神奈川静岡県境地域の自治体で両県をまたぐ「伊豆湘南道路」の実現へ向けた動きが活発化しています。もしこれが実現すると、「第三の東名」ともいえる海沿いルートの完成が見えてきます。

自治体が「第三の東名」という「伊豆湘南道路」とは

神奈川静岡県境地域の自治体で、「伊豆湘南道路」の実現に向けた動きが、2023年現在、活発化しています。静岡県熱海市はこれを「第三の東名」であるとしてアピールしています。

伊豆湘南道路は神奈川県小田原市、真鶴町、湯河原町静岡県熱海市を経て函南町へ通じる新たな道路構想です。神奈川県側で西湘バイパスと、静岡県側で伊豆縦貫道と接続し、箱根の国道1号や相模湾沿いの国道135号の代替となる計画です。

小田原から熱海にかけては、海沿いの国道135号に有料道路の西湘バイパス、真鶴道路、熱海ビーチラインが細切れに整備されているものの、そこからすぐ崖になるため代替路はないに等しく、交通の脆弱さが指摘されています。

2018年夏の台風による高波で国道135号が寸断されたことを契機に、高速性と安全性の両面を兼ね備えた高規格な道路をつくる気運が高まったとされます。2021年に起こった熱海の土砂災害でも国道135号が26日間にわたり不通となったのは、記憶に新しいかもしれません。

従来、小田原市などには、西湘バイパスを石橋ICから真鶴道路まで延伸させ、周辺の慢性的な渋滞を解消しようとする「小田原真鶴道路建設促進協議会」の活動がありました。しかし2021年にはこれを伊豆湘南道路の建設促進協議会へ変更。海沿いの有料道路をつなげるよりも、静岡県境を一気に超える規格の高い道路をつくろうという動きになっているのです。

熱海市が「第三の東名」というのは、東名・新東名が箱根の北側に集中しているのに対し、伊豆湘南道路は箱根の南側を通る幹線道路となるためです。勾配の厳しい箱根の国道1号や熱海~函南間の山間部を避けられるだけでなく、沿線の人口規模が大きいこと、観光地への入込客数が増加傾向にあることなども整備のメリットとして挙げられています。

ただ、このルートは丹那活断層をはじめ多くの活断層を通過します。難工事で知られた東海道線東海道新幹線の丹那トンネルを新たに掘ることに等しい事業といえるでしょう。

とはいえ、この道路は神奈川県静岡県境地域にとっての「第三の東名」となるだけでなく、東京から横浜を経て静岡に至る真の意味での「第三の東名」を形成することになりそうです。

新東名よりも先に「第二の東名」に?

神奈川県側では、細切れに点在する自動車専用道の未開通区間が、すべて事業化されています。

まず、圏央道の一部として建設が進む「横浜環状南線」と「横浜湘南道路」がつながると、首都高湾岸線から新湘南バイパスまで1本で結ばれるようになります。同時に、東京から第三京浜横浜新道を経由するルートも、新湘南バイパスへの連絡が容易になります。

新湘南バイパス茅ヶ崎海岸ICから、西湘バイパスの起点である大磯東ICまで、海沿いの国道134号沿いに高架道路を建設する「新湘南バイパスII期」区間も事業化されています。ただし、1995年茅ヶ崎海岸ICが開通して以後も、長らく調査設計の段階とされ、着工には至っていません。

そして西湘バイパスの終点ある石橋ICに伊豆湘南道路がつながると、小田原~沼津間の所要時間は約82分から約39分へ大幅に短縮するとされています。伊豆縦貫道からは東名の沼津IC、新東名の長泉沼津ICそれぞれに通じています。

ちなみに、「第二の東名」である新東名は、圏央道に接続する海老名JCTより東、横浜市内までの区間は国の計画路線とされているものの、具体化の気配がありません。伊豆湘南道路が事業化されれば、新東名よりも先に、海沿いルートで東京~静岡を結ぶ高規格道路が具現化されることになります。

相模湾沿いの西湘バイパス。この道路の小田原側につなげる伊豆湘南道路の事業化へ向けた動きが活発化している(乗りものニュース編集部撮影)。