
出世になんて、興味ありません! そんな会社員が増えているといいます。しかし給与を上げたいと思っているなら、出世は不可欠。一生、その給与で我慢できますか? その先の人生にも大きな差となりますが、本当にいいですか? 出世によって生じる残酷な格差をみていきましょう。
出世欲なんてありません…本当に強がりではないですか?
転職サイト比較plusが、全国の20代の男女2,327人を対象に実施した「出世欲に関するアンケート」によると、今後、出世したいと考えているのは22.4%。その理由で最多となったのは「給料を上げたいから」でダントツでした。一方、出世したくない理由として最も多かったのが「責任ある仕事をしたくない」で、「プライベートを大事にしたい」「目立ちたくない」「会社内の地位に興味がない」と続きました。
「若い人に限らず、最近は出世欲がない人が多い」といわれますが、「じゃあ、一生、その給料でいいのか?」と問われたら、言葉に窮する人がほとんどでしょう。会社員である以上、給与アップを目指すなら、出世は不可欠です。
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、従業員1,000人以上の大企業で役職のないサラリーマン(平均年齢39.7歳)の平均給与は、月収で33万4,200円、賞与を含めた年収で522万9,600円です。
係長は平均45.7歳。給与は月収で42万7,300円、年収で692万6,200円になります。
課長は平均49.0歳。給与は月収で59万8,700円、年収で996万4,200円になります。
そして部長は平均52.6歳。給与は月収で73万7,900円、年収で1,245万1,500円になります。
こうしてみていくと、係長に昇進した際の給与へのインパクトはそれほど大きくはありませんが、課長や部長に昇進した際の給与の増額幅は大きく、給与増を実感できそうなことが分かります。もちろん、その分、責任が大きくなるのは当然のことではありますが。
望もうが望むまいが、どこまで出世できるかは未知数。特に従業員の多い大企業であればあるほど出世レースは激しく、仕事ができるからといって上に行けるとも限りません。「万年係長」なんて言葉がありますが、係長で定年を迎える、ということも珍しいことではないようです。
万年係長と部長にまで昇進した同期…あまりに大きい人生の差
45歳で係長に昇進した2人のサラリーマン。一方は係長のまま60歳の定年を迎え、一方は、49歳で課長、そして52歳で部長へと出世街道を順調に駆け上がったとしたら。万年係長のサラリーマン、生涯年収は2億2,777万円。それに対し、部長にまで昇りつめることができたサラリーマン、生涯年収は2億7,848万円。その差は5,000万円強にもなります。その差を知り、
……パッとしない会社員人生だったな
と、定年を前に大きなため息をつく万年係長。しかしこの給与差は退職金や65歳から受け取る公的年金にも大きな影響を及ぼします。
大企業の場合、60歳定年・勤続38年強で月収の40.0ヵ月分の退職金が支払われています。単純計算、退職金は、万年係長であれば1,600万円、部長であれば3,000万円。同期入社でありながら、退職金に倍近い格差が生じます。
次に公的年金。老齢厚生年金の計算で基本となる平均標準報酬額は、万年係長は47万円となり、部長は59万円となります。単純計算、万年係長の老齢厚生年金は月額10万3,000円ほど、老齢基礎年金と合わせると月16万9,000円。一方、部長は12万9,000円、老齢基礎年金と合わせて月19万5,000円。その差は月2万6,000円にもなります。
現役時代の給与差からすると、たった2万6,000円の差かもしれませんが、1年で30万円、10年で300万円、20年で600万円……収入の大部分が公的年金となる老後、もらえるものなら1円でも多くもらいたいというのが本音。そのようななか、月2万6,000円の格差は思わず唖然としてしまうほどのインパクトがあります。
多かれ少なかれ人は他人と比べてしまうもの。特にスタートラインが同じ同期入社であればなおさらです。「出世にも、給与アップにも興味なんてありません」といったものの、同期がどんどん出世していく様をみても、後輩が上司になっても、同じようなことをいっていられるのか……いま一度、自問自答を。あまりに丸出しというのも考えものですが、少しくらい出世欲が垣間見られるくらいが丁度いいのではないでしょうか。

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