小林千晃×村瀬歩

 声優の小林千晃村瀬歩が、TOKYO MXMBSBS11にて放送のTVアニメ『ラグナクリムゾン』(9月30日よりスタート)に参加。小林は狩竜人の少年・ラグナ、村瀬は性別と容姿を意のままに変えられる元竜王のクリムゾンを演じる。同作は小林大樹氏による月刊「ガンガンJOKER」で連載中の異世界極限バトル作品。竜が人々を脅かす世界で銀剣を振るい、竜を狩り、報酬をもらう職業「狩竜人」のラグナが、討伐数を誇る天才少女・レオニカ(CV: 水瀬いのり)と竜討伐に挑んでいた。ある日、未来の自分と出会い、行末を知ったラグナが、謎多き新たなる相棒・クリムゾンと共に、絶望の未来を回避するために奮闘していくストーリー。インタビューでは、W主演となった2人にオーディションの裏話から、本作のアフレコを通してどのようなことを感じたのか、話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

ずっと試され続けていたオーディション

(c)小林大樹/SQUARE ENIX・「ラグナクリムゾン」製作委員会

――本作の魅力はどこにあると思いますか。

小林千晃 常識にとらわれない、「そうくるか!」というシーンもあり、シンプルに胸を鷲掴みにされるシーンも多い作品です。原作の中に『ラグナクリムゾン』とタイトルがページ見開きで出てくる印象的な表現があるのですが、アニメでそういったシーンがどう演出されているかも楽しみにしていてほしいです。ストーリーも読者をいい意味で裏切るようなところがありつつ、正面からストレートで殴られるような衝撃的な魅力が詰まっています。

村瀬歩 情報量がすごく多い作品です。原作を読んでいると、先生の絵とストーリーの構築でわかりやすくなっているのですが、それをアニメーションで声を吹き込んで視聴者の人に「面白そう」と思ってもらうにはどうするべきか、声優として難しさと同時にやりがいを感じていました。原作を知っている人はニヤッとできるところもありますし、迫力のあるカットでかっこいい作品になっています。そして、耳で聞いていても飽きさせない作りになっているのが魅力だと思います。

――ストーリーの面白さもありながら、迫力がありますよね。村瀬さん、原作をご自分で購入もされて。『ラグナクリムゾン』への意気込みが伝わってきます。

村瀬歩 この作品に落ちたら後がないみたいな状態にまで気持ちがいってしまいましたが、クリムゾンに受かって良かったです。

――オーディション、それぞれどのような気持ちで臨んでいたのでしょうか。

小林千晃 今回1次審査はテープ審査だったので事務所で録ったのですが、その時に「2パターン録ってください」とリクエストがありました。普通オーディションはセリフが用意されていて、それを各々の役者が思うように演じるというのが一般的なのですが、原作にとらわれずに自分ならこうする、みたいなところで自由にやってみてほしいと。試されているようで、すごくやり応えがあったオーディションでした。

 その後、スタジオオーディションに呼んでいただいてラグナをやったのですが、当日原稿があって、2次審査でもずっと試され続けていて。1次審査の時のセリフ量が4つか5つぐらいしかなかったから、これだけではちょっと判断できないと、音響監督の郷(文裕貴)さんから追加で10個くらいセリフをいただいて。

――それはビックリしますよね。

小林千晃 不意打ちで出すことによって対応力もそうですし、ラグナが追い込まれた時に何が出るのか見たかったんだろうなと思います。それがすごく印象的というか、他にはない方法でのオーディションだったので非常に楽しかったです。

村瀬歩 千晃くんはテープ審査からのスタジオ審査だったとのことですが、僕はテープの時点で決まりました。スタジオ審査はなくてクリムゾン役が決まった状態でラグナを誰にするのか、という感じだったのではないかと思います。

――クリムゾンは村瀬さん、というのは満場一致だったとのこと。この役への意気込みも相当すごかったとお聞きしています。

村瀬歩 絶対にやりたいと感じる役が稀にあります。もちろん役をいただいたら熱量は常に変えずにどの作品にも取り組みます。セリフが一言しかない役とか少ししか登場しないとなっても、原作を全て読みますし、台本への書き込みや向き合うことは全て平等にしようと思っていて。その中で『ラグナクリムゾン』は、すごく好きな作品でやりがいがあるキャラでした。クリムゾンは性別や年齢も自由に変えられるし、悪い感じがするキャラなので絶対にやりたいと思って。

 オーディションでのクリムゾンのセリフは 4 つぐらい。長いセリフが多かったのですが、絶対受かりたかったので、全てセリフを暗記して録音しました。それは熱量を込めることが大事だなと思いました。スタジオではなくテープ審査ということもあり、自分で作り上げていかないとその熱量は伝わらないと思いました。

――本番も暗記されてやる時もあるのでしょうか。

小林千晃 タイミングが遅れてしまうと相手のセリフを食ってしまうので、絶対に遅れるわけにはいかないので、全部は覚えてはいないけど、7 割ぐらいは覚えていると思います。

村瀬歩 練習をしていくうちに口が馴染んできて、何となくセリフが自然と出てきます。舞台俳優さんとご一緒したりすると全て暗記している人もいました。自分の体がある程度動かないとできないという人もいたり、人それぞれですね。僕は声優から始めたので、普通に台本をペラペラやりながらですけど。

――ラグナのアクションシーンは、声のバリエーションもたくさんつくられたとお聞きしました。

小林千晃 そうなんです。むしろ監督からリクエストされたのはそれぐらいでした。とにかく叫ぶシーンが多いので、同じ叫び方だと聞いている側が飽きてしまう。演出的な面として飽きさせないようにというのがあって。同じアクションをしているわけではないので、叫びの種類やアクションシーンでの呼吸のパターンがたくさんほしいとのことでした。

――村瀬さんは監督からリクエストはあったのでしょうか。

村瀬歩 千晃くんのようなディレクションはなかったです。クリムゾンは自分から攻撃することは少なくて、もうスイッチを押してポンみたいな役なんです。暗躍して周りの人があたふたするのを楽しんでるといったキャラで、狼狽したりかっこ悪いことをすごく嫌います。たまにそうなった時に「情けないな、こいつ」と思われるぐらいの表情が少し見えていたら面白いとは考えていました。

――細かいところは委ねられていたわけですね。

村瀬歩 僕と千晃くんは原作をしっかり読んでいるというのも監督やスタッフさん、先生もみんな理解されているから、キャラをちゃんと預けていただけて。役に対してこの人キャラはこう考えている、こういう心の揺れ動きがあるというのを自分なりに考えてやっていて。

小林千晃 否定的なことは全く言われたことはなくて、あるとしたら大まかには合っているけど、もうちょっとここはこうしてほしいとか、グラデーションで言われる感じでした。アフレコの時点で絵は完成していないので、アニメーションになったらこうしたい、ここにはこんな音が入るとか、完成を見越してアフレコしていくことも多いです。

――想像力をすごく問われますね。

村瀬歩 場数を踏んできた成果が試されると思います。

――新人のときでは難しいと感じることも?

村瀬歩 僕は無理でした。でも、千晃くんはチート級で喋りがすごくうまいから、新人のときでも一般的には無理だと思うことも出来たんじゃないかなと思います。

小林千晃 いやいやいや(笑)。それこそ村瀬さんは卓越した技術があって、新人の頃からきっとすでに頭角を表していた方だと思っているので、昔はできなかったというのは信じられないです。

村瀬歩 僕は毎回居残りみたいな感じで(笑)。

小林千晃 器用なタイプに見えますけど。

村瀬歩 結果的にはそうかもしれないけど、技術をコツコツ磨いてきただけです。僕の中で千晃くんはちょっと別格だけど、最近の声優さんもうまくてビックリします。

小林と村瀬の最初の出会い

――本作のアフレコを通して、気づきや発見、感動したところなどはありましたか。

村瀬歩 過去に2回だけ“この言葉が喋れる”みたいな感覚になった役がありました。本作もその時と同じ感覚です。僕はどちらかというと俯瞰でコントロールするタイプなので、好きという気持ちとやりやすいキャラというのは、なかなか合致することがないので、今回のような感覚になれるのはすごく珍しいことです。

 当時は未熟だったのでとにかくそのキャラに近づきたくて、なんとか引っ張り出せたみたいな感じで、意識的にその喋り方に向かえたわけではなかったんです。でも、原作を読んで行末もわかっている状態で、クリムゾンの“この言葉が喋れる”という気持ちに向かってきちんと準備して、パーンとその言葉が喋れた瞬間が自分にもわかると、この為に頑張ることってすごくいいなという気づきがありました。

――小林さんはどんなことが印象としてありますか。

小林千晃 それで言うと僕はこの作品で村瀬さんと会えたことがめちゃくちゃ...。

村瀬歩 え〜やだー!

小林千晃 別作品の現場でお会いしたことはありましたが、今回のように一緒に収録というのは今までなかったんです。

――念願だった?

小林千 僕、村瀬さんに最初に会ったときのことをよく覚えています。とあるスタジオオーディションの時にお会いしたのが最初でした。僕はその時まだ歴3年目くらいで、オーディション直前でトイレに行きたくなったのですが、初めてのスタジオでトイレの場所が分からなくて...。そのとき隣にたまたま座っていたのが村瀬さんでした。僕は一方的に村瀬さんのことを知っていたので、ご挨拶もまだしていないなかで、トイレの場所を尋ねたときの振る舞いがめちゃくちゃ優しくて。

村瀬歩 覚えていない...。

小林千晃 それは村瀬さんが僕のことを認識していなかったので、覚えていなくて当然だと思います。そのファーストインプレッションもあって僕がお会いしたいと思っていた方なので、ラグナ役に受かった以上にクリムゾン役が村瀬さんだと聞いて、一緒にお芝居をできることがすごく嬉しくて。

村瀬歩 そのエピソード聞いてびっくりした。

小林千晃 なかなか話すタイミングがなくて(笑)。

――お二人にとってすごく記憶に残る作品になりそうですね。最後にこの作品を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

村瀬歩 『ラグナクリムゾン』は楽しい作品を目指して、声優陣もスタッフさんたちも愛を持って作っていて、ニヤッとするような絵作りになっています。原作を読んだことがない方も楽しめるようになっています。そして原作を読まれた方にとっては、絵が動いてそこに声や音が乗ることで新しい感情が生まれて、また原作を読み返したくなるような作品になっているので、ぜひ観ていただけたら嬉しいです。

小林千晃 『ラグナクリムゾン』というタイトル通り、ラグナクリムゾンのW主人公なのですが、この2人が主人公? かと思うぐらいすごく特殊なキャラクター造形で、これまでになかったような作品になっています。いろいろなアニメや漫画を見てきたよという方にとっても、まだ出会ったことのないタイプの作品だと思います。1話を見ていただければ、この作品の面白さはきっと伝わると思っています。原作がすごいクオリティなのですが、アニメーションになった時にどういった演出になるのか、原作の持つ熱量をどう表現しているのか楽しんでいただきたいです。

(おわり)

番組情報

ラグナクリムゾン」2023年9月30日放送開始

TOKYO MX , BS119月30日(土)25:00~ ※初回1時間SP
MBS9月30日(土)26:38~ ※初回1時間SP
公式サイト:https://ragna-crimson.com/