのが町田くんだったんです。
町田：菅田くんや松下さんが、話しやすい空気を作ってくださったからだと思います。それがありがたくて。今回の現場は、特にコミュニケーションがとりやすい環境で、いろいろと助かりました。
松下：この作品は特にみんなの共通認識がそろっていて、みんなが分かった状態でスタートしないと気持ち悪くなって、前に進んでいけないものでした。だからこそ、菅田くんが先頭に立って、キャストだけでなく、監督も交えての話し合いが必要で、「これだったら、見てくださる人にも伝えられる」というところまで持っていってから撮影がスタートしました。
――そんな話し合いなども経て出来上がった映画をどのようにご覧になりましたか？
松下：このシーンの撮影では、こんな話をしていたなということを懐かしく思い出しました。喫茶店のシーンでは、こんな話してたなとか。
町田：僕も「あのときの差し入れ、こんなだったなあ」なんて思い出すこともありましたね。ストーリー的には、謎のある作品なので、登場人物同士がギスギスしている部分もあるんですが、本当に雰囲気の良い現場だったので、そういう空気感を楽しめる映画にもなっているんじゃないかなと思います。登場人物たちが、果たしてどうなっていくんだろうということが、主人公の整くんによって解きほぐされていき、まとまっていく感じがあって、そういうところが好きだなと思えました。
――今回、謎な部分があるからこそ、緊張感が生まれるシーンもあったと思います。そういうシーンの撮影でお二人は、直前まで普段通りでいて、パッと役に切り替えられるほうですか？
松下：どっち派ですか？
町田：「自分、不器用なんで…」とは言わないですが（笑）、僕はアイドリングがちょっとだけ必要なタイプですね。
松下：僕もそうです。本番の3秒前までゲラゲラ笑っていたり、くだらない話をしているのに、始まったらパッと切り替えられる人がたまにいらっしゃいます。そういう人には憧れるけれど、僕にはできないなと思います。
町田：でも今回の撮影では、だいたい皆さん、そういうのを察してくれていましたね。おしゃべりが好きな方もいらっしゃいますが、今回は、それぞれがそれぞれのことを気にかけていた感じがありました。だからこそ温かい空気感の現場だったんだとも思います。誰かが集中するシーンだなと思ったときは、皆さん察していました。
――松下さんは、ヒロインの原菜乃華さん演じる狩集汐路の初恋の人という役柄で、町田さんの場合は、遺産相続者の4人の中では一番感情が見えない役柄でした。ミステリーということで、お二人とも、どこかに何か秘めた部分を出さないといけない面もある役だと思うのですが、そのあたりはどう考えて演じられていましたか？
松下：普通でいようと思いました。やりすぎると逆に怪しいし、かといって、ものすごく無機質でも見ている人の目線がいかないと思って、そのちょうど間をとることを意識しました。ごく普通の人に見えるけれど、ミステリー作品なので、「この人にもいろいろあるだろうな」と思っていただけたらいいなと思いながら演じました。
町田：僕も、内に秘めているものがある役に見えたらいいなと思いました。それが、ポジティブなのか、マイナスな要素なのかを楽しんでもらえるようにしたいなと思って、監督の松山（博昭）さんとも話し合いました。
松下：町田くんのメガネがキラーンってなるシーンもあったよね（笑）。
町田：出来上がった映画を見たときに、あんなにメガネがキラーンってなってるのか！と驚きました。あそこは、松山さんの肝いりのカットだったんだと思います（笑）。
（取材・文：西森路代 写真：小川遼）
映画『ミステリと言う勿れ』は現在大ヒット公開中。
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