アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)と診断されたご主人とのちょっとユニークな日常生活をInstagramで発信している、ちくわさん(@chikuwa_bloger)。ご主人からの衝撃的なカミングアウトからそれを受け入れて結婚に至るまでを描いた著書「好きになった人はアスペルガーでした」から一部抜粋・編集し、近年関心が高まる「大人の発達障害」のリアルや向き合い方、対策などを紹介していく。

【漫画】アスペルガーの極端な言動を「裏表がない人」と捉え、恋に落ちる

今回のテーマは「変テココーチが彼氏になった」。テニススクールに通い始めたちくわさんは、担当テニスコーチ(のちのご主人)のスパルタ指導や失礼な言動にうんざり。それはアスペルガー症候群の特性によるものなのだが、ちくわさんは知るよしもない。やがて、周囲を気にしないコーチの変わった行動に「本当は裏表のないおもしろい人なのかも」と興味を抱き始めていた。

■「変テココーチが彼氏になった」

コーチの奇想天外ぶりをさらに探るべく、バレンタインチョコを渡すことにしたちくわさん。「どうせ義理だろ」などと文句を言われると思いきや…。

子供のように無邪気に大喜び!その姿にちくわさんは、最初鬼畜とすら思ったコーチのことを初めて「かわいい」と感じる。

ある日、予定していたレッスンが中止になったことがきっかけで、ちくわさんはコーチ居酒屋で食事をすることになった。ほろ酔いになったところで、ふとちくわさんが軽い気持ちで仕事の悩みを口にしたところ、コーチからは思いがけない言葉が返ってきた。

■子供っぽい振る舞いや裏表のない言動に惹かれていった

コーチ義理チョコにどんな反応をするか、私は楽しみにしていました。文句を垂れるだろうと思っていたので、少年のように喜んでくれたことには「ギャップ萌え」を感じましたね(笑)。やはり女心としては、プレゼントしたものを全力で喜んでくれるのはうれしいものです。

アスペルガー症候群の人の精神年齢は、基本的には低い傾向にあると言われます。そのため、傍から見ると、仕草や行動が子供っぽく感じられるケースもあります。夫は人目を気にする意識も低く、相手の立場にたって振る舞うことが苦手です。さらに、ADHDの中でも「衝動性」が強い傾向にあり、思ったことをなりふり構わず言葉に出してしまいます。

当時の私には義理チョコとはいえ少し恥ずかしい気持ちがあり、他の生徒さんがいないタイミングを見計らって渡しました。しかし、場の空気を読むことや人の気持ちを想像することが苦手な夫は、他の生徒さんがいるところにわざわざチョコを持って行き、「俺がもらったんだ」と見せびらかす、という驚きの行動に出てしまいました。

居酒屋で「上司が嫌なら仕事を辞めろ!」とズバリ助言されたときも、実際は酒の席の軽い愚痴のつもりで仕事の悩みを打ち明けただけでした。アスペルガー症候群の人は、相手の立場を想像し、その想いに共感することが極めて困難です。私としては仕事の大変さに共感してもらえて、「そうなんですね」「すごいですね」といった社交辞令的なあいづちがあればそれでよかった。でも夫はそれを真剣な悩みととらえ、「だったら仕事を辞めるか、起業するしかない」とズバッと言ってきたんでしょう。

今となってはそう分析しますが、当時はそこまではっきり言われたことがなかったので驚愕しました。でも間違ったことは言っていないし、「この人は他の人とは違って、ウソや建前を言わない人なんだ」と思いました。それまでマイナスの印象だっただけに、一気に逆転して完全に心を掴まれましたね。

※なお、ちくわさんのご主人の場合は、人の気持ちを想像できない特性に加え、多動性や衝動性に代表されるADHD(注意欠如・多動症)の特徴もあるタイプ。漫画内や記事に出てくる特徴の描写はあくまでちくわさんとご主人のケースに対する説明で、すべてのアスペルガー症候群の方に当てはまるわけではないことを念のため補足しておく。

「好きになった人はアスペルガーでした」3話より