
ブラジルの「クロドクシボグモ」は大型の猛毒クモで、1匹だけで80人ものヒトを死に至らしめることができる毒を持っている。
さらに男性にだけ奇妙な症状が出る。局部に痛みを伴う長時間の勃起状態を引き起こすのだ。
だが少量の毒なら男性の勃起不全(ED)治療に有効かもしれないと、長年研究が続けられていたが、ついにその努力が報われるときが来たようだ。
ブラジルの研究チームが、クモの毒の有効成分を人工合成することに成功、臨床試験で人体に危険がないことを確認したそうだ。
ブラジルやアルゼンチンなど中南米に生息する「クロドクシボグモ(Phoneutria nigriventer)」は、シボグモ科に分類される世界でも有数の猛毒グモだ。
バナナの葉についていることから「バナナグモ」という可愛らしい愛称もあるが、その毒はたった0.1mgで人体に致命的となる。
体長5~8センチほどのその体には8~10mgの毒が蓄えられているので、1匹だけで100人近くの人間を殺せてしまう恐るべきヤツだ。
このクモにかまれると、頻脈や不整脈、けいれんや肺水腫といったさまざまな症状で苦しむことになる。致死量なら筋肉が動かなくなり、呼吸不全や激しい痛みを味わった末に死にいたる。
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ただしすでに血清があるため、生息地では現在、死者はほとんど出ていないそうだ。
絶対にもらいたくないこの毒だが、じつはもう一つ奇妙な特徴がある。
男性の場合、イチモツが暴走してしまうのだ。痛みを感じるほど咆哮してしまい、いつまでたってもおさまらない。
こうした症状を「持続勃起症」というが、ひどい時には海綿体が傷ついて、永遠に勃たなくなることもある危険な症状だ。
だが、この毒を応用すれば、勃起不全の治療に役立つ可能性があるとして長年研究が進められてきた。
毒を人工合成することに成功、臨床実験で安全性を確認
ブラジル、ミナス・ジェライス連邦大学の研究チームは、この毒の勃起を引き起こす成分を人工的に合成することに成功した。
マウスとラットの動物実験では、その勃起成分「BZ371A」をジェル状にしてオスの股に塗ると、見事にイチモツを勃たせることが確認されたという。
そして今年初めには、BZ371Aの開発を引き継いだ製薬会社「Biozeus」によって、第I相臨床試験をクリアしたと発表された。 つまり少数の人間に試して、安全性が確かめられたということだ。
BZ371Aでイチモツが大きくなるのは、体の中に一酸化窒素が放出されるからだ。一酸化窒素は平滑筋をゆるませて血管を広げる作用がある。そのおかげでイチモツに血液が流れ込み、元気になるのである。
BZ371Aの優れた点は、高齢のラットや、高血圧や糖尿病などがあるラットでも有効だったところだ。
バイアグラやシアリスといったED治療薬は、3割ほど効かない人もいる。また心臓・血管や肝臓に問題のある人なども、服用することができない。
BZ371Aはそれらとは作用メカニズムが違うために、バイアグラを飲めなかった人にも使える可能性があるという。
Biozeusは今後、第II相臨床試験を実施し、その結果を来年4月にも報告する予定であるそうだ。
References:Phase I Trials for BZ371A to Erectile Dysfunction / Spider Venom That Causes Penile Necrosis Could Work as an Alternative to Viagra : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo

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