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8層構造のソフトトップを得たローマ

新しいフェラーリのクーペが発表されたら、必然的にコンバーチブルが控えていることも想像できる。しかし、V8エンジンをフロントに搭載した2+2のフェラーリローマには、2020年の発売以降、目立った動きがなかった。

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それには事情があった。ローマは、エレガント志向で2+2のポルトフィーノ M以上の、積極的な走りを求めるドライバーへ向けたモデルとして、据えられていたためだ。

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フェラーリローマスパイダー(欧州仕様)

しかし今回、3年の時を経てスパイダーが追加された。ポルトフィーノの生産が終了するタイミングへ、合わせたのだと考えられる。

このローマスパイダーは、重いリトラクタブル・ハードトップではなく、軽いカンバス製ソフトトップを背負う。メルセデスAMG SLが、方向転換を図ったように。

現代のカンバス素材は耐久性が大幅に向上し、かつてのように雨漏りする心配もない。ローマでは8層構造が採用され、リアウインドウは、ビニールではなくガラス製。フレームも頑丈で、60km/h以下なら走行中でも13.5秒で折り畳める。

表面のカラーも、ブラックやアイボリーだけではない。織り目が美しい、6色から選択できる。それでも、フェラーリ技術者によれば、カンバス素材にはまだ課題が残るらしい。折り畳むとクセが付いてしまうことが、その1つだという。

2+2オープンでトップクラスの平穏さ

カブリオレへのコンバージョンでは、シャシーへの入念な補強が欠かせない。サイドシルやソフトトップのマウントポイント、リアアクスルの周辺やAピラーなどへ改良が加えられ、ローマスパイダーはクーペから84kg重くなった。

車重は、オプションの軽量化パッケージを組んで1556kg。最新のカンバス素材が軽量だといっても、ポルトフィーノ Mより11kg増えている。

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フェラーリローマスパイダー(欧州仕様)

他方、コンパクトに折り畳まれるソフトトップには、スタイリング上のメリットもある。クーペの優雅さは多少犠牲になったように感じるが、息を呑むような美貌は変わらない。

テール周りは全体的に再デザインされつつ、クーペの印象を上手に受け継いでいる。クローズ状態では、滑らかなルーフラインが姿を表す。

走行時の洗練性は、オープンでもクローズでも大きくは違わない。知的に設計されたウインドディフレクターの効力で、サイドウインドウを下げても車内が乱気流に悩まされることはない。高速走行時の平穏さでは、2+2のコンバーチブルでトップクラスだろう。

ソフトトップを開け放てば、エンジンやエグゾーストのサウンドを直接鑑賞できる。ただし、ローマに搭載されるV8エンジンが奏でる音は、フェラーリとしては魅力が薄い。クーペと同様に、ドライビング体験で最も印象が残らない部分かもしれない。

モダン・フェラーリの強力さへ浸れる620ps

その理由は、フラットプレーン・クランクシャフトを採用するため。バンクを挟んで並ぶ4気筒のうち、1気筒づつ同時に点火される構造上、音質としては2基並んだ直列4気筒へ近くなってしまうのだ。

高回転域では張り詰めた響きへ高まり、高性能・多気筒ユニットであることを堪能できる。だが、メルセデスAMG SLやレクサスLCの音響体験には届いていない。

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フェラーリローマスパイダー(欧州仕様)

そのV8エンジンは、ハイブリッド・システムの載らない3.9Lツインターボ。ボディ後方の形状が変わったことで、共鳴する音域も変化し、エグゾーストシステムに若干の変更を受けているが、基本的にはクーペと同じユニットだ。

動力性能に不満はないはず。最高出力620ps、最大トルク77.4kg-mを誇り、0-100km/h加速は3.4秒でクーペと変わらない。実際、これ以上は必要ないと思わせる。

低いギアが選ばれている時は、制御システムが自動的に発生トルクを制限し、滑らかな市街地走行をアシストする。スタートダッシュが爆発的に鋭いとは感じさせないものの、8500rpmまで活用すれば、モダンフェラーリのパワフルさへ浸れる。

装着タイヤは、ローマスパイダー専用開発となるブリヂストン・ポテンザ・スポーツ。クーペが履く、ミシュランピレリとは異なる。試乗したスペイン・サルデーニャ島の乾燥した路面を、驚くほど見事に掴み続けていた。

オープンカーだから、優雅に海岸線を流すスタイルが望ましいかもしれない。とはいえ、ドライブモードのマネッティーノを引き上げても、公道の範囲では、幅が285あるリアタイヤがむずがる様子はなかった。

この続きは、フェラーリローマスパイダーへ試乗 輝かしいスポーツ・グランドツアラー(2)にて。


オープンでも美貌は不変 フェラーリ・ローマ・スパイダーへ試乗 輝かしいスポーツ・グランドツアラー(1)