市原隼人主演のドラマ「おいしい給食 season3」(テレビ神奈川TOKYO MXBS12 トゥエルビほか※Huluでも配信)が10月からスタート。2019年より放送され、ドラマ、劇場版とシリーズを重ねた「おいしい給食」シリーズは、1980年代の中学校を舞台に、「給食」というほぼ全国民が体験した「食」をテーマに描く“笑って泣ける学園食育エンターテインメント”。WEBザテレビジョンでは、本シリーズで甘利田幸男を熱くコミカルに演じる市原にインタビュー。本作への思い、撮影現場での裏話や今後の展望などを語ってもらった。

【写真】まなざしが美しい…市原隼人の横顔

■「おいしい給食 season3」

給食のために学校に来ていると言っても過言ではない“給食マニア”の中学教師・甘利田(市原)は、「劇場版 おいしい給食 卒業」(2022年)のラストで、北海道・函館への転勤が決まった。今作では、函館の忍川中学に転勤して1年が経ち、大好きな給食を堪能するとともに、新たなライバル生徒と“給食バトル”を繰り広げる甘利田の姿を描く。

市原隼人の元に届いた“うれしい声”

――シリーズ5作目となる「おいしい給食 season3」の放送がまもなくスタートします。現在のお気持ちを教えてください。

「season3」を制作させていただけるとは、夢にも思っていなかったので、求めてくださっているお客様のことを思って、恩返しの気持ちを形にできるように精いっぱい奮闘しました。原作のないオリジナル作品が、ここまで多くの方に支持していただけたということが、とてもうれしいですし、こんな作品が増えればいいなと思いながら現場に立たせていただきました。

「season3」では、僕は完全にキャパを超えていました(笑)。給食を食べているだけなのに記憶が飛んだり、本当に体力勝負で…でも、子供たちにはうそをつきたくないんです。僕は子供たちが(この作品の)主役だと思っているので、ごまかしのない真っすぐなモノ作りを「おいしい給食」ではやっていきたいとずっと思っているんです。

技術スタッフ、美術スタッフ、制作、演出、共演者も含め、関わる全ての方に“作品愛”があるので、この作品に携わる方たちと、再びご一緒させていただける機会をいただけて、もう涙が出るほど…応援してくだるお客様にこれ以上ない感謝を申し上げます。

――ドラマ撮影現場では「業界視聴率の高い作品」となっているというお話を伺いましたが、市原さんの元にはどのようなお声が届いていますか?

(他の現場では)「あんなことまで芝居やってくれるんだ!?」「(おいしい給食の)現場面白そうだなぁ」とか(笑)。「親子の会話がなかったんですけど、久々に会話をするきっかけが出来ました」と言っていただいたりしました。

あと、お子さんから「給食の嫌いなものも食べられるようになりました」「学校に行く勇気がなかったんですけど、作品を見て学校に行く勇気が出ました」と言っていただいた時は、純粋にうれしかったです。役者冥利に尽きます。

■新たな登場人物に「みんなキャラ濃いなぁ」

――本作から物語の舞台が函館へと移動します。函館での撮影はいかがでしたか?

本当に夢のようでした! 「おいしい給食」の撮影を北海道でするなんて夢にも思っていなかったので、精いっぱい、時間を無駄にせず、函館の空気をこの作品のファンの皆さまに届けたい一心でした。

――撮影期間中には函館を回られたりしましたか?

回る時間はなかったんですけど、子供たちが撮影に入る前にみんなで函館を一望できる函館山に登って、ちょっとだけ観光しました。

あと、撮影中は食事の制限をしているのですが、函館での全部の撮影が終わってから帰るまでに少し時間があったので、朝早く起きて市場に行って、丼ぶりを食べたり、ラーメンを食べたり、お世話になった方にカニを贈ったり、函館を満喫しました。

以前、バイクでも行ったことがあるのですが、その時は横を見たら鹿が10頭くらい並走してたんですよ。「すごいなぁ…」って思って、前を見たら20頭くらいの鹿が道を封鎖していて(笑)。自然豊かだからこそ、より人間味があると言いますか、人情味あふれる場所で撮影ができました。

――個性豊かなキャラクターも新たに登場しています。新たな出演者の方々、生徒役の方々との共演はいかがでしたか?

素晴らしい方々が出演してくださって、本当に感謝しています。「みんなキャラ濃いなぁ」って…現場ではお喋りが止まらなくて、なかなか進まないんですよ(笑)。

僕、高畑(淳子)さんが出演されてる作品をいろいろ拝見しているのですが、まさか高畑さんがあんな芝居をしてくださるなんて思ってもいなかったので、ぜいたくだなぁ、素晴らしい女優さんだなぁって。共演させていただけて本当にうれしかったです。

粒来ケン(田澤泰粋)は、新たな魅力をまとったライバル生徒です。本人自身が食いしん坊で、撮影が終わってからも端っこでずっと給食をおかわりして食べていたり。僕が撮影してて、ふと見ると暗い中でずっと食べてて、「ケン、まだ食べてたの!?」って(笑)。

(スタッフに)「おかわりまだいる?」って聞かれて、「あ、食べます!」って答えてて、本当に給食が大好きで、この子と一緒にできて良かったなってそれを見て思いましたね。台本も付箋だらけで、一生懸命に作品と、そしてお芝居と向き合っていました。

市原隼人が生徒役の子供たちに伝えたい思い

――作品内では先生と生徒という関係性ですが、その関係性を作り上げるために市原さんが撮影現場で行ったことはありますか?

作品が始まる前にスタッフ・キャストで顔合わせと本読みをするのですが、その時に「ただ楽しい、ただやり遂げたで終わるのではなく、なぜ皆さんが選ばれて、なぜこの作品を作ることになり、誰に、どんな思いで作品を届けたいか、自分の中で見出しながら一緒に共闘して作っていきましょう」という話から始めました。

僕らの職業は、「衣食住」に入っていないので、なくても生活は成立してしまう。だからこそ、必要としていただくために奮闘しなければいけないと。それは現場で生み出さなきゃいけない総合芸術であり、時には自分を殺して相手を生かしたり、相手がしゃがんで自分が前に出たり、このバランスでいろいろなことを進めていくために、みんなで協力して、誰かの喜びを自分も喜べるように、誰かの悲しみを一緒に分かち合えるように…とにかく楽しんでやりましょう!って。

僕も子供の頃から芝居をしているので…まず現場を楽しんでもらいたい。「明日も早く現場に行きたいな」「あの人に会いたいな」って、思ってもらえるようにとにかく200%の思いで、愚直に子供たちと向き合いました。

■「子供たちにそんな姿を見せたくない」

――本作のみどころの一つは、市原さんのコミカルな演技かと思います。演じるうえでの難しさや楽しさ、試行錯誤したことがありましたら教えてください。

作品のベースが基本コメディーなので、笑わせようとしてはいけない。自分が笑われなければいけないと思っていて…甘利田にとっては全部「悲劇」なんです。でも、少し離れて見ると、それは「喜劇」ですごく面白いんですよね。

なので、僕はもうとにかく必死に、甘利田として右往左往して…勝手に自分で考えて振り回されてるだけなんですけど(笑)、給食に振り回されて、ライバル生徒に振り回されて、食に振り回されて、北海道という大地に振り回されて…真剣に「悲劇」の中に入ろうと思いました。

それは中途半端な形ではなく、文字通り身を削りながら、体が動くうちはけがじゃないと僕は思っているので(笑)、全身を使って作品に懸命にかぶりついて、「離さないぞ!」っていう思いでやっていますね。

――ずっと気になっていたのですが…給食のシーンはアドリブなんですか?

給食のシーンは全部そうですね。台本には何も書いていないので、僕が全部、動きもダンスも考えてます。ナレーションの抑揚とか動きを自分の中で構築してから現場に入らないといけないので、寝れないんです(笑)。あそこどうしようかな? 明日どうしようかな? って考えて、気が付いたら朝になっています。

でも、それだけ遊ばせていただけていると言いますか、信頼を培えたからこその作業だと思います。監督と脚本家と演者がここまで肩を組んできたからこそ、現場でいろいろなものを生み出せると思うので、本当に感謝しています。

実は「season3」の現場に入る前はやり遂げられるかなって不安だったんです。でも、子供たちにそんな姿を見せたくないですし、現場に行って子供たちの笑顔やスタッフの顔を見ると、「もっと楽しいものを作りたい」って思わせられてしまうんですよね。それもやっぱり信頼かなと。

――これまでたくさんの給食を作品内で召し上がってきた市原さんが今、究極の給食=“究食”を選ぶとしたら?

きなこパンはベースですね。いや、ソフト麺も欲しいな…そうすると炭水化物だらけだな(笑)。あと、冷凍みかんも好きなので…あのカリカリする感じ。あと白玉を口に入れる感じもすごく楽しかったし…(頭を抱えて)うわぁ、もう選べないなぁ。

ソフト麺ミートソースですね。給食のスープ系…たまごスープも好きなんですよね。牛乳はキンキンに冷やした牛乳と、ストーブで温めた牛乳の2つ欲しいですね(笑)。ストーブといえば、今回、ストーブが鍵になっています。それが一番最初に「新鮮だな」と、思ったところでした。教室の中にストーブがあって、そのストーブの真横にライバル生徒が座っているという…もう何かはじまりますよね。

――市原さん演じる甘利田先生は“給食マニア”ですが、市原さんはご自身を何マニアだと思いますか?

料理も好きですし、バイクに乗るのも、旅も好きですね。子供の時とか、目的地を決めずに走り回っててよく迷子になっていました。

大人になってからも変わらず、国内であればホテルを決めずに行って、断られたら次に行って…目的地を決めない旅が好きなんです。あと、写真を撮るのも好きですし、もちろんお芝居は切っても切れない腐れ縁で…もう好きなものがあり過ぎて選べないですね(笑)。

市原隼人“甘利田”が外国へ!? はたまたタイムスリップ!?

――以前、インタビューで「外国で給食バトル」をしてみたいと仰っていたのを拝見したのですが、本シリーズでの今後の展望を教えてください。

そんなこと言ってましたか! いや、でもしてみたいですね。異文化交流じゃないですが、今回から出てくる比留川先生(大原優乃)が帰国子女で、ちょっと異文化が入ってきて面白いと思いました。

「いただきます」「ごちそうさま」「よろしくお願いします」って、日本独特の文化であり言葉だと思うのですが、そういう心構えや所作を持っている甘利田が海外にいったらどう感じるのか。アメリカに行ったり、インドに行ったり…いろいろな国の文化の中で甘利田が各国の食を楽しむのも面白いかなと思いつつ、タイムスリップするのも面白いんじゃないかなって思います。

給食が初めて生まれた時代の、甘利田のご先祖様を僕が演じる(笑)。確か、最初は寺子屋で人を集めて、ご飯を食べれない貧しい方たちにご飯を与えたことから始まったと思うのですが、命のありがたみ、食のありがたみをとても感じられる時代に興味があります。

――最後に放送を楽しみにしているファンの方々にメッセージ、今シーズンのみどころをお願いします!

おいしい給食」初のシーズン、冬です。作品の冒頭で「私は極端に寒がりだった」っていうナレーションがあって、それを台本で見た瞬間に「これは面白くなるに違いない」と僕は感じたんです。

凍えながら歩く甘利田を楽しみにしつつ、函館ならではの食、そして新たなヒロイン、新たなライバル生徒、新たな先生方…「season1」から作品を楽しんでくださっている皆さまが求めているシーンはもちろんのこと、初めてご覧いただく方が胸をつかまれるようなシーンもたくさんあります。

これ以上ない“キングオブポップ”を目指して、生まれたての赤ん坊から、100歳を超えるご年配の方、全ての方に楽しんでいただける作品を作りましたので、ぜひ楽しんでいただきたいです!

市原隼人がドラマ「おいしい給食」シリーズへの思いを語る/撮影=阿部岳人/メイク=大森裕行(ヴァニテ)/スタイリスト=小野和美