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 古くからのパブ文化を持つイギリスでは、猫が住んでいるパブが多く存在する。店内を自由気ままに動き回り、気が向くと膝に乗ってくれたり、あなたの話に耳を傾け、慰めてくれたりなんかする。

 猫好き、お酒好きなら最高のシチュエーションじゃないか。

 なかでも、ブリストルにあるパブ「The Bag of Nails」は、猫店員の数がすごい。

 オープンして12年になるというこのパブには、開店以来常に10匹以上の猫が住んでいて、まるで猫カフェのように猫に囲まれながら美味しいビールを味わえるのだという。

【画像】 猫がたくさんいるパブ「The Bag of Nails」

BRISTOL'S CAT PUB

 ピーク時以外に訪れると、人間の客の数よりも猫の数の方が多くなるというブリストルのパブ「The Bag of Nails」は、地元では有名な“猫パブ”だ。

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 12年前の2011年12月、ルーク・ダニエルズさん(52歳)がこのパブを引き継いだとき、猫がたくさんいるパブという設定は彼の計画にはなかった。

 だが、ここには常に10匹以上の猫たちが住んでいる。

パブを経営し始めて最初の週に、ほんとに偶然だったのですが、マルコムという猫を世話したんです。

マルコムは、友人の飼い猫で、アパートで飼うことができないというので、私がパブで少しの間世話をするつもりで引き取りました。

結局、マルコムはパブに住むことになり、以来14匹~15匹の猫たちがここにいます。

過去には24匹住んでいたこともありましたが、さすがに多すぎて、何匹かは猫好きな人が引き取ってくれました。

 The Bag of Nailsに住むようになったマルコムは、以来パブの看板猫的存在になった。

 2011年のグランドオープン時には、多くの客が店で出迎えてくれたマルコムに心を奪われたようだ。

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 その後、ダニエルズさんは、ベレスフォードと名付けた別の猫を飼い始めた。

 2匹はすぐに意気投合し、それからはどんどん猫の数が増え、The Bag of Nailsがブリストル独自の“猫パブ”として、世界のメディアやSNSで注目を集めるようになるまで、時間はかからなかった。

今はマルコムの息子ジョージが看板猫に

 シャビーチックなインテリアスタイルのパブには、ダニエルズさんの好きな音楽が流れていて、大好きな猫がいる。猫はダニエルズさんの家族なのだ。

私は猫の自由気ままで自分をしっかり持っているところに特に惹かれます。彼らは自分のやりたいことをやっているだけです。

よく「犬には飼い主がいて、猫には下僕がいる」と言いますけど、まさにその通りだと思います(笑)

 ダニエルズさんによると、初代パブの看板猫だったマルコムは、しばらくしてパブを去ったが、今はマルコムの息子ジョージが看板猫を務めているという。

猫たちはパブの上の階に住んでいますが、ビールが保管されているセラー(地下室)には立入禁止となっています。

 The Bag of Nailsは猫がいるパブとして知られるようになってからは、猫目当ててやってくる人もいるが、お酒だけを楽しみに訪れる常連客もいる。

 このパブには多くの猫がいることを皆知っているので、猫が好きじゃない人や猫アレルギーの人は来ないという選択肢もある。

パブの方針に従ってくれる顧客だけを歓迎

 猫たちは顧客の邪魔にならないように、店内で静かに寛いでいることが多いが、この地域では外を出歩くことが許されている環境なので、出たいときには出してあげるそうだ。

 猫たちが、ストレスをためないようにパブで過ごしてもらうには配慮が必要だという。

 ダニエルズさんは『パブの方針に従わない場合は、店から出てください』と言うことに、何の抵抗もないという。

すべての人を満足させることは、できません。私たちは、決して万人向けのパブではありません。実際にオープンした当初は多くの人を断りました。

パブの雰囲気に合わせてくれようとしないで、独自の雰囲気を作り出そうとしている大人数のグループはお断りしています。

学生から年配のお酒好きな方まで、素晴らしい常連客が来店してくださることは幸運です。それが、私がパブ経営で最も気に入っている点であり、それを台無しにしたくないのです。

 ダニエルズさんのパブが人気があるのは、美味しいお酒を楽しもうとするあらゆる客層の人たちが、店の雰囲気を尊重しているからこそだろう。

猫に悪影響があるとRSPCAが懸念、ダニエルズさんは反論

 しかし、RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)はこの環境を懸念しているようだ。

 The Bag of Nailsのことを知ったRSPCA(英国王立動物虐待防止協会)は、猫の福祉に悪影響を与える可能性について、The Bag of Nailsに苦言を呈している。

猫の中には見知らぬ人に触られるのを嫌がる猫もいるかもしれないし、一般的にはたくさんの猫を一か所に集めて飼うことはお勧めしません。また、アルコールは猫にとっては有害となります

 これに対して、ダニエルズさんはこのように反論している。

猫たちは自由に出入りできるので、バーが気に入らない場合は来る必要はありません。

そして「アルコールは猫にとって毒」ということですが、猫はお酒を飲みませんし飲ませません。

それに、ウチは酔っ払いがフラフラしているような、そんなパブじゃありません。ここにいる猫たちは、みんな健康でストレスを感じてなどいません。

 ダニエルズさんがこう主張するのは、猫たちのことを愛し、全員ちゃんとお世話をしているからだろう。

猫パブではなく、猫が上に住んでいるパブ

 メディアやSNSで伝えられるようになり、The Bag of Nailsが「猫パブ」と呼ばれて久しいが、実はダニエルズさんはそう呼ばれることは好きではないそうだ。

The Bag of Nailsは猫パブではなく、たまたま猫がいるパブにすぎません。

自分のパブが、世界中に数多く誕生している猫カフェと同じカテゴリーに分類されることは好きじゃないんです。

うちはたまたまパブの上の階にたくさんの猫が住んでいて、気が向いたらバーに降りてくるだけなんです。

その猫たちを、猫好きな自分が世話しているだけだし、顧客たちもそれを受け入れ、楽しんでいるのです。

私たちの常連さんたちは、私たちが作っているさまざまなエールやラガーを気に入ってくれています。

客層は非常に多様です。そして、明白な理由から犬の持ち込みを禁止することを除いて、私たちには多くのルールはありません。

誰でも楽しめるパブではありませんがそれは問題ありません。気に入ってくれた人が来てくれればいいのです。

References:Guy Looking To Start A Business Accidentally Creates City's First Cat Pub/ written by Scarlet / edited by parumo

 
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イギリスにはたくさんの猫たちに囲まれながら美味しいビールが味わえるパブがある