冷戦以来の出来事。

年々増す中国潜水艦の脅威に対応

アメリカ海軍は、戦力増強を続ける中国人民解放海軍の潜水艦艦隊を監視するため、冷戦以降初の、水中スパイシステムの近代化を行っていることが、ロイター通信の取材で2023年9月21日に明らかになりました。

既にアメリカ海軍は2022年10月に、シアトル沖のウィッビー島にある海軍基地にある、監視システムの名称を戦域海中監視司令部と改めています。

同システムは、SOSUS(ソーサス)と呼ばれる水中固定聴音機や、艦艇に取り付けられた曳航ソナーなどを用いた、IUSSと呼ばれる海洋監視システムで、冷戦期には主にソ連海軍潜水艦の動きを監視していました。

冷戦終了後、海中からの大きな脅威がなくなったということで、1991年に機密情報から解除されると、クジラなど海洋生物の追跡や海水温の上昇を観測するなど、民間の研究目的で使用される機会が多くなっていました。

しかし、ここ数年中国が台湾周辺での軍事演習を強化するなど、同国に関しての脅威が増大化しており、アメリカ海軍はこのシステムを近代化し敵船舶を探知するために、敵艦の音を傍受する無人海上ドローンを配備することに加え、潜水艦監視のために海底に携帯型の「水中衛星」センサーを設置する計画のようです。

また、船舶の無線周波数を追跡して位置を特定する人工衛星や、人間の分析者が通常数カ月を要する海洋スパイデータをわずかな時間で分析する人工知能の開発も計画には含まれており、曳航式ソナーを曳航する海洋監視艦も特に中国近海を航行し監視を強化するようです。

アメリカは日本、インドオーストラリアとクアッドを形成し、インド太平洋における安全保障のため、4か国で連携していく姿勢を示しています。オーストラリア海軍は既に、その一環として、アメリカ海軍が利用する海中の監視システムを使用し、潜水艦監視能力を高めており、日本にも今回のアメリカ海軍の方針転換が大きく、影響する可能性もあります。

なお、中国に関しても、水中万里の長城と呼ばれる独自の水中スパイシステムを建設中です。

中国人民解放海軍の094型原子力潜水艦がSLBM発射用ミサイルハッチを開いた状態(画像:アメリカ海軍)。