今年開催されたFIFA女子ワールドカップ。その前に女子選手に膝前十字靭帯(ACL)断裂の怪我が相次いだが、BBCがあらためてその問題を取り上げた。

W杯前にはアーセナルオランダ女子代表FWフィフィアネ・ミーデマらがACLを断裂したが、先日にはレアル・マドリーで10番を背負うスコットランド女子代表キャロライン・ウィアやマンチェスター・ユナイテッドエマ・ワトソンも同じ重傷を負っている。

4月に同じ靭帯断裂を経験したジャマイカ女子代表シボーン・ウィルソンは「この2週間に3,4人がやった。偶然ではない。全ての女子選手が憂慮しているはず」と指摘。

膝の専門医であるネヴ・デイヴィス氏も「英国だけでなく世界中からデータが寄せられている。ACL損傷の蔓延が話題になっている。残念ながらACL損傷のツナミがやってきている」とそれを認めている。

シボーン・ウィルソン

「ようやく人々はこれが深刻だと認識を変えつつある。

チャレンジ(タックル)に乗っかって、右足で左に方向展開しようとした際、膝が出たり入ったりした。ポップな変な音がして、悪いことが起きたと思った。

歩けなくなって松葉杖をつくまでは実感がなかった。怪我をして、自分がわかっていることができなくなると、アイデンティティを少し失う感じになる」

ネヴ・デイヴィス

「キャリアのどの段階においても、これは破滅的な怪我。術後、患者は12か月は復帰させないようにしている。いい結果が出る可能性を最大限にしたいためだ。最終的にはメンタル面にも影響が及ぶ」

先日、引退を決めた元アーセナル女子のジョディ―・テイラーは、ACL損傷と月経周期との関連性について「月経周期は大きな要素だと思う。負荷と負荷のマネージメントプレーする試合数、全てがつながっている。もっと研究がされて、助けになることを願っている。なぜなら、これは問題だから。おそろしい」と話している。

また、女性の健康の専門家であり、スポーツサイエンティストでもあるエマ・ロス氏は、女子の試合への投資がもっと必要だと訴えた。

「今、ACLの怪我をめぐる不安が女子サッカーに影響を及ぼしている。

女子サッカーにもっと金とリソースを投じれば助けになる。パフォーマンスサポートチーム、ストレングス&コンディショニングコーチ、理学療法士たちの数が増えるので。

ビッグクラブに所属する女子チームであれば、男子チームと同じようなサービスを受けられると思われている。そうでないことも多い。

選手たちが壊れないようなインフラを整えなければ、女子サッカーがこのまま成長することは期待できない。

(英女子トップリーグのWSLが10月に開幕するが)2022年のEUROに出場した選手たちもいる。

その後、彼女たちは国内リーグを戦い、さらにW杯に出場した。そして、今また国内シーズンが始まる。

スケジュールとカレンダーを見直し、選手を守る必要がある。さもなければ、(怪我で)彼女たちを失うことになる」

チェルシー女子のエマ・ヘイズ監督はこうも指摘している。

メディカルチームには殺されるかもしれないけれど、最大の研究のひとつは重要なポイントだと思う。

怪我の分析について学ぶべき貴重な教訓は、代表からクラブ、クラブから代表への戦いの変更の10日以内に大部分が起きているということ。

トレーニングの負荷や移動スケジュール、リカバリーなどがチームによって異なるという単純な話ではない。自分たちがやっていること本当に顧みる必要がある。

だから、UEFAFIFAが検討する必要があると思う。

調査をしたいなら、全ての大ケガを遡って、生理的なもの、トレーニング、ピッチなどの大きな変化とどれほど早く重なったか(を調べること)。 これはあくまで私の意見。やるべきことがまだ多くある」

女子アスリートは男子に比べて接触がないACLの損傷が6倍も多いという研究結果がある。

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WSLではワールドカップを戦い終えたなでしこジャパンの選手たちもプレーするだけに気がかりだ。

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