主に若い女性が、裕福な男性とお茶や食事をともにしてお小遣いをもらう「パパ活」。現金の授受であることから、収入を得ていることを隠し通せると高をくくっている人もいるようです。しかし、ある日突然税務調査が入り、多額の追徴課税の支払いを求められることも…。実情を探ります。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

なぜ「現金の授受」が税務署にバレるのか?

一部の若い女性の間で、お小遣い稼ぎとして利用される「パパ活」。なかには高額な「お手当」で有名ブランド品を買いあさる猛者もいます。

パパ活自体は違法ではありませんが、パパから貰った「お手当」が一定額を超えれば、当然ですが確定申告しなければなりません。

「現金で直接もらっているのだから、税務署にはバレないでしょう?」

そんな疑問を持たれる方は多いのですが、現実はそこまで甘くありません。

露見するリスクがいちばん高いのは、身もふたもない話ですが、該当の男性とのトラブルでしょう。もし男性が税務署に駆け込めば、すぐにバレてしまいます。パパ活で利用されるアプリや出会いカフェなどに税務調査が入れば、まさに一網打尽です。登録者や利用者の情報のすべてが、税務署に取られることになります。

そもそも、さほど収入が高くない女性が、高額な金融商品や不動産を購入すれば、税務署はすぐに気づき、真っ先に調査することになるでしょう。税務署は、職権として個人の銀行口座を見ることができます。

プレゼントのブランド品も「課税対象」に

もし税務署に確定申告をしていないことがバレると、税務調査が行われます。税務調査では、預金通帳のお金の流れを調べるほか、タンス預金やブランド品の有無等も、くまなくチェックされます。当然、アプリのトーク履歴も確認されるでしょう。このような綿密な調査から正確な所得額を計算された結果、本来納税すべきだった所得税5年から7年分に加え、罰則となる税金が加算されます。結果として、多額の追徴課税を支払うことになるのです。

では、一体いくら稼いだら確定申告しなければいけないのでしょうか?

本業で給料をもらっている会社員やパートタイマーの場合、パパ活で得た利益が20万円を超えると「雑所得」として確定申告が必要になってきます。

ここでいう20万円は利益ですので、収入から経費を差し引いた残りの額なのですが、パパ活で経費に入れられるのは、せいぜいアプリの利用料、お茶代、交通費程度でしょう。

いくら仕事だと主張しても、洋服やアクセサリー、化粧品代などは経費計上することはできません。

当然ですが、プレゼントも課税対象です。100万円を超えるブランドバッグなどは珍しくありませんが、こういったものをプレゼントされた場合も、所得として計上する必要があります。

故意に所得隠し・脱税したとみなされれば、40%もの重加算税が…

もし確定申告していなかった場合、どれくらいの税金がかかるのでしょうか。年収300万円の女性会社員が、パパ活で毎月10万円、年間120万円ほど手当として受け取っていた場合を例に考えてみます。

パパ活にかかる経費を年間20万円として計算すると、雑所得は100万円です。この100万円に対して所得税が課税されます。会社員としての年収が300万円なら、税率は約5%です。

よって、パパ活によって増えた所得100万円に対して、税率5%をかけた5万円の所得税、さらに住民税もかかってきますので、100万円に税率10%をかけた10万円の住民税、合計で15万円の支払いが必要です。

(1)増える所得税…100万円 × 5% = 5万円

(2)増える住民税…100万円 × 10% = 10万円

しかし、確定申告をしていなかった場合、罰則として、申告をしなかったことによる無申告加算税や、納税が遅れたことによる延滞税などが発生します。

税務調査で見つかった場合の無申告加算税は、増えた所得税の15%です。上記の例でいえば、所得税が5万円ですから、その15%である7500円を、罰則として追加で納税する必要があります。

しかし、パパ活の収入を故意に隠していたとみなされれば、無申告加算税に代わって重加算税40%が適用されます。今回でいえば、5万円の40%である2万円が課されるわけです。

(3)無申告加算税…5万円 × 15% = 7,500円

(4)重加算税…5万円 × 40% = 2万円

この数字から、罰則はかなり厳しいものであるとお分かりになるでしょう。しかし、まだそれだけではありません。

これらに加え、延滞税も課されます。こちらは納付が遅れた年数に応じて年間約3%の利息が発生します。今回の例でいえば、1年間なら所得税5万円の3%で年間1,500円程度ですが、もし重加算税を課されて支払いが5年間遅れたとすれば、その5年分の7,500円が延滞税として課されます。

(5)延滞税…5万円 × 3%弱 × 納付が遅れた年数(脱税でない場合は1年)

現金でお手当をもらっているからといって、知らん顔を決め込むと、とんでもない税額がのしかかってきます。これまで意図せず無申告だったという方は、過去の分含めて、今年中に申告することをおすすめします。

岸田 康雄 国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士公認会計士/税理士/中小企業診断士

(画像はイメージです/PIXTA)