2021 年11月、アガサ・クリスティー賞を受賞して刊行された逢坂冬馬のデビュー作『同志少女よ、敵を撃て』は、翌年の本屋大賞を受賞し、累計50万部を突破するベストセラーになりました。その逢坂による待望の第2長篇『歌われなかった海賊へ』を、いよいよ10月18日に刊行します!

『歌われなかった海賊へ』書影(装画:雪下まゆ)

同志少女よ、敵を撃て』では狙撃手となった少女たちの目線から独ソ戦を描いた著者が、新作『歌われなかった海賊へ』ではナチスの支配するドイツで生き、体制に反抗した少年少女を描きます。装画を手がけるのは、前作と同じく雪下まゆさん。登場キャラクターの4人を描いています。

監修は『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』(岩波書店)の共著者としても話題の、甲南大学文学部教授・田野大輔さんが担当しています。

デビュー作から一貫して“語られなかった歴史”に光を当てる逢坂冬馬の次なる代表作。ぜひご期待ください!

前作『同志少女よ、敵を撃て』書影(装画:雪下まゆ)
  • あらすじ

「隣の町に、ナチスの強制収容所があると知ったら、あなたはどうしますか?」

ナチ・ドイツの抑圧に反抗した少年少女の物語。

1944年ヒトラーによるナチ体制下のドイツ。密告により父を処刑され、居場所をなくしていた少年ヴェルナーは、エーデルヴァイス海賊団を名乗るエルフリーデとレオンハルトに出会う。彼らは、愛国心を煽り自由を奪う体制に反抗し、ヒトラー・ユーゲントにたびたび戦いを挑んでいた少年少女だった。ヴェルナーらはやがて、市内に敷設されたレールに不審を抱き、線路を辿る。その果てで「究極の悪」を目撃した彼らのとった行動とは。
差別や分断が渦巻く世界での生き方を問う、歴史青春小説。

エーデルヴァイス海賊団とは】

第二次大戦時、ナチ体制下唯一の青少年組織であるヒトラー・ユーゲントに反抗して、全国で自然発生的に生まれた少年少女たちのグループ。反戦ビラを作成したり、ヒトラー・ユーゲントに喧嘩を仕掛けたり、違法な外国のラジオを聴くなどの活動を展開した。

  • 刊行によせて著者のことば

邪悪な世界の「不良」たち

 ナチ党の独裁体制に対して、ドイツ市民たちはグラデーション的な濃淡を伴いその支配に対応していました。片方の極には完全な支持者たちがいて、もう片方の極には政治的抵抗者たちがいました。

 そしてどちらとも言いがたい、異色の「反抗者」たち、エーデルヴァイス海賊団がいました。ナチ体制に順応せず、ヒトラー・ユーゲントをぶん殴り、反体制的ビラを撒き、処刑に直結する取り締まりの対象とされながら、勝手に旅行に出かけ、自作の歌を歌ってどこか気ままに行動していた風変わりな少年少女たち。

 半分不良少年のような彼らは、政治的目標を掲げた「抵抗者」ではありませんでした。普通に、ただ若者がそうであるように、自由に楽しく生きたかったのです。

 ではなぜ、ただ勝手気ままに生きようとする若者をナチ・ドイツは目の敵にしたのでしょうか。なぜ、エーデルヴァイス海賊団は命の危険にさらされながら権力に順応することを拒んだのでしょうか。これらの疑問が、この小説の原点になりました。

 決して特別ではなかった若者たちが、圧倒的な「時代の空気」に押し流されず、与えられる「正しさ」に満足せず、自らの求める自由の元に生きようと試みたことは、それ自体が希望であるように私には思えるのです。

 そして、一方で、決して体制に逆らうことなく目の前の邪悪をやり過ごした、彼らと同じ「普通の人々」を思ったとき、私は自問するのです。

 果たして自分が当時のドイツ市民であったら、グラデーションの中のどこにいたのでしょうか。

  • 書誌情報

タイトル:歌われなかった海賊へ
著者名:逢坂冬馬(あいさか・とうま)
監修:田野大輔(甲南大学文学部教授/『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』共著者)
装画:雪下まゆ
定価:2,090円(税込)
判型:四六判並製
発売日:2023年10月18日
ISBN:9784152102751

書誌詳細ページ:https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015611/

  • 著者略歴

著者近影 (C)Hiroshi Hayakawa

1985年埼玉県生まれ。明治学院大学国際学部国際学科卒。2021年、『同志少女よ、敵を撃て』で第11回アガサ・クリスティー賞を受賞しデビュー。同作で2022 年本屋大賞、第9回高校生直木賞を受賞した。2023年に、ロシア文学者であり実姉の奈倉有里との対談本『文学キョ―ダイ!!︎』が刊行された。

配信元企業:株式会社 早川書房

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