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9月30日10月1日に熊本・熊本県野外劇場アスペクタにて野外ロックフェスASO ROCK FESTIVAL FIRE 2023」が開催された。

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ASO ROCK FESTIVAL(阿蘇ロックフェスティバル)」は、2015年に泉谷しげるを発起人としてスタートしたイベントで、2021年に泉谷が発起人を勇退。6回目の開催となる今年からは開催地・阿蘇エリアの関係者やスタッフが積極的に作り上げるイベントとして再スタートを切り、今年のイベントには2日間のべ1万5000人の観客が会場に足を運んだ。

初日のトップバッターはブルエン「ただ今帰って参りました」

初日のオープニングDJを務めたのはLEGENDオブ伝説 a.k.a サイプレス上野。彼は「前に来れる人は前に来てよ。一緒に乾杯しよう」と呼びかけ、星野源「SUN」などのJ-POPやヒップホップをかけて朝イチの会場を盛り上げた。開会式を経て、初日のトップバッターは熊本出身メンバーを擁したBLUE ENCOUNTが担当。「ただ今帰って参りました」と挨拶した田邊駿一(Vo, G)は、「ポラリス」「Survivor」と人気曲を畳みかけるセットリストを展開した。観客エリアから「おかえり!」という声が上がると、田邊は「実家に寄ってないから、おとんとおかんより先に『おかえり』と言ってくれてありがとう」と答え、実家の話や高校時代の恋愛話など、地元ならではのトークを展開した。

2組目には、メンバーの体調不良により出演キャンセルとなったキュウソネコカミの代わりとしてSHE’Sが登場した。晴天の空のもと、彼らはMCを挟まず「追い風」「If」などを一気に演奏して、観客たちをメインステージに引きつけていく。井上竜馬(Vo, Key)は「キュウソネコカミを見に来た方も多いと思いますけど、今日はこの場所に立てて最高にうれしいです」と、「ASO ROCK」のステージに立った感慨を語っていた。ステージ転換の後に登場したのは缶ビールを片手に持った向井秀徳(Vo, G, Key)率いるZAZEN BOYS。向井は曲間に阿蘇の天然水仕込みのビールを飲みつつ、「Himitsu Girl's Top Secret」「RIFF MAN」「バラクーダ」といった曲目で、メンバーとともに盤石なアンサンブルを奏でていく。またゲストとしてスチャラダパーのBoseをステージに招くと「CRAZY DAYS CRAZY FEELING」でコラボ。Boseと向井は2人で畳みかけるようなラップを披露し合い、フェスならではの共演で観る者を沸かせた。

ZAZEN×スチャのコラボも

ZAZEN BOYSとのコラボで勢いを付けたBoseは、続くスチャダラパーの出番でもテンション高めのパフォーマンスを展開。「超時空戦隊サンミドル」「リンネリンネリンネ」といった今年発表した新曲に「トラベル・チャンス」といった1990年代に発表した楽曲、さらに「今年版のブギー・バックを作ってきました」という曲紹介から「今夜はブギー・バック(LUVRAW REMIX)」を披露し、新旧のファンを楽しませた。6年前に熊本でフリーライブを行ったことがあるという天月-あまつき-は「またこうして熊本に歌いに来ることを夢見てました」と挨拶。彼は「小さな恋のうた」のカバーでオーディエンスの心をつかみ、ボカロカバー曲サマータイムレコード」、オリジナル曲「きみだけは。」といったキャリアを総括するような曲目を披露した。ワンマンライブのみならずフェスのようなイベント出演の機会が増えつつある彼は「また会える日を願って」と挨拶し、最後に「君が僕の心に魔法をかけた」を力強く歌い上げた。

BEGINの1曲目「恋しくて」の歌い出しで観客から歓声が沸くと、比嘉栄昇(Vo, G)は歌唱を止め、笑いながら「(歓声に)慣れてなくて。普通に聞いてくれ」と話す。比嘉は会場が山に囲まれていることを受けて「海の声」を「山の声」と曲紹介するなど、独特のペースでライブを展開し、会場はピースフルな空気感に包まれた。

Vtuber・星街すいせい、野外ロックフェスに初登場

サンボマスターは「青春狂騒曲」「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」といった代表曲を畳みかけるセットリストでオーディエンスを熱狂させる。山口隆(Vo, G)は「コロナだけでも大変なのに戦争まで起こってしまった。いろいろ制限されてやっとここに来れた。この4年くらい言いたくて仕方なかったことは、おめえはクソじゃねえ。おめえに未来があると言いてえんだよ」と熱いメッセージを送り、「Future is Yours」を熱唱した。すっかり日が暮れたステージに登場した小泉今日子は「潮騒のメモリー」「あなたに会えてよかった」といった往年の名曲を披露。「Moon Light」歌唱後には愛嬌たっぷりに「間違えちゃった。『Moon Light』をライブでやるのは35年ぶりくらいなんだよね」と話し、歌だけでなくMCでもオーディエンスを魅了した。

初日のトリを務めたのは、野外ロックフェス初登場というVtuber・星街すいせい。野外イベントにVtuberが出演するということで多数のオーディエンスが集まる中、ステージに姿を現した星街は「みちづれ」「灼熱にて純情」で、その力強い歌声を響かせた。ライブ中には熊本のゆるキャラくまモンがスペシャルゲストとして登場し、「生くまモンが見れて興奮しております!」と、地方の野外フェスを楽しんでいる様子を見せていた。「野外フェスは初めてだったのでドキドキで臨みましたが熱いですね! 楽しいですね! 次の曲で最後になります」という言葉から披露されたのは「Stella Stella」。青色のペンライトの光が灯る会場から盛大な歓声が上がり、初日の幕が閉じられた。

雨上がりの2日目朝に台湾バンド・歩行者(PACERS)

2日目のオープニングDJを務めた肥後のび太は、「あいにくの雨ですが、雨男なんで勘弁してください」という挨拶で観客を招き入れる。肥後がステージをあとにする頃にはすっかり雨が止み、ステージには台湾のポストロックバンド・歩行者(PACERS)が登場した。初の海外ライブとなる彼らは日本語で挨拶し、「迷宮」を皮切りに「沒有家的孩子」「末日燎原」と力強いインスト曲を披露した。2組目のアーティスト・グソクムズは熊本でミュージックビデオを撮影したという「夢にならないように」を織り交ぜたセットリストを展開。バンドの代表曲「すべからく通り雨」「朝陽に染まる」が披露されると、ステージに集まったファンは心地よいバンドサウンドを聴きながら体を揺らして、彼らの演奏を楽しんでいた。

ヒトリエシノダ(Vo, G)は「僕たちの音楽にひれ伏し、ひざまずき帰っていただきたいと思います」と語り、気合十分。彼らは「3分29秒」「アンノウン・マザーグース」「センスレス・ワンダー」などを立て続けにプレイし、熱いバンドサウンドで観客をヒートアップさせた。熊本で初ライブとなったyamaは「ステージからの景色がよくて、いいロケーションだなと思いながら歌っています」と、コメント。「春を告げる」「a.m.3:21」といったネットのシーンで注目された楽曲やアニメタイアップ曲「slash」で圧倒的な歌唱力を見せつけ、観客たちの喝采をさらった。

グリム松尾「夏を取り戻しにきました」

2021年開催の前回に引き続き「ASO ROCK」出演を果たしたGLIM SPANKYの松尾レミ(Vo, G)は「阿蘇ロックただいま! このフェスはロック好きのみんなが集まる最高の集会。阿蘇ロックに出られることを1年の目標にしています」と語り、オーディエンスを喜ばせる。彼女は新型コロナウイルスの後遺症による療養でライブイベントをキャンセルしていたことを受けて「今日は夏を取り戻しにきました」と意気込み、「こんな夜更けは」「大人になったら」など熱を込めて全7曲を届けた。C&Kのライブはソウルフルなナンバー「C&K IX(2ver)」でスタート。鮮やかな黄色の衣装に身を包んだCLIEVYは「山になじまない衣装で来てしまいました、期待の新人C&K。15年ほどやっております」と挨拶し、オーディエンスの笑いを誘う。その後は「to di Bone(2ver)」「パーティ☆キング(2ver)」などダンサブルな曲を連投し、会場周辺は大きな高揚感に包まれた。

大トリ・ウルフルズは全力で人気曲のオンパレード

白い衣装を身にまとったきゃりーぱみゅぱみゅは、「にんじゃりばんばん」「つけまつける」など、誰もが知る楽曲をパフォーマンス。合間には会場にいるゆるキャラ・あそにゃんを見つけ、「なんかゆるキャラいるよね。あなた誰?」と話しかける自由奔放なMCでオーディエンスを和ませた。最後に「私史上一番ロックな曲でお別れしたいと思います。アーユーレディ?」と呼びかけて「ファッションモンスター」を歌って踊り、自身のライブを締めくくった。黒いドレスを身にまとったCoccoは「樹海の糸」「クジラのステージ」「強く儚い者たち」といった楽曲で、持ち前の歌唱力を生かしたパフォーマンスを展開。「お望み通り」の演奏前にはサングラスを掛け、鮮やかなピンクのスカートに早着替えするなど、完成されたステージングで観る者を魅了した。

大トリを務めたのは2017年以来2度目の「ASO ROCK」出演となるウルフルズ。「バカサバイバー」「借金大王」「笑えれば」などを連発し、イベントのフィナーレを盛り上げるトータス松本(Vo)は、今年のフェス出演は「ASO ROCK」が最後になることに触れ「楽しくなるように全力でやりますよ。皆さんも全力で楽しんでいって」と呼びかけた。最後に彼らは「ガッツだぜ!!」「バンザイ~好きでよかった~」を熱演。人気曲のオンパレードで、「ASO ROCK」の大トリをまっとうした。

※記事初出時、本文に誤りがありました。お詫びして訂正します。

ウルフルズ(撮影:勝村祐紀)