10月1日からビールが減税、リキュールやその他の醸造酒規格の「新ジャンル」が増税となった。2020年にも今回と同様にビール減税、新ジャンル増税の酒税改正が行われ、ビールの売上は伸長したが、今回も同様の傾向になるという目算が高い。そのため、大手ビールメーカー各社は、ビールの店頭価格が下がるタイミングで通年発売の新商品や期間限定商品の発売など、積極的な投資を実施する。

ビール類10月1日酒税改正・価格改定 大手4社対応表
ビール類10月1日酒税改正・価格改定 大手4社対応表

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アサヒビールは、日本のビール市場ではアルコール度数5%前後が主流となっているなか、3.5%の「スーパードライ ドライクリスタル」を発売する。キリンビールは通年商品で「SPRING VALLEY JAPAN ALE〈香〉」を発売しクラフトビール市場のさらなる拡大を目指す。サントリーは既存商品に積極的な投資を行い、サッポロビールは今回、ビール大手4社で唯一機能性を目玉にしたビール「ナナマル」を発売する。

〈アルコール分“3.5%”「スーパードライ ドライクリスタル」投入/アサヒビール〉

アサヒビールはアルコール分3.5%の「スーパードライ ドライクリスタル」を10月11日に発売する。冷涼感が特徴のドイツホップポラリス」を一部使用するとともに、通常の「スーパードライ」よりも発酵度を上げることで、“透明感のある味わいと本格的な飲みごたえ”を実現した。缶体パッケージは、通常の「スーパードライ」のデザインを踏襲しつつ白を基調とし、八角枠とプルタブには赤色を採用した。缶体中央下部には、商品特徴である「3.5%」を記載した。

アサヒビール「スーパードライ ドライクリスタル」
アサヒビールスーパードライ ドライクリスタル」

アサヒビールの松山一雄代表取締役社長は「ビールの新商品はゼロサムゲーム。ブランドスイッチで終わってしまう。2020年の1回目のビール減税以降、ビール購入者の増加によりビール市場は拡大している。これは22年のコスト高による値上げでも流れは変わっていない。一方で、人々のライフスタイルは変化し、ステレオタイプでない、ロールモデルのない生き方になっている。そういうなか、グローバルでは、ミドルレンジアルコール帯の商品が台頭している。オーストラリアで販売されているビールで一番売れているのは、アルコール3.5%の“グレート・ノーザン・スーパー・クリスプ”だ。国内でも3.5%前後のミドルレンジアルコールは、まだ顕在化していない市場ながらもポテンシャルを感じる生活者調査結果が出ている」と話す。

〈日本産ホップ2種使用「SPRING VALLEY JAPAN ALE〈香〉」/キリンビール〉

キリンビールは「スプリングバレー」ブランドから「SPRING VALLEY JAPAN ALE〈香〉」を10月24日に発売する。“爽やかな柑橘のような香り”が特徴のビールで、海外産ホップに加え、同社が品種開発した2種の日本産ホップMURAKAMI SEVEN(ムラカミセブン)」「IBUKI(イブキ)」を一部使用している。加えて同社は、「一番搾り やわらか仕立て」を10月10日から期間限定商品として発売する。小麦麦芽を使用することで“やわらかなうまみとかろやかな後味“を実現した。

キリンビール「SPRING VALLEY JAPAN ALE〈香〉」
キリンビールSPRING VALLEY JAPAN ALE〈香〉」

キリンビールの山田雄一執行役員マーケティング部長は「スプリングバレーブランドは、当初の戦略を変更している。背景には、商品そのものは一定の需要と高い評価を得たが、“値段の高いプレミアムビール”と受け入れられている。そこで戦略として、日本にクラフト市場を創造しながら、スプリングバレーを成功させていこうと舵を切った。クラフトをお好きな方、通な方は良いのだが、クラフトの非ユーザーに広く飲んでもらわないといけない。ハイスペックでおいしい、といくら押しても、クラフトに関心がない人には関係ないとなるので、非ユーザーがドキッと振り向いてもらえるように『もっと身近な、新しいビールの楽しみ方ができますよ』という提案にした。そこで色、香り、ペアリングなどを切り口とした」と話す。

〈既存の「プレモル」「サントリー生ビール」に注力/サントリー〉

サントリーは通年商品の発売予定はなく「ザ・プレミアム・モルツ」や「サントリー生ビール」「パーフェクトサントリービール」に注力。特に「サントリー生ビール」では、10月1日から新テレビCMの放送を開始したほか、2日からはキャンペーンも開始する。

サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」「サントリー生ビール」
サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」「サントリー生ビール

期間限定商品では、糖質ゼロビール「パーフェクトサントリービール」の黒ビールを10月3日に発売する。10月以降の広告は、「ザ・プレミアム・モルツ」が自分への“ご褒美”として、一番嬉しいビールの価値を訴求する。「サントリー生ビール」は、若年層のトライアルを強化し、「パーフェクトサントリービール」は、“美味しさ”と“糖質0”の独自価値を強化する。耳目が集まるビールカテゴリーに徹底注力することで、ビールカテゴリーの拡大・新規顧客獲得を実現する。

〈生ビールで日本初“糖質・プリン体オフ”「ナナマル」投入/サッポロビール〉

サッポロビールは「ナナマル」を10月17日に発売する。これまで発泡酒新ジャンルでは糖質・プリン体オフの商品は存在したが、ビールで2つのオフを実現した商品はなく、日本初となる糖質・プリン体70%オフの生ビールとなる。糖質・プリン体70%オフの生ビールでありながら、“良質な素材”が生み出すビールならではの飲みごたえが特徴。

サッポロビール「ナナマル」
サッポロビール「ナナマル」

期間限定の商品では「旨さ長持ち麦芽」を使用した「黒ラベル エクストラドラフト」を11月14日に発売するほか、今年3月に発売して大好評だったという「黒ラベル『丸くなるな、☆星になれ。』缶」を10月3日に再発売する。

サッポロビールの永井敏文ビール&RTD事業部長は「ナナマル」について「オフ・ゼロ系ビールテイスト市場は、コロナ禍でカラダへの負担意識が高まり、拡大している。また、カラダへの負担に関してプリン体への意識は高く、プリン体オフ・ゼロへの購入意向は高い。またゼロ系ユーザーほどカラダへの負担意識が高く、オフ系ユーザーはカラダを気遣いながらもビールライクな意識が高い。ゼロ系ユーザーとオフ系ユーザーのニーズは似て非なるものと認識している」としたほか、「健康意識はカロリーと糖質がセットだが、それに加えてプリン体も大きい」「味わいの担保が必要であり、70%にたどり着いた」「ターゲットは広義には、カラダを意識する全てのビールユーザーだが、狭義には、新ジャンルのオフ系ユーザーを獲得したい」と話した。

アサヒビール「スーパードライ ドライクリスタル」