海上自衛隊で新型艦が進水するときは、その外観とともに艦名にも注目が集まります。過去には世界で最も短い艦名となった護衛艦もあったそう。世界最長の艦名を持つ軍艦とともに注目しました。

「によど」より「おおい」の方が名前短い?

2023年9月26日、海上自衛隊の最新護衛艦「によど」が就役しました。艦名は愛媛県から高知県へ向けて流れる「仁淀川」に由来し、海上自衛隊で用いるのは、ちくご型護衛艦の7番艦「によど」に次いで2回目です。

「によど」が所属するもがみ型護衛艦は、これまでに7隻が進水しており、うち4隻が就役しています。これまでの艦はすべて3文字の河川名を基にした艦名で統一されています。

実は、「世界で最も短い艦名」といわれた護衛艦が過去、海上自衛隊に存在しました。それが「おおい」です。

一見すると、「おおい」は「によど」や「もがみ」と同じひらがな3文字で全然短く思えません。しかし、「おおい」をアルファベット表記にすると、「Oi」になります。「Niyodo」「Mogami」と比べると半分以下の文字数です。

なぜ、ここまで短いかというと「おおい」が母音のみで表記されるからです。これが世界で最も短い艦名といわれるゆえんです。

「おおい」は、いすず型護衛艦の4番艦として建造され、いまから60年前の1963(昭和38)6月に進水し、翌1964(昭和39)年1月に就役しました。基準排水量は1490トン、全長94mという小柄な船体に、76mm連装速射砲2基や4連装魚雷発射管1基、4連装対潜ロケット発射機1基、対潜水艦用の爆雷投射機などを装備していました。

同艦は、冷戦終結直後の1990(平成2)年1月に特務艦へ種別変更されたのち、1993(平成5)年2月に艦齢29年で除籍しています。

ちなみに、旧日本海軍にも同名の軍艦は存在しました。それが軽巡洋艦の「大井」です。

「大井」は大正時代に建造された球磨型軽巡洋艦の4番艦として、1920(大正9)年7月に進水、翌1921(大正10)年10月に竣工しています。

なお、旧日本海軍には太平洋戦争末期に建造した「伊王」もあります。同艦は鵜来(うくる)型海防艦の22番艦として1945(昭和20)年2月に進水、3月に竣工しています。こちらもアルファベットで表記すると「Io」となり、「大井(Oi)」と同じく2文字です。

世界一長い艦名はロシアに現存

旧日本海軍の「大井」「伊王」も護衛艦「おおい」と同じく世界一短い艦名として知られます。では、逆に世界一長い艦名は何なのでしょうか。

それは、旧ソ連が建造し、現在もロシア海軍で運用されている空母「アドミラル・クズネツォフ」だといわれています。

この艦名、一見すると、極めて普通の長さにしか思えません。しかし、実は正式な艦名は「アドミラール・フロータ・ソヴィエーツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ」といいます。

日本語に訳すと、「クズネツォフ・ソビエト連邦海軍元帥」となるこの艦名、英語では「Admiral Flota Sovetskogo Soyuza Kuznetsov」です。アルファベットを数えると、実に37文字にもなります。

ただ、歴史をさかのぼるとさらに長い名称を付けられた船もあったとか。それは、スペイン海軍の「サンティシマ・トリニダー・イ・ヌエストラ・セニョーラ・デル・ブエン・フィン」です。

同艦は1751年4月に就役したガレオン船です。ガレオン船とは、細長い船体を持つ木造帆船で、速力に優れているのが特徴です。

艦名を英語で記すと「Santisima Trinidad y Nuestra Senora del Buen Fin」。アルファベットでは41文字になります。

軍艦の定義をどうするのかによって考え方が異なるため、「世界一長い艦名」として広く知られているのは、ロシア空母の方になりますが、上には上がいると言えるでしょう。

なお、世界一短い艦名の「おおい(大井)」も、前述のとおり1993(平成5)年に退役しているため、現在「空席」の状態です。そのため、ひょっとしたら新型護衛艦で再び用いられるかもしれません。

グアムに寄港した際の海上自衛隊の護衛艦「おおい」(艦番号214)。1964年1月に就役し、特務艦に種別変更したのち、1993年2月に除籍されている(画像:アメリカ海軍)。