藤岡陽子氏の小説を原作に、日本産メガネの95%を生産している聖地・福井県メガネ産業の礎を築いた人々を描いた『おしょりん』の完成披露上映会が、“メガネの日”にあたる10月1日、都内で行われ、主演の北乃きい森崎ウィン、かたせ梨乃、小泉孝太郎、児玉宜久監督が出席した。

明治37年、増永むめ(北乃きい)は、福井県足羽郡麻生津村の庄屋の長男である増永五左衛門(小泉孝太郎)の妻として、育児と家事に追われる日々を過ごしていた。ある日、大阪で働いていた五左衛門の弟・幸八(森崎ウィン)が帰郷し、村をあげてメガネ作りに取り組まないかと提案。成功すれば、冬は収穫のない豪雪地の農家を助けることができると訴え、初めは反対していた五左衛門も、村の人々を集めて工場を立ちあげる。

主人公・むめを演じた北乃は、「実在の人物を演じるのは、やはりプレッシャーがあった。リスペクトを忘れずに、むめさんを生き抜きたいなと思った」と振り返り、「思い出はたくさんありますし、福井の方々に協力していただいた」とロケ地に感謝の言葉。自身も幼い頃からメガネの愛用者だと言い、「小さな頃を思い出した」と劇中で視力の弱い子どもがメガネをかけて喜ぶシーンについて共感を示し、「諦めずに夢を追い続ける姿がピュアに描かれている。何かに挑戦したい人の背中を押してくれる映画」だとアピールした。

メガネ作りのきっかけを作る役どころの森崎は、「どうしても、今日という日にかけたいなという思いがあった」とロケ地・福井県鯖江市で新調したという私物のメガネ姿で登場。アーティスト“MORISAKI WIN”名義で、自身初となる映画のタイアップ曲「Dear」を手がけており、「自分が出る映画の楽曲を歌わせていただくという夢を叶えることができた」と感無量の面持ちで、「映画が終わってジャーンって感じではなく、映画の邪魔をしない、皆さんに寄り添える楽曲にしたかった」とこだわりを明かしていた。

小泉は「ウィンくんが現場で(役として)佇んでいた」と弟役の森崎に感謝の意。その兄弟の母親を演じたかたせは、「私財を投げうって、子どもを信じて、もっと大きな夢を見させてもらった」と役柄を語っていた。また、撮影は2022年2月~4月、福井県をはじめ県内17市町、100を超える県内企業が協力しオール福井ロケで行われ、児玉監督は「いろんな土地のいろんな皆さんのお顔を見ながら、偏りがないように、福井県の随所で撮影がしたかった。時間はかかりましたが、いい場所で撮影ができた」と充実した表情だった。

かたせ梨乃

取材・文・撮影=内田涼

<作品情報>
『おしょりん』

10月20日(金) より福井県先行公開
11月3日(金・祝) より全国公開

『おしょりん』完成披露上映会より