2002年にテレビアニメが放送開始され、シリーズとしても高視聴率を記録するなど大ヒット作となった「機動戦士ガンダムSEED」。2004年には続編「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」が制作され、2024年にはシリーズ最新作となる『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』(1月26日公開)も控えているなど、その人気は衰えることがない。

【写真を見る】なりゆきで地球連合軍の秘密兵器、ストライクガンダムのパイロットになった主人公、キラ・ヤマト(『機動戦士ガンダムSEED スペシャルエディション 鳴動の宇宙』)

■オタク女子の心をつかんだ美麗なキャラクターデザイン

最初に申し添えておくと、「機動戦士ガンダムSEED」(以下、「SEED」)は筆者が初めて視聴したガンダムシリーズだった。筆者は放送当時高校生で、少女漫画や少年漫画、それらのアニメ化作品を好んで視聴していたが、そんな日々にある日舞い降りたのが「SEED」だった。

ガンダム」という作品はもちろん聞いたことがある。「殴ったね!」とか「坊やだからさ」といったセリフは現在でいうネットミームと同じように日常生活で耳にしていたし、アムロ・レイという主人公の名前も宿敵がシャア・アズナブルという名前だということも知っていた。

でも作品を実際に観たことはなかったし、90年代に放送されていた後続シリーズも目にしたことはなかった。どこか「自分に向けられた作品ではない」と感じていたし、シリーズを重ねた作品にはよくあることだがその重厚なストーリー構成も相まって新規参入が難しいなとも思っていた。だが、「SEED」はそういった障壁をいとも容易くぶち壊してしまった。

「画がめちゃくちゃ綺麗」だったのだ。

幼少の頃から少女漫画のキラキラした画面に親しんできたオタク女子にとって、平井久司によるデザインで華やかに描かれた「SEED」の絵柄はとても受け入れやすかったのだと思う。事実、同じクラスにいた同好の士(オタク)の間でも「『SEED』は良いぞ!」と高い評価を得ていた。

■個性的なキャラクターのなかから“推し”が見つかる!

具体的に「SEED」という作品の魅力を見つめ直してみると、ストーリーがよく練られていて、それをじっくりと一年かけて描いてもらうことでドラマにしっかりと没入できる点と、女性ファンを取り込む魅力的なキャラクターが多かったことが挙げられると思う。

のちに「ガンダムは『SEED』なら観たことある」というと、シリーズを長く追いかけているガンダムファンの方には「あぁ、『SEED』女子ね」と冷笑される経験を何度もしてきた。それだけ、「SEED」は女性のファンの参入のきっかけになったのだろう。

主人公のキラ・ヤマト(声:保志総一朗)と、その対となるアスラン・ザラ(声:石田彰)をはじめ、地球連合軍にも敵軍のザフトにも、魅力的なキャラクターが多く、絶対に“推し”が見つかる!といった風情だった。友人の間では“キラ派”と“アスラン派”に分かれたり(少数だがクルーゼ派も観測された)、お気に入りのカップルを作って妄想に勤しむ腐女子もいたりと、多くのキャラクターのなかからご贔屓を見つけて毎週応援していた。モビルスーツが飛び交うバトルシーンはよくわからなくても、人物同士の心情の揺れ動きや、命を懸けてもなにかを守りたいという思い――。そのドラマ性に深い魅力を感じ、没頭していた。

そのキャラクターたちの魅力をさらに何倍にも高めてくれたのが、キャラクターに声を吹き込む声優だった。メインキャラを演じる保志総一朗石田彰、さらに三石琴乃子安武人田中理恵関智一関俊彦…と、当時から現在まで続く声優界の人気を支えるキャスト陣が「SEED」の世界を彩った。

当時流行していたほかのアニメ作品やゲームにも数多く出演している声優がそろっており、声優一人一人の人気も大きかった。出演している声優をきっかけに、「SEED」に触れたという人も少なくなかったかもしれない。

■視聴者の記憶に深く刻まれた「SEED」を盛り上げた音楽たち

また、「SEED」の魅力を語るうえで忘れられないのが主題歌の存在だ。作品に登場する多くのキャラクターたちと共にモビルスーツのアクションやデザインの美しさを見せる、作品の象徴ともいえるオープニング。また、薄明りのなか、戦場にたたずむキャラクターたちを一枚絵で追う構成のエンディング。そのバックに流れる曲が、いずれも印象的だったのだ。

アニメ作品の主題歌は、「オープニングだけは覚えている」ということも多い。が、「SEED」に関していえばすべての曲を覚えているし、カラオケで歌うこともできる。それだけ作品に熱狂していたということでもあるが、いまでも当時の友人と集まってカラオケに行けば誰かが「SEED」の曲を歌うし、みんな当たり前に歌える。新作劇場版の告知時には、友人とのLINEグループが熱狂した。ちょっと特異なことだと思う。

ガンダムシリーズは多くの作品が制作され、新たなファンを獲得し続けている。「SEED」もまた、それまで「ガンダム」を知らなかった人を引きつけ、ファン層の拡大に大きく寄与した。現在、全国の劇場では、「機動戦士ガンダムSEED」と「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」それぞれの本編を三部作と四部作で再構成した「スペシャルエディション HDリマスター」が上映中。最新作である『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』への期待感も高めながら、きっと“あの頃”を思い出すきっかけになるはずだ。

文/藤堂真衣

「機動戦士ガンダムSEED」が大ヒットした理由とは?(『機動戦士ガンダムSEED DESTINY スペシャルエディション 自由の代償』)/[c] 創通・サンライズ