本記事は、マネックス証券株式会社が2023年9月27日に公開したレポートを転載したものです。

本記事のポイント

・日本株の下げは米国株への連れ安

・FRBのタカ派姿勢はデータ次第で変わりえる

・米国経済の減速を示す兆候は出始めている

日本株の下げは米国株への連れ安

日本株が下落している。しかし、前回記事(『リーマン・ショックから15年…「日本株買い」の絶好機となったこれだけの理由【ストラテジストが解説】』)で述べたとおり、日本株は、これ以上はないというくらい良好な投資環境にあり、下落の要因は偏に米国株への連れ安である。さらに言えば、米国金利の高止まり観測がすべての元凶である。

米連邦公開市場委員会(FOMC)がサプライズだった。米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派姿勢が米国金利の一段の上昇を招き、株価は大きく下落した。特にネガティブ視されたのが、ドットチャートが示した2024年の見通しだ。

2024年末のFF金利の予想は5.1%と前回6月時点から0.5%も引き上げられた。2023年末のFF金利の予想は、年内にあと1回の利上げを織り込んで5.6%だ。

そこから1年後が5.1%ということは、利下げの開始は早くて2024年後半から2回という示唆だ。つまり、あと1年近くは、FRBの引き締めスタンス=高金利が続くということになる。

FRBのタカ派姿勢はデータ次第で変わりえる

しかし、「見通し」はあくまで「見通し」に過ぎない。

毎回のことだが、パウエル議長もFOMC後の記者会見で、

These projections, of course, are not a Committee decision or plan

(これらの見通しは、もちろんFOMCの決定でも計画でもない)

つまりは今後のデータ次第だ、と述べた。

2024年末のFFレートの予想は5.1%と前回6月時点から0.5%も引き上げられたと前述したが、それはドットチャートの中央値の話だ。中央値は確かに5.1%だが、ドット・プロットの分布はかなりの幅がある。

つまり、2024年の利下げについてはコンセンサスが固まっていない。当たり前だが、状況次第でいくらでも変わり得るということである。

今後、米国経済の減速を示す指標が出てくれば、FRBのタカ派姿勢が緩和されるという期待につながり、株式市場にはポジティブだろう。まさにBad news is good news(悪いニュースはいいニュース)だ。

米国経済の減速を示す兆候は出始めている

さっそく、その兆候が出始めた。昨日発表された8月の新築住宅販売は67万5,000戸と市場予想の70万戸を下回り、前月比8.7%減少した。

米国の住宅市場は、中古住宅のほうが新築の10倍くらい大きいが、その中古住宅市場では販売が減少の一途を辿ってきた。住宅ローン金利が上昇・高止まるなかでは、買い替え需要など起こるわけがない。

中古住宅の市場が冷え込んで売買が行われないから、当然、売り物が出てこない。家を買いたい向きは新築に流れていた。グラフでわかるとおり、中古販売が減少するなか、新築のほうが増加していたのである。

これには建築業者の値引き販売の影響も大きい。しかし、住宅価格が上昇し、住宅ローン金利も7%を超えるなかで、どこまでも新築物件が伸びるわけがない。そろそろ頭打ちだろうと思う。

加えて、コンファレンスボードが発表した9月の消費者信頼感指数は103と、8月から5.7ポイント低下した。2ヵ月連続で悪化し、市場予想も下回った。先行きを示す期待指数が73.7と8月から大きく低下し、景気後退リスクを示唆する水準とされる80を下回った。

これで来月発表される雇用統計で失業率が高まっていれば、一気にリセッション懸念がぶり返すだろう。いまのところ、景気の悪いニュースに、株価が反応して金利が反応していないという、悪いディカップリングになっているが、もう少し米国景気の悪化を示すニュースが続けば、債券市場も猛然と反応してくるだろう。ここは堪えどころだ。

広木 隆

マネックス証券株式会社

チーフ・ストラテジスト 執行役員

(※写真はイメージです/PIXTA)