一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、フィリピンの産業を牽引するカジノ業界とIT-BPM業界の最新動向と、為替介入の動きについてレポートします。

【比カジノ産業】カジノ公社は規制機関へ

フィリピンではフィリピン娯楽・ゲーミング公社(PAGCOR/パグコー)という政府が管轄が公社がカジノを運営していますが、民営化の準備を進めています。今後、事業評価鑑定を実施し入札価格を設定していく段取りで、2025年までに入札により資産を売却するタイムテーブルは実現可能としています。

PAGCORは、カジノ運営業務を切り離し、完全な規制機関になる計画です。この移行によって均等な競争条件を整え、すべてのゲーム業界のプレーヤーの将来の成長と持続可能性を確保することを目的としています。これまでPAGCORの事業運営者と規制機関としての二重の役割が、他の企業にとって不利な条件を作り出したとの指摘もあり、アカデミアからは、この決定を歓迎する声が多く、責任の線引きは利益相反を避けるために重要であるとしています。

PAGCORは、ランドベースのカジノ、ビンゴ、電子ビンゴ、e-カジノゲーム、スポーツベッティング、e-ビリヤードなどフィリピン国内のすべてのゲーム運営を規制・管理しています。現在、PAGCORは全国に42のリアルカジノと衛星を運営しています。ゲーミング事業からのPAGCORの売上は600億ペソから800億ペソと言われています。

【比IT-BPM業界】2023年度成長率、世界平均を上回る予想

フィリピンBPO(IT-BPM)業界は、米国の外部委託企業、北米の人材不足、そして政府の強力な支援に支えられ、年末までに350億ドル(約2兆ペソ)の収益目標を達成する見通しで、これにより業界成長率が7.7%の世界平均を上回る8.8%の年間成長率を達成する見込みです。GDP貢献率は昨年の7%から8.4%に上昇する見込みです。ちなみに、インドのIT-BPM業界のGDP貢献率は3〜4%です。また、フィリピンのIT-BPMセクターは、フルタイム従業員数が昨年から8.7%増の170万人に達しました。

フィリピンのIT-BPMは、複雑なビジネスサービスとさまざまな業界に対して機能を提供できることから、業界において世界を牽引してます。フィリピン政府は、リモートワークを支援することで、業界の成長に重要な役割を果たしており、これらの政策は企業が変化する労働環境に適応し、外国からの投資を引き寄せるのに役立っています。

IT-BPMセクターは、今後2年間で25.7万人のフルタイム従業員と59億ドルの収益を上積みする見込みで、フィリピン2028年までに創出する必要があるとされる110万の雇用の23%、295億ドルの収益の20%にあたります。

業界の成長は、首都圏マニラ以外の地域にも拡大。Cagayan de Oro、Cebu、Clark、Davao、Iloiloは、IT-BPM企業の重要な拠点となっており、これにより経済成長が促進され、食品、物流、不動産、小売り、交通などの他のセクターにも利益が広がっています。またフィリピンは規模の面では、世界一の人口を誇るインドに次ぐ世界のIT-BPMプレーヤーですが、いくつかの分野では、インドを追い越す可能性があます。

フィリピンの中央銀行総裁、市場介入を示唆

フィリピンの中央銀行総裁、Eli Remolona氏は、為替レートが1ドル57ペソを超えないように維持しているかどうか尋ねられた際に、「抵抗レベルがあり、それらを越えると急に同じ方向に取引が向かうことがあると」と述べ、さらなるペソ安を防ぐために、1ドル57ペソの水準で市場介入していることを示唆しました。

ペソは今四半期で、アジア通貨の中で最も弱い通貨の一つで、ドルに対して約3%下落しています。米国の利上げが高い水準に保たれるとの憶測に基づく新興市場の売り浴びせがドルを支援しているなかで、ペソはよりも大きな下落をしています。

東南アジアの国々は、基本的には石油を輸入しており、原油価格が1バレル100ドルに向かって上昇している局面で、ペソ安は大きなインフレ要因となっています。また、主食である米の世界的な高騰価格も消費者センチメントに悪影響を及ぼしています。Remolona氏は、市場には時折誤った動きがあり、それに対しては、介入が求められるとしています。

ペソのサポートレベルは1ドル57ペソです。通貨は今月初めに56.99にタッチしました。昨年、ペソが9月末に1ドル59ペソの史上最低水準に急落した際に、中央銀行は数億ドル単位で準備金から資金を投入しました。Remolona氏は、ペソが再び1ドル59ペソまで弱まることを心配していないと述べ、すべての通貨がペソと共に弱まる場合、それはドルの強さであり、ペソの弱さではないと述べています。このケースでは、世界的な理由、一般的な不確実性であり、BSPは多くの介入を行わないと付け加えています。

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