長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『私のバカせまい史』(毎週木曜夜9:00-、フジテレビ)をチョイス

知らないゲームを眺める楽しさ「いいすぽ!」/テレビお久しぶり#68

■“ライブハウスに残された内田有紀のサイン”は、ちょうどいい謎「私のバカせまい史」

日本各地のライブハウスの壁に内田有紀のサインが残されている。しかし、内田有紀本人は書いたことを否定……というのがまず抜群に面白い話、界隈ではそれなりに知られた話であったそうだが、私も知っていたかったと悔しくなる。たとえば『水曜日のダウンタウン』でその謎が解明された(?)K.カズミの件だって私は知らなかったし、元から知っていれば面白さもまた段違いであった筈。魅力的な謎というのは巷にあふれていて、それらは解き明かされるときにしか私の前に姿を現さないのだ。

誰も調べたことのない狭い歴史を研究・考察する番組『日本のバカせまい史』(6/8放送回)にてスピードワゴン・小沢一敬によって発表された、この内田有紀のサインについての謎。なんと2001年から存在し、現在は分かっているだけで13ヵ所のライブハウスで確認されている。筆跡鑑定士によるとこれらを書いたのは同一人物である可能性が高く、エアコンに面して左詰めで書かれていたために右利きであると考えられる。サインの下に日付が書かれていたことから捜査は順調に進み、ある2組のバンドが容疑者として浮上するのだが……。

3週間放送を休止してしまう代わりに”バカせま名作セレクション”としてTVerで再配信されたこの回、まさに名作に違いない面白さ。謎・捜査・解明と、あっという間の23分、きっちり犯人が判明するというのが素晴らしいし、容疑者である2組のバンドがどちらも大御所なんで、「へえ~そうなんですね」といった感じにもならないというか、犯人として不足がないのだ。ミステリー好きには是非見てほしい、心の踊る、ロマンあふれる回である。

それにしても、こういうのを見ると、「俺がやればよかった」とばかり思う。ひとつの謎をチームで追うというのは端的に楽しそうだ。自分の周りにも何か、謎はないだろうか、謎は……。と考えてみても、この世はあまりに謎だらけで、内田有紀のサインのような”ちょうどいい謎”がどうも思い当たらない……いや、ひとつあった。この間、中野のベンチに、『なまいきシャルロット』のDVDケースが置かれているのを見つけた。なんでこんなところに……と手に取って開けてみると、ケースの内側にはある政党を糾弾する内容が油性ペンで書き殴られており、『テレビよりおもしろいよ』と書かれたDVD-Rが収められていた。怖すぎてヒエッと放置したまま帰ったが、あのDVD-Rには何が入っていたのだろう……って別に、ちょうどいい謎ではないですね……

「テレビお久しぶり」/(C)犬のかがやき