
特別な事情がない限り「税務調査」の対象になることはないサラリーマンですが、近年は税務調査によって「追徴課税」される人も増えていると、元国税職員・大倉佳子税理士はいいます。具体的にはどのようなケースで追徴課税されているのでしょうか。本記事では、サラリーマンが税務署の調査対象とならないために気を付けるべきポイントについて解説します。
サラリーマンへの「追徴課税」が増えているワケ
ふつうのサラリーマンは、毎月のお給料から源泉所得税・住民税を会社が差引いて預り金を納付しています。そのため、医療費控除や住宅ローン控除を受けるとか、相続といった特別ななにかがない限り、年末調整で完結しますので、税務調査の対象となることはありません。
しかし近ごろ、サラリーマンに税務調査が入り、追徴課税されるケースが増加していると感じます。
令和3年11月国税庁公表の「令和2事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」において直接「給与所得者(サラリーマン)の調査件数等」の記載はありません。
国税当局も効率的に調査等を行ううえで、各税務署単位から、広域運営による調査としています。また、ネット関係については情報技術専門官といった特化した専門官が情報収集し、調査に着手しています。
サラリーマンが確定申告しなければならない条件としては、さまざまな状況等によって違いはありますが、簡単にいうと年末調整した給与以外に1月1日から12月31日までに20万円を超える所得(収入から経費を引いた金額)があった場合です。
サラリーマンの方のなかには、会社で働くかたわら副業で収入を得ている方も多いのではないでしょうか。
サラリーマンは、会社からの給与が主たる収入(給与所得)とされますので、それ以外の収入は雑所得として国税側は評価します。
サラリーマンの方で税務署からの調査連絡や調査に関するお尋ね文書が届いた場合においては、税務署がすでに金額等把握していると考えて間違いないでしょう。
税務署目線での調査対象者 ・無申告である ・副業を赤字にして(事業として申告)給与所得と相殺している
給与以外の収入(副業)とは? ・アフィリエイト ・ブログ広告収入 ・フードデリバリー ・不動産収入 ・株・FX取引 ・金取引 ・ストックオプション・RSU など
副業収入、なぜバレる?
「会社にも秘密にしている副業だから、税務署もしらないだろう」はないということです。
なぜならば、
・副業収入の支払先から税務署に提出された(毎年1月31日までに提出)支払調書によって金額が把握される
※株やFX取引先からも取引明細が提出されています
・仮想通貨取引専門に情報収集している専門官の存在により取引が把握される
・ネットビジネス専門に情報収集している専門官の存在により取引が把握される
・給与収入に対して不釣り合いな家や車の購入によって把握される
・カード決済電子取引情報が収集された蓄積情報によって把握される
国税当局において、ネット取引(電子取引課税の重点項目化)や海外投資(国際課税の強化)といって重点課税として取り組んでいます。
現社会においては、電子決済が主であり、どこかに必ず足跡が残ります。
取引という認識が薄い「ストックオプション」と「RSU」の無申告
そもそもストックオプションやRSUも会社からもらうインセンティブの一種です。会社からもらうからこそ会社で精算されていると思いがちですが、権利行使や譲渡といった行為をした場合、自身で申告することになります。
コロナウイルスの影響で数年来税務調査が減少していましたが、5類認定とともに税務調査件数もコロナ前に戻っています。
「何年も副業しているけれどなにも言われないから大丈夫」と考えている方、大丈夫ではありません。税務調査は、5年遡って調査が行われます。隠ぺい等の行為が認められた場合は7年遡って調査が行われます。
調査によって、納付すべきだった所得税、過少申告加算税(もしくは無申告加算税)、延滞税が課税されますし、住民税も変更決定されます。
日本の税制は、自主申告ですので、ご自身の収入等きちんと把握して、納めるべきものは納めるが1番の節税です。
大倉 佳子
大倉佳子税理士事務所
代表、税理士

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