カラパイアの元の記事はこちらからご覧ください

 メキシコで、現在逃亡中の、最重要指名手配カルテル(麻薬組織)のボスが、新品のコンピューターを学校に寄付したとして、注目を集めている。

 エル・メンチョとして知られるリーダーのネメシオ・オセゲラ・セルバンテス自身が、子供たちへのメッセージを添えて寄贈したということだが、悪名高いハリスコ新世代カルテル(CJNG)は、これまでにも善行活動を行っていることが伝えられている。

 一体、何が目的なのか。

【画像】 逃亡中の麻薬組織のボスが学校の子供たちに新品のコンピューターを寄贈

 メキシコのハリスコ州にある学校に、多数の新しいコンピューターが並んでいる様子を映した動画がSNSでシェアされた。

 コンピューターは、ハリスコ新世代カルテル(CJNG)のボスで、通称“エル・メンチョ”として知られるネメシオ・オセゲラ・セルバンテス(57歳)からの贈り物だという。

 CJNGは、ハリスコ州に基盤を置く麻薬カルテルで、シナロア・カルテルに次ぐ2番目に強力な組織であると考えられている。

 各コンピューターのデスクトップ ディスプレイには、CJNG のロゴとエル・メンチョ自身からの次のようなメッセージが表示されているという。

これらのコンピューターは、この学校の生徒たちがより良く、より多くの学習を行えるように、メンチョ氏によって寄贈されました。

義賊的な行いで宣伝活動をするCJNG

 今回の学校へのコンピューター寄贈は、昨年に続くCJNGの善行イベントのようだ。

 去年のクリスマス時期は、CJNGのヒットマンたちのトラックの車列がグアダラハラの通りを走り、そのうちの1台には巨大なクリスマスの飾り付けがなされており、他のトラックにはたくさんのクリスマスプレゼントを詰め込み、大勢の子供たちにプレゼントを配っていた。

 同年5月には、CJNGはメキシコの子供の日を記念して、自分たちのロゴを貼り付けたサッカーボールやグッチのバッグを配った。

 プレゼントには「CJNGの友人たちから、子供の日おめでとうございます」というメッセージが書かれていたという。

iStock-1365363190

photo by iStock

逃亡中も大衆の支持を得るのが目的か?

 現在、エル・メンチョ自身は逃亡中で、指名手配の身だ。

 メキシコ国内最大の犯罪組織、シナロア・カルテルの最高幹部、ホアキン・グスマン(エル・チャポ)は、現在アメリカの刑務所で仮釈放なしの終身刑を受けて収監中だ。

 そのため、エル・メンチョはアメリカとメキシコ指名手配リストのトップに躍り出た。

 アメリカ当局は、彼の逮捕につながる情報に対して1000万ドル(約15億円)を提供している。

2

 かつて警察官として働いた経験を持つエル・メンチョは、CJNG組織のメンバーを軍隊式に統率する力を持っている。

 政治家や地元警察、軍隊に資金力でもって影響力を発揮し、急速に巨大組織として成長中のCJNGのエル・メンチョはメキシコの麻薬王になるのでは、とまで言われている。

 3年ほど前には、エル・メンチョは重病を患っていることと、逮捕や暗殺を避けるために自分の息のかかった組織のメンバーを取り込んだ民間医療施設を建設したことが報じられた。

 しかし、逃亡中であっても、宣伝活動が目的と思われる慈善行為は継続しているようだ。

 恵まれない人たちへの寄付は、カルテルが大衆の支持を得るためによく展開する戦術だ。

 全米でも、新型コロナウイルス感染症によるロックダウンの初期には、ギャングたちが物資の入った箱を持って、地元のコミュニティを訪れたことも伝えられた。

 ただし、箱には組織のロゴが描かれていたそうだ。

 CJNGのこれまでの事例が宣伝行為ならば、今回のコンピューター寄贈もおそらくその1例だろう。

 こうした善意の宣伝活動にもかかわらず、CJNGの殺し屋がライバル組織のメンバーを誘拐し、顔から目を剥がしたという残忍な事件を起こしたことがニュースで伝えられている。

References:'Most wanted cartel boss' gifts new computers to school with chilling message for kids/ written by Scarlet / edited by parumo

 
画像・動画、SNSが見られない場合はこちら

現在逃亡中のメキシコの巨大カルテルのボスが学校に新品のPCを寄贈